221年 思慕 | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています



スピカ・ラウル

セシリアの妹。ヴェルンヘル、リンゴの娘。
大人びた発言が目立つが中身は年相応の子供で繊細なところもある。

そんなスピカの姿がみえなくなったとリンゴやヴェルンヘルたちが探しているが彼女の姿はどこにもない……





妹のスピカの行方が分からなくてなったのでセシリアはその捜索に加わった。

導きの蝶でも探すことのできない場所にいる。

セシリアは父ヴェルンヘルに会いにいった。


ヴェルンヘルは国中を駆けずり回っていて捕まえるのに苦労した。

導きの蝶を使っても、父はなかなか捕捉できない。

導きの蝶も万能ではなかった。

ヴェルンヘルの動きがおかしいだけかもしれないが。

セシリア
「お、お父さん……ちょっと話が……」

ヴェルンヘルの腕を掴んだ時にはセシリアは息を切らせていた。ヴェルンヘルも汗だくになっていた。

ずっと娘を探していたようでその顔は疲労と焦りが滲んでいる。



ヴェルンヘル
「セ……セシリアか……スピカは……」

息を切らせてセシリアに訊ねる。セシリアが首を横に振るとヴェルンヘルは「そうか…」と落胆した。


セシリア
「導きの蝶で行けない場所なら、お父さんが詳しいんじゃないかと思ったの」


ヴェルンヘル
「……心当たりは全て探したんだが…」

禁断の森にある花畑は居場所が「禁断の森?」となるので国民には居場所がイマイチわからなくてもヴェルンヘルやリンゴにはどこにいるのか明白だった。

セシリア
「国王の隠し部屋は?」

ヴェルンヘル
「たしかにあの場所は導きの蝶ではいけない。が、スピカはあの場所を知らない。同じくチェロもだ」

セシリア「そう……」


ヴェルンヘル
「迷いこんでいることも考えてリンゴと探しに行ったがいなかった」


セシリア
「あとどんな場所が導きの蝶が反応できないんだろう……」

これについては、国王であるヴェルンヘルが一番詳しいと踏んでいた。
国民はあまりそのことについて気にせず生活する者も多いが、彼はよく姿を消すことから精通しているとセシリアは察していた。


ヴェルンヘル
「魔法の探査に引っかかりにくくなるのはダンジョンや細い道……」

眉を顰め、思い出そうとするように呟く。


セシリア
「森の小道で迷子になってるのかな……」

うーんと考えていると、ヴェルンヘルはセシリアを見つめた。

ヴェルンヘル「セシリア」


セシリア「なに?お父さん」


ヴェルンヘル
「何か心当たりはないか?」


セシリア「心当たり?」


ヴェルンヘル
「スピカは14日、15日2日連続で授業に出ていないそうだ。真面目なあの子が連続で休むのはらしくないといえば、らしくない。この三年間、連続で休むことはなかったそうだ」


セシリア
「授業を欠席……?」

そんな話をこの前聞いたような。

「チレーナ君がそんなこと言ってたっけ」

14日たしかにスピカは授業に出ていないとチレーナが言っていたのを思い出した。


セシリア
「国外に出た可能性、または連れ去られた可能性は?」

ふと、あまり考えたくはないが恐ろしい方の可能性がないか口にすると

ヴェルンヘル
「15日から16日にかけて、旅人の出入りはなかったから可能性は低いと思う」


父の言葉にセシリアは安堵する。国外に連れ去られれば見つかることは困難を極める。

だが、スピカの姿が見えなくなって、一晩が経ち、それでも見つからないとなると今の状況もなかなか厳しいように思えてきた。

セシリア
「やっぱりどこかで迷子になったのかなぁ」


ヴェルンヘル
「昨日の夕刻、スピカの居場所を探査した時、あの子はドルム山にいた。山岳兵がドルム山の入り口付近でスピカの姿を見たと言っている。最終目撃は今のところドルム山ということになる」


セシリア「ドルム山……」

胸がざわついた。


ヴェルンヘル
「最終確認地点はドルム山……心当たりがあるだろう」

セシリアはドキリとした。

普段ぼんやりしているように見えて、父はセシリアを見透かしているような発言をすることがある。普段の情けない姿やぼーっとしているのが、まるで本来の姿を隠しているような。


