ラフィーナ「どこにもいませんでしたわね…Dシェゾさん」


シェゾ「ああ…買い物ならとっくに終わってるだろうに…」


アミティ「どうしちゃったのかな…?」


リデル「もし…何か起きたとすれば…この帰り道ですね…」


ラフィーナ「あ、車」


アミティ「もしかして…車に跳ねられたとか…?」


ラフィーナ「まさか…」


リデル「そうですよ…Dシェゾさんに限ってそんな事は…」


カンカンカンカン


アミティ「踏切の事故とか…?」


ラフィーナ「そんなはずもありませんわ!」


ニャー!!


シェゾ「しっ…!」


アミティ「え?」


ニャー!ニャー!!


シェゾ「なにか聞こえる!」


アミティ「向こうの方からだね!」


ラフィーナ「行きますわよ!」




シェゾ「…!!これは…」


ラフィーナ「マフラーかしら…?」


アミティ「ちっちゃーい!猫ちゃん用かな?」


リデル「でもこのマフラー…Dシェゾさんに関係ないんじゃ…」


シェゾ「いや…」


アミティ「え?」


シェゾ「このマフラー、Dシェゾに懐いてた子猫の物だ」


ラフィーナ「あら、そうでしたの」


シェゾ「そういえばこの前…」




子猫「ニャー!!」


Dシェゾ「お前、可愛いな…」


子猫「ニャッ!ニャッ!」


Dシェゾ「何見てるんだ?」


シェゾ「テラリウムだな、何かいるのか?」


子猫「ニャー!」


Dシェゾ「あ、出てきた」


シェゾ「あれは…インドホシガメだな」


Dシェゾ「へえー、綺麗な模様だな」


シェゾ「でもあれって確か…輸入が規制されてるんじゃないか…?」


???「ご心配なく!」


Dシェゾ「ん?」


ミチル「ちゃんとしたお店で買ったのよ、あら?」


子猫「ニャーニャー!ペロペロ…」


Dシェゾ「あっ…おいやめろ…くすぐったい…!」


ミチル「まあ…うちのチロがよく懐いてること…」


子猫「ニャーニャー!!」





ラフィーナ「チロちゃーん!!」


アミティ「チロちゃんどこ〜??」


シェゾ「この中だ!」


チロ「ニャー!」


リデル「井戸の中に落ちちゃってたんですね…」


アミティ「良かった〜!」





シェゾ「ここが飼い主の家だ」


アミティ「このお家の人、石垣さんって言うんだね!」


ピンポーン


リデル「お留守みたいですね…」


ラフィーナ「残念ですわね…せっかくチロを返しに来ましたのに」


シェゾ「Dシェゾも居ないみたいだな…」


リデル「窓のカーテンも閉まってるみたいですね…」


チロ「ニャー…」


ラフィーナ「あら、どうしましたの?」


アミティ「お腹すいてるのかな?」




その後、お店にて


りんご「え!Dシェゾ見つからなかったんですか!?」


アミティ「うん…そうなの…」


サタン「結局収穫は子猫1匹だけだったのか」


チロ「ぺろぺろ…」


リデル「Dシェゾさん…どこいっちゃったんでしょうか…」


クルーク「まさか…誘拐とか…??この男は預かった、金を持ってこいとか!!」


りんご「だとしたら…このお店のお金を狙って…?」


シェゾ「あ、本当か?分かった…すまなかったな」


アミティ「シェゾ、誰に電話したの?」


シェゾ「警察だ、この辺じゃ朝から事故や事件の連絡はないそうだ」


サタン「うむ…何かあれば連絡してくるはずだからな…」


ラフィーナ「やっぱり電話にも出ませんわね…」




Dシェゾ「(はっ…こ、ここは…?俺…どうしたんだ…?)」


Dシェゾ「(昼の2時…もうこんな時間…5時間も眠っていたなんてな…)」


トントン


Dシェゾ「(…!?あれは…インドホシガメ…って事はここは…ミチルさんの家か…?)」


Dシェゾ「(はっ…!そうだ…!俺…買い出しに行ってて…その時に…)」




Dシェゾ「買い出しはとりあえず終わりだ、よし帰ろう」


チロ「ニャー!ニャー!!」


Dシェゾ「ん?」


チロ「ニャー!ニャー!」


Dシェゾ「チロ」


チロ「ニャッ!」


Dシェゾ「傘立てにマフラーがひっかかっちまったんだな、すぐ取ってやる」


チロ「ニャッ!」


Dシェゾ「ほら」


チロ「ニャー!ニャー!」


Dシェゾ「あ、こら…じっとしろ…」


ガチャ


???「…」


Dシェゾ「…はっ!?」


チロ「ニャー!ニャー!!」


Dシェゾ「んっ…!んんっ!!んっ!!」


(携帯を投げる)




