任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
今回はスピカ目線のお話。
妄想しかありません。
激しい妄想、激しい創作が苦手な方は閉じて下さい。
大丈夫な方だけどうぞ。
この記事は一週間ほどでアメンバー記事にする予定です。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
スピカ・ラウル
国王ヴェルンヘル・ラウルの娘。
王位継承権は王位継承権第一の姉のセシリアが結婚し、子供が産まれたことからないに等しいが、王女ということとその見た目の良さから、それなりに、モテてはいた。
が。
スピカは結婚することができない相手を好いていて、周囲もそれに気づいていた……
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
昔から一緒に遊ぶことが当たり前だったから、
彼のことがたまらなく好きだと気づいた時にはもう遅かった
山岳長子と王女は結婚できない
ただの友達として前と同じように側にいるだけでもいい
そう思ったのに
チレーナ君が他の女の子と一緒にいると、胸が苦しかった。
チレーナ君が笑顔を向ける相手は自分であってほしいと欲が出た。
成人して日を追うごとに、気持ちが強くなり、想いが募ってどうしようもなくなる。
「スピカちゃん、またピッツァ作ったんだけど一緒に食べない?」
私の好物のピッツァを持って、チレーナ君は誘惑してくる。
チレーナ君✖️ピッツァなんて、最強コンビ……
選択肢なんてないじゃない…!
いつもの場所で、空を見ながらピッツァを頬張る。
チレーナ君は、仕事をしているからいいけど
私は1日ただ歩いているだけだから、こんなにピッツァ食べたら太っちゃいそう……
食べ終わって片付けてをしているチレーナ君の鞄が手から滑り、中身がぶちまけられた。
慌てて拾うチレーナ君を手伝い、落ちた物を拾いあげる。
鉱石やメガネ石とか、イムぐるみまであって思わず笑った。
「ん……?」
見知った袋が目に入った瞬間、驚くような速さでそれをチレーナ君が拾い鞄に突っ込んだ。
思わずチレーナ君を凝視する。
今のはこの前イマノルさんから渡すように頼まれた「例のエ◯本」……
チレーナ君の性格なら、イマノルさんに突き返しているんだろうと思ったけど、未だに持っているということは……イマノルさんの言う通り、チレーナ君が求めた物ということなんだ…
私の考えを察したようにチレーナ君は顔を赤くして
「ち、違うんだよ!返そうとしたら受け取ってもらえなかったんだ!」
必死に否定する。その必死さがなんだか面白くて可愛い。
別にチレーナ君が望んで持ってたとしても、失望したりしないのに。
「でも、中身読んだでしょ?読んだ形跡があるよ」
袋の中身なんて見えないのに私は嘘をついた。
「え?!ちょ…ちょっとしか見てないよ!半分くらいしか……」
狼狽しながらチレーナ君はカミングアウトしてくれた。
半分……多分全部見たかそれに近いページを読んだんだ。
「チレーナ君も男の子なんだから、興味があるのは普通だと思うよ」
「興味がないわけじゃないけど……勉強になるからってイマノルさんが…」
しどろもどろに説明するチレーナ君。
あぁ、そっか。
そうやってイマノルさんに言いくるめられたんだ。
「チレーナ君はモテるから、すぐに彼女できちゃいそうだからかな〜」
あくまで友人として立場で言うと、チクリと胸が痛い。
一瞬、チレーナ君の目に翳りが落ちたような気がした。
「今は彼女は欲しいと思わないな…」
「……そうなの?」
彼を狙う女の子は何人もいる。その中に気になる子はいない?そう思うとホッとする自分がいる。
「俺は………」
チレーナ君は、下を向いてから、また顔をあげて少し苦しげな表情を浮かべた。
「スピカちゃんとこうしてピッツァを食べてるだけで十分だよ」
ストレートに気持ちを伝えられない私たちの関係だから遠回しにの言い方なのか、女の子には興味がないということなのか。
都合が良い解釈で前者にする……
チレーナ君が後者の意味で言ってるわけじゃないって流石に分かるよ…
「私も……」
彼とこうして過ごす時間がこれからもあるようにと強く願い不安に思ったのは、終わりが近いことを予感していたからかもしれない。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
翌朝、チレーナ君と話をしていると、男の子に声をかけられる。
毎朝会いにきてくれる、同級生。アモス君は、チェロ君によく似た顔立ちで女子がカッコいいと騒いでいた子。
私はチェロ君みたいでちょっと苦手だなぁと思っていたけど、顔はいいし、こう毎日会いにきてくれて、話をしていると楽しい。
彼にもすぐに彼女ができそう。
「2人でどっか行かない?」
チレーナ君の目の前で誘われて私は驚いた。答えに困っていると、アモス君は私の腕を掴んで歩き出した。
チレーナ君がなにか言おうとしたけどアモス君が一瞥すると何も言わなかった……言えなかった?