セシリア「………」

父の確信した言い方に、セシリアの顔が青ざめた。

ヴェルンヘル
「とにかく手分けして探そう。スピカが昨夜からいないとしたら、体力的に限界だ。早く見つけてあげよう」

一刻も早く見つけないといけない。ヴェルンヘルは珍しく焦っているように見えた。


セシリア「はい」

固い表情でセシリアは頷く。

ヴェルンヘル
「山岳兵団にも捜索要請を。ドルム山をチェロが探しに行ってくれてるがドルム山にいるとしたら山岳兵団じゃなきゃきっと見つけられないだろう。」


セシリア「分かりました」


山岳兵団の村にいくと、母リンゴがイマノルと話をしていた。

イマノル・ボイドは今の山岳兵団の兵団長。彼に話を通さなければ協力は得られない。


イマノル
「ふぅ〜ん……スピカちゃんがここに、ねぇ」

意味深な目でドルム山の頂を横目で見る。


リンゴ
「心当たりは探したの。あとは各ダンジョンか、ドルム山くらいしかなくて。森は騎士隊が捜索しているからドルム山をお願いしたいの」


イマノル
「そりゃ、もちろん。」


アルシア
「山岳兵、召集してくる」

近くにいたアルシアが駆け出した。


イマノル「セシリア様」

セシリアの姿に気づいたイマノルがセシリアの元へやってきた。


イマノル
「スピカちゃんって、チレーナと仲良かったよねぇ。今チレーナは家にいるから、話聞いてきてくんない?」


セシリア「分かりました」


セシリアはミラー家に向かった。

ミラー家に入るとミラー家隊長のゲロルドとチレーナがいた。


ゲロルド「セシリア様…」

珍しい訪問客に驚くとともに外でザワザワしている気配にゲロルドは表情が少しかたくなる。

セシリア
「こんにちは。実は妹のスピカが行方不明でドルム山での捜索に協力していただけないでしょうか?」


ゲロルド
「スピカちゃんが行方不明…?」

寡黙な男の表情が僅かに険しくなる。

セシリア
「最終確認地点はここドルム山なんです。山岳の方々のお力を貸してください」

ゲロルド「それは、もちろん」

出かけるためにゲロルドはテーブルの上に置かれた帽子を被る。

チレーナ
「スピカちゃんがいなくなっちゃったの?」

驚きと不安の入り混じった声を出したチレーナがセシリアの腕をつかんだ。


セシリアは膝をつき、チレーナに目線を合わせた。


セシリア
「そうなの。チレーナ君、心当たりない?」


チレーナ「………」

チレーナは首を横に振った。


セシリア
「今日はスピカちゃんのこと見かけた?」


チレーナ
「………会いに行こうとしたけど……会えなかった」


セシリア「それはいつ?」

その質問にチレーナは一瞬答えるのを躊躇うように、父ゲロルドの方をチラリと見る。ゲロルドがコクリと頷くと、

チレーナ「朝だよ」


ゲロルドは二人のやりとりを黙って見守っている。


セシリア
「そう……ありがとう。もしなにか気づいたことがあったら教えてね」


チレーナ「……うん」

頷くとチレーナはドアを開いた。


ゲロルド「チレーナ」

外に出ようとする息子の背中に向かって静かに声をかけた。チレーナがびくりと身体を震わせた。


ゲロルド
「……王家の方々をお守りするのも我ら山岳兵団の役目だ」

チレーナは振り返り、ジッとゲロルドを見ると

「うん」

何かを決意したような目をして頷くと今度こそ家から出ていった。


セシリア「あのー……」

今のやりとりに怪訝そうにゲロルドを見るとゲロルドはため息をついた。


ゲロルド
「……スピカ様がいなくなったのは恐らく俺のせいです」


セシリア
「どういうことですか?」


ゲロルド
「一昨日……14日の朝、チレーナが出かけようとした時にチレーナに言いました。スピカ様とは一緒になれないから、距離を置くように、と。毎朝のようにチレーナが会いにいくものですから、流石にお互いのためにならないと俺が口を出してしまって……」


チレーナ
『うるさいな!父さんには関係ないよ!』

ゲロルド
「珍しくチレーナは反抗的な態度をとってきて、話が長くなりました。窓の外を見ると、スピカ様が走って去っていくのが見えて、気配に気づいたチレーナが追いかけていきました…」