Dシェゾ「(玄関でチロを助けていたら…誰かに後ろから口を塞がれて捕まって…)」


Dシェゾ「(手も後ろで縛られてる…くっ…くそ…!解けない…はっ…!)」


ミチル「…」


Dシェゾ「(あれは…ミチルさん!ミチルさんも誰かに捕まってここに…)」


ミチル「…!?」


Dシェゾ「(なんだ…?テレビがついてる…ニュースがやってるな…新千歳空港の多目的トイレで殺人事件、殺害されていたのは石垣直樹さん42歳…石垣って…まさか…!)」


ミチル「…」


Dシェゾ「(少し落ち着こう…何とか抜け出さないと…)」




リデル「ご馳走様でした」


アミティ「賄いのカレーライス美味しかったー!!」


レムレス「それは良かった!!」


チロ「ニャー」


アミティ「ねえ…もう一度この子と石垣さんの家に行ってみない?」


ラフィーナ「でも…留守でしたのよ?」


アミティ「もう帰ってきたかもしれないでしょ?」


リデル「確かに…こうしていても…」


シェゾ「そうだな、行ってみるか」


アミティ「うん!」


チロ「ニャー!!」


クルーク「僕も一緒に行くよ」


アミティ「ほんと!?」


レムレス「みんな、気をつけていくんだよ」


サタン「ああ…もし万が一これが何かの事件だったら…」


シェゾ「ああ…分かってる」




Dシェゾ「んっ!んんっ!!はっ…!口元の布は取れた…!今は2時半…あれから30分経ったのか…」


ピンポーン


Dシェゾ「…!!誰か!!助けてくれ!!」


???「…」サッ


Dシェゾ「…むぐっ!?」


Dシェゾ「(まだ犯人がいた…!!)」


Dシェゾ「んっ!んん…!!んっ…」


ガタン!


カラカラカラカラ…




ピンポーン

ピンポーン




酒屋の男性「あれ?」


シェゾ「やっぱり留守なのか?」


酒屋の男性「あ、ああ…6回も鳴らしたのに誰も出てこなくてよ…参ったね〜奥さんこの時間に来てくれって言ってたのにな…仕方ない、出直すと伝えておいてくれないか?な、チロ」


アミティ「…」


クルーク「猫に頼んで行っちゃったね…」


プルルルル


シェゾ「ん?警察から電話?」


警察A「シェゾさんのお電話で間違いないですか?」


シェゾ「あ、はい…」


警察A「実は先程、空港通りの交番から携帯の落し物の届出があってね…」


シェゾ「え?赤い携帯?」


警察A「付近でパンクの修理をしていたトラックの運転手から届出があったんだ…待ち受け写真も赤いバンダナをしている青年と、小学生ぐらいの茶髪の女の子が写ってる写真で…」