私がチレーナ君の交友関係に何も言えないように彼もそれが出来ない。
私たちは、必要以上に干渉してはいけないのだから……
「スピカちゃんは、チレーナのことが好きなんでしょ?」
歩きながら、アモス君はあまりにも直球で聞いてきた。
「えっと……」
「…………俺は、スピカちゃんがチレーナのこと好きなままでもいいよ」
アモス君は立ち止まる。それに倣って私も立ち止まった。
「いつかスピカちゃんの中から、チレーナへの想いが思い出になるのを、待ってるから」
アモス君の碧い目に魅入られるように、見つめるとアモス君は少し恥ずかしそうに下を向いた。
「………今のって……なに?」
「〜〜〜分かるだろ?」
アモス君は恥ずかしそうに言うと視線を逸らせた。
「分からないから聞いているの」
告白じゃないよね?ここ、道端だし。
*エルネア王国の民はなぜかみんな幸運の塔で告白をします。
「スピカちゃんのことが好きだって言ってんの!」
アモス君は少しやけくそ気味で言った。
「嘘……」
「嘘じゃないよ。スピカちゃんはチレーナしか見てないから気づいてなかったみたいだけど」
「〜〜〜」
ーー否定できない。
私の目にはチレーナ君しか映ってなかったから
私の心にはチレーナ君しかいないはずなのに、
アモス君に好きだと言われて嬉しい気持ちがある。
「……今度返事聞かせてほしい」
アモス君が私の腕をつかんでいた手を解いた。
「…………うん」
顔が熱くなるのを自覚しながら頷くと、アモス君は少しホッとしたような表情を浮かべて、
「じゃあ、また」
と去っていった。
遠ざかる彼の背中を見ながら自問する。
ーー返事?
アモス君と付き合うかどうかってこと?
すぐに脳裏には、チレーナ君の笑顔が鮮明に浮かぶ。
彼への想いが溢れそう。
愛しさと切なさで、目頭が熱くなる。
「………っなんで…」
ーーーー私はチレーナ君と付き合えないの。
目からぽろりと涙が溢れたけど、しばらく止まりそうにない。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
ドルム山のあの場所で、
星空を眺めていた。
夜になりしばらくすると人の気配。
「こんばんは」
いつものように、チレーナ君がやってきた。
「……こんばんは」
少し振り返って、挨拶をすると、視線を星空へ戻す。
チレーナは怪訝そうに私の横にやってきて、顔を覗き込んできた。
端正な顔立ちが目の前にある。
「なにかあったの?」
「ーーなにも」
「でも……泣いていたんでしょ?」
私の顔を見て、チレーナ君は心配そうにしている。
じわっとまた涙が目から滲む。
頭の中は、チレーナ君への想いでめちゃくちゃだった。
どんなに好きでもどうしようもないなんて辛すぎて、目の前にいるチレーナ君に縋りたくなる。
「誰かにいじめられたの?」
泣き出した私を見てチレーナ君は慌てた様子でその大きな手で私の頭を撫でた。
ーーーこの手で守られる相手は、私であってほしかった。
「………スピカちゃん?」
戸惑うチレーナ君。
こんなに遅い時間に、2人きりのこの場所で、彼を独占できるなんて幸せなことかもしれない。
だけど、本当の意味で彼を手に入れることはできない。
この眼差しが、他の人に向けられるのもそう遠くはない。
ーーだったら、せめて………
私はチレーナ君の顔に手を伸ばし、精一杯背伸びをした。彼が怪訝そうな表情から驚きの表情に変わっていく。
私は彼の唇に自分の唇を重ねた。
時間にして数秒。
唇が離れると、チレーナ君は驚いて固まっていた。それから顔を真っ赤にした。
私の顔も熱いから、チレーナ君と同じように顔が赤いかもしれない。
「………思い出がほしいの」
無意識にまた涙が溢れてきて、その涙はチレーナ君をさらに慌てさせたと思う。
