任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
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成人した
成人式が終わったその足で、
練兵場に向かう。
いつもと違ってみえる景色。
冷たい空気を切るように足を進め、
近衛騎士隊の選抜にエントリーする。
「………」
無言で選抜トーナメント表を見つめる。
彼の隣には別の女性がいて、彼の幸せを願って自分の道を進むと決めた。
他にどんな道があるというのだろう。
戦うことしかできない自分に他に選択肢があったのだろうか。
選択肢なんてない……
私は選ばれなかった。
ーーあの人に選んでもらえなかった
魔物と戦うことは平気なくせに、バルナバにアタックする勇気はない。
選んでもらえなかったのに、彼に気持ちを伝えて木っ端微塵に玉砕したら?
自分が立ち直れるのか、正直自信がない…
……私はバルナバから逃げたんだ。
胸が締めつけられる気持ちになってトーナメント表から視線を逸らし、立ち去ろうとすると……
山岳兵の青年が、自分と同じようにトーナメント表を見つめていた。
青年と目が合う。
彼はいつものように優しげな笑顔を浮かべるのだけど
「リリーちゃんならきっと勝ち上がれるよ。頑張ってね」
なぜか哀しげに見えた。
彼の激励の言葉はグサリと胸に突き刺さる。
まるで告白して振られたような……
リリーには分かっていた。
振られたのと同じだと。
当時、山岳長子と騎士隊の人間は一緒になれないのだから。
成人した年の、寒い冬の日の出来事…
先程まで感じていた寒さは全くなく、むしろ汗ばむくらいの暑さだった。
目が覚め、ベッドから起き上がる。
リリー・フォードは懐かしい夢をみた。
「………どうしてそんな昔の夢を」
感じた疑問は、身体の違和感と肩にある黒い影で解消する。
リリーはフッと笑った。
「そっか……迎えにきてくれたんだ」
ジェラマイア、エティ陛下、エドモンド、バーニー、バーニス、バルナバ、レイラ、ローデリック、ティアゴ、ヨーズア
みんなの肩にいた黒い天使がやっと自分のところへやってきた。
今日がリリー・フォードの最期の日だった。
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12日はセシリアの誕生日
セシリア
「ありがとう。こうして祝ってもらえてうれしいな」
まだ朝だというのに、外は真夏の日差しが照りつけて暑かった。
誕生日でも、あまり嬉しくない。
セシリア
(ーー四年前も、こんな気持ちだったなぁ)
セシリアはリリーを見舞うためにエルネア城へ。
弟と何気ない会話を交わすが……
セシリア
「チェロ君はおばあちゃんのところへは…?」
チェロ
「……さっき顔出してきた」
チェロの表情は暗かった。
セシリア
「そっか。具合悪そうだった?」
チェロ
「いや……普通にご飯食べてた。ピッツァ食べてたよ。ガロニピッツァ」
ガロニピッツァとわざわざ言ったチェロの意図をセシリアは気づいた。
生前のバルナバ兵団長が亡くなる前にリリーに大量にピッツァを差し入れしたとセシリアは噂で知っていた。
リリーはこの広い騎士隊長の居室で1人で暮らしている。
リリーの肩には黒い天使が見守るように佇んでいる。
前までまだ死神だと思っていたけど
ファンブックで天使という記載が確かあったようななかったような
セシリア
「具合はどう?」
リリー
「殿下……
少し休めば大丈夫
明日には良くなるよ……」
セシリア「………」
言ってる本人も、周りも明日にはよくならないことはわかっている……
見舞いが終わり、セシリアは一度退室する。
スピカの居場所をみると
?
魔銃師会?
移動中だった。
珍しくスピカがチレーナを引っ張っている。
イノセンシオ君が無邪気にお誕生日を祝ってくれた。
セシリア(そっか、誕生日……)
祖母の危篤で途中から誕生日が抜け落ちていた。
リリーを見舞う人はきっと多い。ずっと祖母のそばにいれば、気を遣わせて迷惑になるかもしれない。セシリアはアナちゃんを誘って食事に向かう。
アナ
「お誕生日のお祝い!
おめでとう、殿下。
また多くの幸せが訪れますように」
セシリア
「誕生日か………
あんまり実感ないけどね」
アナ
「まあ、みんなそんなものじゃない?
だからお祝いでもして気持ちを切り替えようってことでしょ」
セシリア
「子供のころは大人に近づく気がして誕生日が楽しみだったけど、大人になっちゃうとそうでもないよね」
とはいいつつも、大人にならないとレドリーにアタックが出来ないからセシリアは早く大人になりたかった。
昔のことを思い出しながらアナちゃんとの食事の時間が過ぎていく。
こうしてお誕生日を祝ってもらえるって嬉しい。
アナちゃんありがとう。
ドゥーガルの誘いを真違えて受けてしまった。
苗字調整もあるが普通に門出を祝いため神殿で待機する。
カルラちゃんから差し入れ。ありがとう。
結婚式が始まる
レリアちゃんはヴェルンヘル陛下の弟ギオルギーの娘。セシリアとは親戚関係になる。
お相手のニール君は、さっきいたカルラちゃんのお母さんのガラちゃんのお姉さんの息子。
親戚ということもあるのかレリアちゃん側にチェロの姿もあった。
もう数日リリーが元気でいてくれたらチェロも結婚の報告ができたけど……こればかりは仕方ない。
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時は遡り
208年30日
リリー・フォードは浴びた瘴気の影響で体調が急激に悪化し倒れる。
そのまま年がかわり209年
この年はエルネア杯が行なわれる。
この国を狙う敵国に、龍騎士が倒れたことを悟られないために、リリーが倒れたことは数名だけで共有される。
対戦相手になる可能性になる者たちには伝えられることはなかった。
体調が急激に悪化した頃、リリーはダンジョンに入るようエティ陛下の命令が下る。
体調が悪いことを周囲に悟られないための配慮だった。
実際はウィアラの酒場の一室に身を隠していた。
ウィアラは人のいない時間に食事をリリーに運んできた。
ウィアラ
「外、見張りがいるから気をつけてね」
リリー「……見張り?」
リリーは眉を寄せた。
ウィアラ
「どうやらここに潜伏していると目星をつけたみたい」
リリー
「………誰が見張ってますか?」
ウィアラ
「山岳兵団のバルナバ兵団長」
リリー「ーーー!」
思わず息を呑んだ。
やはりバルナバに隠し通すのは難しいと悟る。
それでも。
一度ついた嘘は突き通す。
決定的なことを掴まれない限り、嘘が嘘であるとは分からないのだから。
バルナバとエルネア杯の舞台で全力で戦う。
きっとこれが、バルナバと対戦する最後の試合になるのだから。
リリーは薬を服用し、痛みもない状態でバルナバとの対戦を果たした。
209年エルネア杯は、バルナバ・マルチネスが龍騎士となった。