クルーク「それって…!」


ラフィーナ「間違えないわ!」


リデル「Dシェゾさんの携帯です…!」




アミティ「結構遠いね…もう1時間ぐらい走ってるよね」


クルーク「正確にはまだ50分だよ」


シェゾ「この空港通りのインター近くの交番だってよ、あと2、3分ぐらいだな」


ラフィーナ「空港の近くなのに新しい住宅街が出来てますわね」


シェゾ「便利さと完全防音がうりのようだな」


アミティ「あ、交番が見えてきたよ!」


クルーク「大きい看板だね…」


リデル「エアポートヴィレッジ、完全防音の家、空港の近い街って書いてありますね」


ラフィーナ「ほとんど売れてるみたいですわね…」




警察A「この携帯です」


シェゾ「間違えない、Dシェゾの携帯だ」


リデル「きっとDシェゾさんはさらわれてる途中でこれを捨てたんですよ…!自分の居場所を教えるために!」


警察A「しかしな…犯人からの連絡もないんじゃまだ誘拐とは決め付けられないな…」




ミチル「…」トントン


Dシェゾ「…」


ミチル「…」トントン


Dシェゾ「はっ…」


ミチル「…」


Dシェゾ「目の前に何か…これは…手錠の鍵…?」


ミチル「…」


Dシェゾ「ミチルさん…まだ犯人いるのか…?」


ミチル「…」フルフル


Dシェゾ「居ないんだな…ここに落ちてるの、手錠の鍵か?」


ミチル「…」コクリ


Dシェゾ「ミチルさん、しゃがめるか…?」


ミチル「…」サッ


Dシェゾ「そのまま…動くなよ…」


Dシェゾ「はっ…んっ!ぐっ…!」


ガチャ


ミチル「ありがとう…Dシェゾくん…!すぐに解くから…」


ピンポーン


Dシェゾ「はっ…!?」


ミチル「は…!」


ピンポーン


警察B「警察の者です、どなたかおられませんか?」


ガチャ


警察B「石垣ミチルさんのお宅ですか?はっ!」


ミチル「はあ…はあ…良かった…」


Dシェゾ「警察…!」




警察B「実は北海道警の依頼で事情を伺いに来たんです、災難でしたな…」


ミチル「いえ…私より直樹…主人を殺した犯人は逮捕されましたの…?」


警察B「いや、残念ながら…それについて北海道から捜査官が到着するはずです」


ミチル「私は何も分かりません…ずっとこの家で縛られていたんです」


警察B「いや、奥さんには石垣氏の交友関係についてですが…」


ミチル「あ、はい…そういう事でしたら…」


ラフィーナ「それにしても運が悪かったですわね…」


アミティ「気分、良くなった??」


Dシェゾ「ああ…みんなに心配かけて…すまなかった」


リデル「いえ…Dシェゾさんが無事で本当に良かったです…」


クルーク「とんだ買い出しだったね…」


シェゾ「偶然…か…?」


Dシェゾ「ミチルさんこそ最悪の偶然だったな…強盗に入られている間にご主人が殺害されるなんて…」




ミチル「ええ…事件の事はテレビで知りましたけど…私は身動きも出来ませんでしたの…あの、Dシェゾくんと一緒に…」


警察B「なるほど…」




シェゾ「なあ、Dシェゾ」


Dシェゾ「え?」


シェゾ「お前、最悪の偶然と言ったな…でも、ほんとにそう思うか?あれがみんな偶然だって」


Dシェゾ「ええ…?」


シェゾ「何故あの時、強盗はDシェゾを家の中に引きずり込んだんだ?ほっとけば留守だと思わせられたのに」


Dシェゾ「はっ…!」


シェゾ「それに…何故お前は2度も眠らされた?強盗はそんなに長い間この家で粘っていたのか?」


Dシェゾ「それは…金庫を破るのに時間がかかったから…?」


シェゾ「そう言ったのは、あの人だ」


Dシェゾ「でも…そうだけど…!!」


シェゾ「2度目に眠らされた時、あの人はどうしてた?」


Dシェゾ「ええっ…?」


シェゾ「強盗とミチルさんを同時に見る事が出来たかと聞いているんだ」


Dシェゾ「それは無理だ…真後ろから布を被せられてすぐに何も見えなくなったから…まして、人を気にする余裕なんて…」


シェゾ「そうか…」


Dシェゾ「…!?まさかお前…!!」


シェゾ「しっ…」


Dシェゾ「お前はミチルさんを疑っているんだな…?強盗と一人二役じゃないかって」


リデル「ええ…??」


クルーク「そんな馬鹿な…」


アミティ「でも…どうしてミチルさんがそんな事をしたの…?」


Dシェゾ「もしかして、殺人事件のアリバイを作るためとか…俺を使って」


ラフィーナ「うーん」


シェゾ「強盗と殺人、それに引きずり込まれたDシェゾ…偶然は偶然ではなく実はみんな仕組まれていたんじゃ…」


Dシェゾ「チロをだしにして、俺をアリバイの証人に仕立てようとしたって事か…?」


シェゾ「お前を眠らせている間に北海道を往復すれば疑いがかからない、そう計画したとすればどうだ?」


Dシェゾ「そんな…!そんなのありえない!あの人に犯行は不可能だ…!」


シェゾ「新千歳まで直行便なら1時間半じゃないか?」


Dシェゾ「ここから空港までは?一体どのぐらいかかるんだ?」


リデル「ここから車を走らせて1時間ぐらいですから、合わせて2時間半ですね」


アミティ「片道2時間半なら往復で…えっと…えっと…」


クルーク「5時間だよ」


アミティ「あ、そうそう!5時間!」


ラフィーナ「空港へ呼び出した被害者を待っている時間も殺害する時間も必要ですわね」