「思い出??」
ドギマギしながらオウム返しに聞く彼は、私の言ってるいる意味にまだ気づいていないだろう。
この時の私は、もう我慢の限界だった。
全てを吐き出せたらどんなに楽だろうか。
この想いを彼にぶつけて、振られて終わればこの想いの枷から解放されるのだろうか。
色んな想いが巡って、私はいつもの冷静な私じゃなかった。
「ーー私、私ね、チレーナ君のことが…
……好きな」
決して口にしてはいけない言葉を勇気をもって口にした時、それは最後まで言うことが出来なかった。
私の腕をチレーナ君がぐいっと引っ張って、チレーナ君は私の唇に唇を重ねた。
さっきよりも長い口づけ。
唇が離れると、至近距離でお互いの視線が絡み合う。どちらともなくまた唇を重ねる。
私たちの間にもう言葉はいらなかった。
チレーナ君の手がぎこちく私の胸元のリボンを解く。
私の肌を彼の手が触れる。
今までずっと気持ちを抑えてきたせいか、
私たちはお互いの気持ちを確かめ合うように求め合った。
逞しい彼の腕に抱かれている間、
私はこのエルネアで一番の幸せものだと思った
気がつくと、朝日が昇るような時刻が迫っていて辺りが薄暗くなってきた。
名残り惜しそうに離れるとチレーナ君が私の首元に口づけを落とす。その行為が嬉しくて堪らない。
辺りが明るくなってきて、私の肌が鮮明に見えてくるので慌てて足元にくるまっている洋服を拾って身体を隠した。
今更と思われるかもしれないけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。
「綺麗だよ」
耳元で彼に呟かれて顔が熱くなった
どう答えたらいいのか分からず視線を彼に向けるといつものように穏やかな笑顔を浮かべていた。
「チレーナ君……」
「ん?」
「ーー好き」
「……俺も」
チレーナ君は私の身体をギュッと抱きしめる。その力強さにドキリとする。
「スピカちゃんが好きだ」
彼のこの一言に、私の目から一筋の涙が溢れ落ちた。
ありがとう
チレーナ君……
好きな人に好きだと言って貰えるって
こんなにも心が満たされるんだ。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
身支度を整えて、薄暗い中私たちは家に帰った。
「遅かったね」
王家の居室で、ソファーに腰をかけているヴェルンヘル陛下……お父さんが神妙な顔つきでほぼ朝帰りの私を見ていた。
「ご、ごめんなさい……星空をみていたらうたた寝しちゃったの」
「………そう」
お父さんは私の格好をジロジロ見ていた。
多分、バレてる。
そう直感した。
お父さんはボケボケしているようにみえて、みんなにそう思われてるけど、鋭いところは鋭い。
「寝るなら服を着替えなさい。少し汚れている」
お父さんは、そう言って、ベッドに向かった。
服を見ると指摘通り服は汚れがついていた。
言われた通り着替えてからほんの少しだけベッドで横になったけど、目が冴えていて眠れないし、あっという間に朝がきた。
ご飯を食べ終わり、立ち上がるとお父さんが難しい表情を浮かべている。視線の先にいるのは、
チレーナ君だった。
あれ。
チレーナ君がここにくるのは珍しい……
ゲロルドさんから厳しく言われているのもあってチレーナ君がここにくることはあまりなかったのに。
「おはよう」
いつものように、まるで何事もなかったかのような態度に、私は少しがっかりしつつ平静を取り繕った。お父さんの視線がこちらに注がれているから気をつけないといけない。
「……おはよ」
「キノコでも採りに行かない?」
「うん、いいよ」
森に向かう途中、彼の大きな背中を思わず睨む。
ーー後悔しているのかな
だからなかったことにしたいの?
