ゆうゆの能天気ぶりに
多くの方が驚かれているご様子
しかし、ゆうゆの能天気は
こんな物では無いということを
知らしめるエピソードを
これからご披露いたしましょう
ゆうゆは現在に至るまで
生活形態に合わせて
数々の職場で働いてきました
その中でJAの指定業者である
農業資材の工場に勤務していた
時のことである
農業資材とは何かって
農業用パイプハウスは勿論
それに付随するビニールの
加工品をはじめとする
農業に関するもの全般を
扱っていました
その会社で、ゆうゆの担当は
「パイプハウス」
「ビニールの加工品」
「鳥追い資材」
「その他の農業用資材
(反射素材で出来た帽子など)」
の受発注をする
営業事務としてフルタイムの
パート勤務です
毎年明けに新年会と称して
泊りがけで近くの温泉旅館で
一泊宴会を行っておりました
それがとっても楽しみでした
県外から長野県へ嫁いできたので
自宅から近い距離の場所でも
私にとっては
ちょっとした旅行気分
仕事が終わってから直ぐに
旅館に向えるように
泊まりの用意は準備万端
その日は朝から
浮き足立っていました
午後になり刻々と
宴の時間が近づくにつれ
テンションもMAXに
パイプハウスの注文が
入っていたので
資材を準備してくれる
仲良しの叔父様「Tさん」に
資材が揃うか確認を
しに行きました
パイプハウスの規格表を片手に
降りかけのシャッターを潜り抜け
「Tさん」のもとへ
『大丈夫だ何とか揃うよ~
』
『じゃあ お願いね~』
表の紙に目を落としたまま
事務所に戻ろうとした時でした
突然目の前に星がキラキラ
鳥までピヨピヨ鳴きながら
飛んでいました
自分でも何が起こったのか
わかりませんでした
ただ、ものすご~い激痛が
そうです降りかけていた
シャッターに
顔面を思いっきり
ぶつけたのでした
『痛っ~い』
呼吸が出来ないくらいの
痛さでした
しばらうずくまっていましたが
いつまでもそんな事は
してられないと思い
事務所へ・・・
あまりのデカイ音にみんなが
びっくりして出てきました
そして、ゆうゆの顔を見るなり
青ざめた顔で
『あんまり動いちゃだめ
早く横になって』
ものすごい形相でみんな
アタフタ
『な~にどうしたって~っての
どうしてそんなに慌てちゃって』
本人はいたってのん気
みんなは椅子を並べて
横になれるように
用意をしてくれました
『早く横になりな』
泣きそうな顔です
『これでしばらく冷やしてた方
がいいよ』
ハンカチに氷を包んで
手渡してくれました
痛みが和らいだので
起き上がろうとすると
『まだ 寝てた方が良いって~』
と止められました
『これ見てごらん
自分では分かんないかも
知んないけど
凄い事になってるんだよ』
手鏡を渡され 覗いてみると
『眉間のところが異常に
盛り上がってるぅ』
形相が変わっていたのは
自分の方だった
『今は随分治まってきたけど
さっきはもっと酷かったんだよ』
みんなが慌てふためいていたのが ようやく理解できた
『こりゃまたすごいな~』
自分でも感心してしまった
『早めに仕事あがっていいから
医者に行ってきな
今日、新年会に行ってもいいか聞いてきなよ
行って良いって言われたら
会社に戻ってこなくていいから
そのまま旅館に行きなね』
と先に仕事をあがらせてくれました
その足で医者へと向った
レントゲンも取ったけど
骨には異常がないという事だった
そんなことよりも
温泉に入れるのかと言う事が
何より一番気になっていた
さっそく先生に
お伺いを立てて見た
『先生、実は今日新年会が
温泉旅館であるんですが
温泉に入ってもいいですかぁ
』
先生はあきらかに驚いていた
『この人は、こんなになってまで 温泉に入りたいのか
』
先生の心の声が聞こえてきた
しかし、優しい先生だった
『新年会なのそうか
そりゃ温泉に行って入れないんじゃ
つまらないよね~
どうしても入りたいの』
『どうしても 入りたい』
『じゃあ ちょっとだけならいいよ だけどあくまでも
ちょっとだけだからね』
先生はゆうゆの無茶ブリを
見抜くかのように念を押した
『ヤッホー
お許しが出たぞ~』
思ったよりも早めに診察も終わり
真っ直ぐに旅館へと向った
みんなが来るまでには
随分と時間があったので
『よ~し
ちょっと温泉に浸かっちゃおっと』
しめしめ
誰もいない浴室は
貸しきり状態
鏡に映る自分の顔を見て
『おお~
かなり腫れちゃってるな~』と どこか他人事
『ちょっとだけなら
いいって言ったもん』
広々とした浴室は
まだ暖まっておらず
空気もヒンヤリとしていた
『こりゃ温まらないと
風邪を引いてしまうわ』
とさっそく湯船に浸かり
『ああ~ あったか~い
し・あ・わ・せ』
すっかり温まったので
お風呂から出ると
『ここに居たの~
よかった~』
経理の先輩が駆け寄ってきた
そして青ざめた顔して
へなへなとその場に
座り込んでしまった
『部屋に行ったら居ないし
フロントで聞いたら
お風呂に行かれましたよ』
って言うから
『あの子 怪我してるんですよ
お風呂なんかに入ったら』
『そうなんですか
でも元気そうに
お風呂へ行かれましたよ
大丈夫そうでしたが』と
いうやり取りの末
荷物を持ったままで
風呂場まで飛んできてくれたの
そんな心配をよそに・・・
申し訳なさでいっぱいになった
『ごめんなさ~い』
『あっいいのいいの
大丈夫なら
いいの良かった~
』
とゆうゆの無事を心から
案じていてくれたようだった
その後も医者に
アルコールは
やめておいた方がいいよ』
と言われたのにも係らず
調子に乗って飲んで騒いで
過ごしました
チャンチャン
人騒がせなヤツだ
周りの人間は、いつも
肝を冷やす羽目になる
お気の毒様
そして、数日後
治りがけの頃には
眉間の皮下出血は
かなり酷かったようで
広範囲に黒と黄色の
マダラ模様になってきた
『わぁ~
腐ったバナナみた~い』と
また他人事のように
顔の変化を楽しんでいたのでした