そして、朝ー


『おはよう』

『ああ、おはよう』

『ごめん、昨夜は先に寝ちゃって』

『さすがに疲れたよ。ずっと立ちっぱなしだろ、脚がパンパンになっちゃって』

『そうよね。慣れない仕事やってたら仕方ないと思うけど』

私は朝食を作り、リョウに食べさせていた


『あ、今日私仕事休みだから、お店行っていい?』

(え~っ?マジかよ…)

『”ブルーベリー”でしょ?ランチ食べたいな』

(それは困るが…)

彼はいかにも困惑は表情を見せていた

(タカヨが居ると、わかってしまったら…辞めさせられるのかも…

もう終わりだ…ヤバいよ…)


『これから行ってくる』

『頑張ってね~』

私は家事をサッと済ませ、リョウが働いている店に行った

”マンデービーチ”にいることを知らずに…


『ここだっけ?”ブルーベリー”』

店に行くとまだ”準備中”のプラカードが掛っていた

(あ、そうか。ここは10:00からだったんだ。まだだいぶ時間があるもの。

暇つぶしにウロウロしておくか)

私は暇つぶしできる場所を探すため、周辺をブラブラしていた

すると、”マンデービーチ”を発見

派手な看板や外装は、一目でわかるくらい目立っていた

(ここも、まだ”準備中”だ…)


コンビニで時間つぶすしかない、とはいえ、

長時間居られないし、他あたってみることに

いくら駅前だからって、早くから開いている店なんてなさそう

(あ、そうだ!ここなら開いてるかも)

駅の改札を入り口を出てすぐのカフェだった

わたしはここで開店時間が来るまで待つことにした

(もうそろそろかな…)


”ブルーベリー”に行くと、

『いらっしゃいませ~』

ウェイトレスと思われる、女の子の元気な声

『何なさいますか?』

『あ、あの、こちらにツキヤマリョウはいませんか?』

(はぁ?)女の子はびっくりした表情をして

『ウチの主人なんですが、こちらで働いてるんじゃないんですか?』

『えっ?いませんよ』


(う…嘘でしょ?)

私はリョウが”ブルーベリー”で働いてると思ってた

彼の言うことを信じてきたのに…

(と、いうことは、”マンデービーチ”なの?)

とりあえず、マンデービーチ”に行ってみることにした


『いらっしゃい、ユミコさん』

『おはようございます』

『リョウちゃんね、ウチの店で働いてるんだ。奥のキッチンに居るよ』

(やっぱりここだったの…)

『ユミコさん、どうしてここに?お仕事お休みなんだ』

『ええ。ここでランチ食べたかったの』

この日はハルカが学校に行ってるため、来ていなかった

前日もお休みだった

『何します?』

『ランチのBセット、飲み物はアイスコーヒーで』

(へぇー、キッチンに居るんだ…)

『リョウちゃん、Bセットでアイスコーヒーね』

『あのー、タカヨさん、なぜここで働いてのですか?』

『バイトの子が辞めちゃってね、人手が足りなくなったの。

リョウちゃん、就活もせず、家でゴロゴロしてたでしょ?

だから、ちょうどよかったじゃない』

『コック未経験だけど、よかったの?』

『そこは、私がしっかり叩き込んでおくから、心配ないわ。

でも、だいぶ慣れてきたよ。まだまだ私のフォローは必要だけど』


『お待たせしました。Bセットとアイスコーヒー』

料理がユミコのいるテーブルに運ばれてきた

(わぁ、美味しそう。いただきます!)


私はリョウがキッチンに居るため、見えないが

彼だって、私が居ることに気づいていない

(もし、目が合ったらどうしよう…)


『ごちそうさまでした。美味しかったです』

『ありがとう。また食べにおいでね』

(やれやれ…気づいてなくて…)

なぜ、彼は嘘をついてまで…

”ブルーベリー”ではなく、”マンデービーチ”なのか

タカヨの店だから、とかでなく、

そこで働くことに罪悪感があるのなら、

辞めておけばよかったのに

何か他に理由があったのだろうか


(そういえば、将来のための貯金っていうのは、

タカヨさんとのことなのかも…)

もう私とは見切りをつけたいと思ってるのだろうか

(さて、夕食の買い物しなくっちゃ!)


私は買い物をしながら、家に帰った



(つづく)