私はマサコが工場を辞めてからの近況が気になってたが、今さら辞めた人のことをズルズルひきずったところで何もしてくれないし、
でも、彼女がいないと職場も活気づかないのも事実である

ハツミも言ってたっけ?
『マーちゃんいないと寂しい。マーちゃん辞めたらあたしも辞める』
ミエコやアキコもたぶんそうじゃないか?
よほどマサコと心中したいのか?
工場は彼女で持っているんじゃないのだぞ? しかも私をさんざん目の敵にしていたのに、なぜ心配しているのか?
辞めてせいせいしてるけど、いなくなったらいなくなったで、気になるし
ヤガミナナコとして生きていくのが、彼女にとっては一番いいし、なにせオーラがある
工場で働いていたときより表情が引き締まっている
"来るもの拒まず、去るもの追わず"っていうけれど、ここは静かに見守っていこう

(一人で居ると退屈…
そういえば、今日"接客のカリスマ"の特集するんだ…)
新聞の番組欄をチラリと見た
マサコが出るかもしれないと、それまでTVをつけずにいた

それまでに何かすることがないか模索していた
(ちょっと寝るか…でも寝てしまったら寝落ちして見れなくなるから、ガマンガマン)

早めに簡単な夕食を済ませ、風呂に入り、わくわくしながら時間が来るのを待っていた

(もうそろそろかも…)
私はTVをつけた

"今回は様々な業界で活躍するカリスマたちを特集します。まず初めのカリスマは…"

(なんだ、違う人か…何人目で出るのかな…)
"マサコさん出ないんだ"と思い、チャンネルを変えた
しばらくして、戻してみると、
"あー!マサコさんだ!!ヤガミナナコだ!!"


マサコは今回指導をする店に着いた
(ここね。なんか暗い雰囲気ね…店員らも表情暗いし、これではお客さんが寄りつかないわ。でも教えがいはあるわ)

『こんにちは。ヤガミナナコと申します。ここのお店でよろしかったのでしょうか?』
すると、店長がやってきて、
『ヤガミさん、お待ちしておりました。このたびはありがとうございます。貴方に是非とも店員教育をしていただきたいのでお願いしました』
『店長さん、私に任せてください。必ずお客さんの心をつかむよう、みっちりしつけます』
この店は、いつも閑古鳥が鳴いていて、赤字続き
その原因がどうやら接客態度の悪さだという
『ヤガミさんありがとうございます!頼りにしております』
店員たちも、
『よろしくお願いします!!』

『ちょっと元気なないね。もっと大きい声を出して !!どうしたらお客さんが喜ぶか、満足できるか、よく考えて!!はい、もう一度!!』

『いらっしゃいませ!!ご注文はもうお決まりでしょうか‼!!かしこまりました!!ありがとうございました!!』

『ダメダメ!!』

マサコは容赦なくダメ出しをする



そして、数日後ー自宅では

『ただいま~』

ミキオが帰宅した

『あれ、誰もいないのかな。そうだった、マサコは出かけてるんだ』

ミキオはテーブルにあるマサコが書き残したメモを読んだ

”これから、番組の収録に行ってきます。これからはヤガミナナコで頑張っていきます”


(そうだったのか…仕事、オファーあったのか。それはよかった)


電話が鳴った

”サトミさん、奥さんTV に出てますよ”

(えっ、マジで?!)

と言わんばかりの顔で、ミキオはさっそくTVをつけた


(おーっ、出てる出てる。すごくイキイキしてるな。さすが”接客のカリスマ”と呼ばれるだけあって、オーラがあるな)

ミキオはマサコのイキイキした姿を見ていると、

(やっぱ、あいつは、ヤガミナナコでいる方が輝いてるよ。店員らの表情を見ていると、ハツラツとしている。熱意ある指導ぶりはさすがだな)


確かに、これまでにアドバイスを受けていたお店の売り上げは右肩上がりとなっている


店長は、

『いや~今日は本当にありがとうございました。ヤガミさんには感謝しています』

『こちらこそ、教えがいがありました。きっとお客さんも喜んで来て下さると思います。皆さん、頑張ってくださいね!!』


この店の売り上げもきっと右肩上がりになるだろう


(やっぱりマサコさん出てたんだ…)

私も、彼女みたいに、みんなから憧れる人を目指さないと!!

よ~し、頑張るぞ!!


(おわり)




*この物語はフィクションです

登場する人物・団体などの名称は架空のものです



*おわび*【接客アドバイザーについて】

仕事の内容や知識が十分理解できていないうえで、”こういう仕事をするんだ”と自分なりの想像で書きました

勉強不足ですみません