リデル「最低5時間半はかかりますよね」


シェゾ「いやでも…」


Dシェゾ「俺が目覚めてからミチルさんを見たのは2時少し過ぎ…俺が眠っていたのはギリギリ5時間しかないぜ」


シェゾ「もう1つ、空港通りでお前の携帯が見つかったのも気になるんだ」


Dシェゾ「うーん…はっ…!そうだ!チャイム!」


アミティ「チャイム?」


Dシェゾ「ああ…玄関に誰か来てチャイムがなった…時間は2時半頃…」


リデル「それ…あの時です…!」


クルーク「酒屋さんの配達!」


ラフィーナ「確か6回チャイムを鳴らしたって言ってたわよね」


Dシェゾ「まて!6回だと!?」


アミティ「うん、6回も鳴らしたのにって言ってたよ!」


Dシェゾ「俺は2回しか聞いてないぜ…?それも立て続けではなく、ゆっくりと」


アミティ「ええー!?」


シェゾ「やっぱりそうだったんだ…」


ラフィーナ「ええ?」


シェゾ「チャイムも駅のアナウンスも犯人が仕掛けておいた録音と思えばいい、それなら理屈が合う」


Dシェゾ「何となく分かったぜ…シェゾの考えてる事…石垣家は2軒あったんじゃないかって事だろ?」


ラフィーナ「なんですって!?」


クルーク「なんの話してるんだ…?」


リデル「なるほど…ここから北海道を往復したとするから時間が足りない、でもDシェゾさんが目覚めたのが空港近くの別の家だったら…!」


アミティ「ああ!あの看板に出てた…!」


クルーク「空港近くのエアポートヴィレッジかな?」


アミティ「そう!Dシェゾが捕まっていたのがそのうちの1軒なら…!」


ラフィーナ「空港までの移動時間が浮くわけですわね!」


リデル「2時間分の節約です…!」


シェゾ「2軒を1軒だと思わせる手品のタネがあのカメなんだ」


リデル「テラリウムごと運べますもんね…」


クルーク「酒屋さんを呼んだ同じ時間に偽の家では録音したチャイムを鳴らす!」


Dシェゾ「2度眠らされた理由は、俺とカメを移動させる為だったんだな…」


クルーク「でも…家が2軒あったなんてどうすれば証明出来るかな…?すごい数の街だよ?」


アミティ「うーん…」


シェゾ「ゴールは目の前なんだ…Dシェゾ、他になにか思い出せないか…?」


Dシェゾ「あ、ああ…」


チロ「ニャー!!」


アミティ「あ、チロ!」


カタン


アミティ「あ!チロのしっぽがジュースの缶に当たって倒れちゃった!」


クルーク「飲み干しておいて良かった…」


Dシェゾ「はっ!!」


クルーク「ん?」


Dシェゾ「そういえばあれは…なんだったんだ…?」


アミティ「なにか思い出した??」


Dシェゾ「2度目に眠らされた時、もがいた反動で近くにあった缶を転がしちまって…でもその缶、転がった方向とは別の方向に転がっていったんだ…」


クルーク「なんだそれ…」


Dシェゾ「もう一度目が覚めた時は缶はピクリとも動かなかったけど…」


シェゾ「分かった!きっとそれだ!」


アミティ「ええ!?」


シェゾ「クルーク!テーブルの端を少し持ち上げてみてくれ」


クルーク「あ、うん…これでいい?」


シェゾ「ああ、見てろよ…えい!」


コロコロコロ…


アミティ「あー!!」


リデル「缶が別の方向に曲がりました…」


ラフィーナ「でもこれがDシェゾさんの話とどう繋がりますの…?」


Dシェゾ「これだ、シェゾが言いたいのは」


クルーク「新聞??」


リデル「えっと…手抜き工事の被害の記事ですか…?」


シェゾ「ああ…床がまるで滑り台みたいって書いてあるだろ?」


アミティ「あー!!」




警察A「分譲会社のリストですぐにわかりましたよ、この家の写真を送ります」




警察B「確かにあなたは運が悪い、せっかく買って改装までした家が手抜き工事だったとはな…」


ミチル「はっ…!そ…そんな…」




シェゾ「なあ…もう1人の警察はエアポートヴィレッジに行ってたのか?」


警察B「ああ…手抜き工事は犯罪だからな…たまたまもう1人警察が現地に行っていたんだ…しかし君たちはほんとに大手柄だね!!」


アミティ「わーい!!」


リデル「嬉しいです…!」




警察B「動機は、別れ話の縺れというごく平凡な物でしたよ」


シェゾ「はあ…そうだったのか…するとあの犯人は初めからDシェゾを狙っていたって事か…?」


警察B「はい、そのようです…賢いし気が強いし、証人にするには最適だと言っていました」


シェゾ「なるほどな…」


警察B「とにかく!事件は無事に解決しました」


シェゾ「はい、どうも…」




Dシェゾ「ふふ…」


クルーク「おいDシェゾ」


Dシェゾ「…なんだ?」


クルーク「何かあったのかい?すごくニコニコしてるよ」


Dシェゾ「まあな…」


アミティ「なになにー?教えてー!」


Dシェゾ「ああ…実はな…こそこそ」


リデル「えーほんとですか?」


アミティ「良かったー!」


Dシェゾ「じゃあ、行くか」


アミティ「うん!」


リデル「はい…!」


クルーク「Dシェゾが…明るく笑って走っていく…」


シェゾ「あいつ…最初に比べてだいぶ表情が柔らかくなったな…」


ラフィーナ「ええ…しかし良かったですわね…チロとカメの貰い手が見つかって」


シェゾ「ああ…飼い主が犯人でも動物に罪はないからな…」




終わり