ズキリと胸が痛んだ。
森のキノコが生えているであろう倒木の所まで着くとチレーナ君はキョロキョロと周りを見回し
「…… 身体大丈夫?」
小声で私に囁いた。
「身体?」
「ーーその………無理……させちゃったかもしれないから心配で…
…スピカちゃんの身体細いから」
チレーナ君は恥ずかしそうに視線を横に向ける。
その耳が少し赤い
そんな態度を見ていたら、私もつられて恥ずかしくなった。
「平気……」
「そっか……良かった……」
恥ずかしさを誤魔化すために、私たちはキノコをとるためにしゃがんだ。
思い出がほしいなんて言ったけど、
彼への想いが募るばかりで、どうしたら良かったんだろう。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
*チレーナからしたら、ヴェルンヘル陛下の前で妙な態度をとることは絶対にあってならないと鉄の心で向かった。なんとか、陛下の前では取り繕うことに成功していたが胸の内をヴェルンヘル陛下は気づいていたのか否か…
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
夜になると無言でチレーナ君に手を引かれる。
態度で彼がなにをしたいのか、私には分かった。
それを拒否する気持ちなんて微塵もない。
また触れ合いたいと思ってしまうのは罪なの?
人目のないところでまでくると、妙な沈黙が流れる。
私の勘違いなのかな、でもなんだか恥ずかしくて顔を上げれない……
どうしようかと俯いていると、彼が動く気配がして、チレーナ君にギュッと抱きしめられた。
私の身体は彼の腕の中にすっぽり包まれていた。
彼の温もり、感触、力強く抱きしめられて胸の鼓動が速くなる。
顎がクイッと掴まれ、唇が重ねられる。
ぎこちないけれど、優しく愛してくれる彼が愛しくてたまらない。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
翌朝はまたチレーナ君から会いにきてくれた。
お父さんの視線が怖い。
チレーナ君はお父さんと目が合うとビクリと身体を震わせた。それでも視線を真っ直ぐ受け止めてペコリと頭を下げると、私の手を引いて歩き出した。
「陛下には全てお見通しかな…」
エルネア城から離れると、はぁとため息をつく。
私が思わずクスクス笑うと、チレーナ君は、
「笑い事じゃないよ」
子供みたいにムスっとしていて、そんな所も可愛いかった。
人通りのない道までくると、チレーナ君が立ち止まって、鞄から包みを取り出し私に差し出してきた。
「お誕生日おめでとう」
「……!ありがとう」
覚えていてくれたんだと目を輝かせた。
包みを受け取り、そっと開けてみる。
銀色の箱のようなものだった。凝った細工がされた小箱。
山岳兵が作る工芸品の一つ、紅玉の紅入れ。
「これ………チレーナ君が作ったの?」
「うん……まだ未熟だから作りは荒いけど……」
作りは荒いというけれど、素人目には全く分からない。彼は手先が器用で飲み込みが早いから工芸品作りは得意なのかもしれない。
「ありがとう………大切にするね」
プレゼントされた小箱をギュッと抱きしめた。
終わりがきても、私の手元には彼が丹精込めて作ったものが残る。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
辺りが暗くなった頃、チレーナ君がまた会いにきてくれた。
息を弾ませている。急いで私に会いにきてくれたのだろうか。
僅かに石鹸の香りがする。
仕事でかいた汗を浴場で流してきたと思うとこの後のことを考えて、私はなんだか落ち着かない気持ちになった。
スッと手が差し出される。
その手は少し震えている。
この関係をいつまで続けるのか、お互い分からないから、どちらがいつ終わりにすると告げるのか。
まるで探り合うような、不安で堪らない私たちの関係。
その手を取ると、チレーナ君はホッとした顔をして、私の手を引いて歩き出す。
向かっている途中で、姉の姿があった。なんとも言えない顔をしていた気がしたけど、暗くてよく分からない……
「チレーナ君……お姉さんに見られた」
「……セシリア様なら大丈夫だよ」
私の手を握る手の力が少し強くなる。
ドルム山には無数の坑道があって子供時代はそこで探検し、そこに色んなものを持ち込んだ。
その中の一つの場所で、小さな灯りだけを頼りに口づけをする。
「……スピカちゃん」
苦しげで切なそうな彼の声に、私は応えるように自分から彼に口づけをする。
ーー大好きな彼を、私が苦しめる
だから終わりにしようってこの夜強く思った。
彼の幸せを祈るなら
私から終わりにしよう。
今夜だけは、
普通の恋人みたいに彼に抱かれたい。
この温もりを、きっと私は生涯忘れない……