私こと、モモチハヅキは食品工場でパートで働いている主婦である


この工場は派遣数名を含むと、約30人の従業員がいる


今日もいつものように仕事中に先輩達からネチネチ言われ、落ち込んでいる


『あのねぇ(苦笑)、モモチさん、さっき教えたばかりでしょ?もう忘れたの?』

『そうじゃないでしょ?何度も言わさないでよ?』

(あんまりうるさく言われると、混乱するのに…

それにしても、何よ、この上から目線…)


サトミマサコ、アラフォー2児の母

自分より年下だが、同じパートとしては先輩だからって

なのに、なぜ私にだけ上から目線…


『マーちゃん、あんな人相手にしてないで、ほっときなよ!』

と、いうのは、普段からマサコのお茶仲間のハツミだ


この前、私にキーキーヒステリックになってたババアだ

(ちっ、うるさいババアだな、それくらいでなんであんなヒス起こすんだ?

キンキンうっとうしいんだよ!)

仕事中も喋りどうしだし、

あんたのキンキン声、かえってやる気失せるわ

もっとも更年期まっただ中もあるけども


マサコって、なぜ、私にだけ上から目線で話すのだろうか

『あのー、マサコさん、私にはどうしてそういう態度をとるのですか?』

『あら、普通じゃないの、別に?私の言い方が気に入らないとでも?

私にはむかう人なんて誰もいないのに。モモチさんの覚えが悪いんじゃない?

キチンとやってれば、何も言わないわ』


さすがにキレそうになった

でも、ここは堪えるしかなかった

心底、マサコなんて辞めてしまえばいいのに、

クビになればいいのに、と思っている

悔しいというより、泣きたくなった


そんな時、携帯の着信音が

職場中響きわたった

マサコの携帯からだった

『ごめんなさい、マナーモードにしてなかったから…』


マサコには小学校に通う2人の子供がいる

2人とも男の子で

お兄ちゃんは6年生、弟は3年生だ


弟の担任から

”熱を出したので、帰らせてほしい”とのことだった

まだまだ手がかかり、本人もPTAの役員もして忙しく、

仕事も休みがちだ


『あのー、工場長、”子供が熱を出した”と

担任から電話がありまして、すぐに病院に連れていきますから

帰らせて下さい』


マサコは職場を離れ、我が子を迎えにいった


『お先に失礼します』

(あ~、帰ってくれて、ホッとしたわ)


都合が悪くなったら、早退ばかりしてさ、

会社も従業員も皆マサコの味方かよ

ホント、彼女には甘いんだから

迷惑って考えたことないのかしら…


やがて、お昼休みがきた

休憩は全員一緒にできないので、交代でとる

なぜなら、休憩室に入れないからである


(そういえば、この前、マサコは仲良し4人組で”ファミレスで食べに行こう”って

言ってたよね…その話で盛り上がってたもの)


仲良し4人組ーマサコにアキコ・ミエコ・ハツミのことだ

私を目の敵にしてた、憎き先輩だ


彼女たちはどうも私が気に入らないようで

仕事中だろうが休み時間だろうが

グルになって叩く

(最低だよ、あいつら!)


マサコが帰ったので、他の3人は

弁当やお菓子を食べながらTVを見ていた


3人は私を睨むかのように見つめ

(何見てんのよ!)と言わんばかりの態度


私は彼女たちには絶対に逆らえないので

(一言返せば十返されるもの…)

仕事場に戻ろうとすると、

『ちょっと、アンタ、聞いてるの?』

と、職場のボス的存在のミエコ

『エッ、私?』

『アンタだよ、アンタしかいないでしょ?バカか、お前?』

(”アンタ”って言われても、名前で呼んでくれないとわからないのに!)

こういう人が職場に居ると、空気が汚れるのよ!

マジで大嫌い、死んでしまえ、工場長に言おうか…

でも言ってしまったら絶対彼女かばうし

彼女、工場長のお気に入りなんだもん

”悪気はないから許してあげて”って言われるに違いないもの


こんな会社や上司はもう信用したくない

私は辞める決心を固めていた

いや、マサコらが辞めればいいのだけれど

やっと慣れてきた仕事なのに

なぜ、彼女たちのせいで辞めなければならないかと思うと

腹が立ってくる


(つづく)