セシリア
「スピカちゃんは偶然話を聞いてしまったんですね」

ズキリと胸が痛んだ。


ゲロルド
「そのようです。申し訳ありません……スピカ様を傷つけてしまいました」

ゲロルドは普段は寡黙な男だった。
息子にあんな苦言を呈することは心苦しかったに違いない。

彼の心中を察するとセシリアは申し訳ない気持ちになった。

自分の無知が、皆に苦しい思いをさせてしまっている。

セシリア
「それをいうなら……私が(プレイヤーが)一番悪いのでゲロルドさんは悪くありません」

ゲロルド「そんなことは」

セシリア
「私……最近まで、スピカちゃんとチレーナ君が一緒になれないことを知らなくて、仲を取り持つような事をしていました。私は二人に酷いことをしてしまいました」


後悔の言葉をどれだけ並べても
時計の針は元には戻せない。





辺りが薄暗くなってきた頃、チェロがやってきた。

チェロは誰よりも先にドルム山に入っていて、クタクタの様子だった。

顔には疲労の色が滲んでいる。

チェロ
「ニヴの丘の方面を探したけどだめだった。いくつもある脇道も片っ端からみたけど、多すぎてキリがないよ……」

地の利がないチェロがこれ以上探すのは危険が伴う。王子まで行方不明になっては、とリリーがチェロに一旦休むように伝えたという。

セシリア
「ありがとう……チェロ君」


チェロ
「そっちは?何か掴めた?」


セシリア「実は……」

ゲロルドに聞いたことをチェロに伝えるとチェロは大きなため息をついた。

チェロ
「あー……やっぱりな」


セシリア「………」

心当たりがあるらしい弟の言葉の続きを待つ。

チェロ
「チレーナ君はほぼ毎朝うちにきていたし、スピカからも会いに行ってたから……スピカは好きじゃないって言ってたけど………あー……そっかぁ」

最後の方は独り言のように呟くと支給された飲み物をごくごくと飲み干した。

「スピカは大人びていたり達観しているけど、繊細なところがあるからな…」

実はセシリアとスピカは過ごした期間がとても短い。スピカが生まれたのが216年。セシリアが結婚したのは218年。スピカが物心ついて一年くらいでセシリアは家を出てしまったから、チェロよりも知らないことが多い。


セシリア
「どうしよう、スピカちゃんが崖から落ちたりして怪我して動けなくなっちゃってたら…」

辺りがだんだんと暗くなり、夜の帳が降りようとしている。ドルム山の入り口には魔銃師会の人も集まってきた。


その数は多くなっていき、事態の大きさをセシリアは改めて思い知る。


チェロ
「スピカのことだから、ただ迷ってるだけだと思うよ。」

山岳兵でも迷い込んだらなかなか出ることができないドルム山の天然の迷路。

誤って子供が入ってしまえば一日中出れなくても不思議ではない。

心配でたまらないと顔を真っ青にしている姉を弟は気遣う。


セシリア
「そうだといいんだけど……」

セシリアは坑道の中に入り、山岳兵と合流して捜索に加わった。


セシリアが捜索に向かったあとチェロは1人で考え事をしていた。

山岳兵団の長子と結婚できないという話をスピカが知ったのは最近なのだろうか?

少なくともチェロは前から知っていたような気がした。

スピカと共に巫女からその教えてを受けたような気がしたがーー

チェロ「あ」

チェロは思い出した。

その授業をスピカと受けていたとき、子供のチェロは騒ぎまくって、


スピカ
『もう、チェロ君うるさーーーい!!』

幼いスピカはイライラしながら叫んだ。

チェロ
『バグウェルパーンチ!』

部屋中を駆け回り、巫女の話はほとんど入ってこなかった。妹の怒りの叫びにもチェロはお構いなしに騒ぎ続ける。

スピカ『もう💢』

巫女もどこまで話したのか分からなくなり、スピカはどこを聞き逃したのかイライラしたせいもありたいして気にもとめなかった。

それが後に、こんなことになるとは知らず。


チェロ
「………スピカが知らないの、俺のせいじゃん」

ポツリと呟く。

ザァァァと突然どしゃぶりの雨が降り出した。

夏であっても雨が降れば夜は冷え込むだろう。

(……大丈夫かな…)

雨に濡れることに構う素振りもなく心配そうに、チェロは坑道の方角に目をやる。


雨は激しさを増し、夏の夜を冷やしていった。