219年 Little boys ー追記ありー | エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国モニカ国の暮らし。

エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。

*ティアゴは子供の頃は確かこの髪型でした

 
ティアゴとローデリック。
 
ティアゴの方がローデリックより1歳年上。
 
 
 ティアゴ・バーナード(赤服の男性)

ガルフィン魔銃師会所属
現魔銃導師
普段は落ち着いているが、本来はそんな奴じゃなかった。子供の頃はそれなりにやんちゃだった。


ローデリック・チチェスター(鎧姿の男性)
 
ローゼル騎士隊所属
現騎士隊隊長
口数が少なく、知り合い以外とはあまり話さない。そのためよく誤解される。いざとなったら友人を助ける一面も。
子供の頃は無邪気で泣き虫だったらしい。
 
 
 
 ゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.





今から15年以上昔のこと……
 
 
 
友達になった理由は、小さすぎて覚えていない。
 
 
 
物心がついた時から、ローデリックとは友達だった。
 
 
 
 
牧場にいったり、虫を捕まえてにいったり泥団子を作って大人を攻撃したり。
 
平凡な子供時代を過ごした仲間だった。
 
 
 
 
 
 
 
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+
 
 
 
 
 
 
ローデリック
「ねえ、そろそろ帰ろうよ」
 
 
太陽が木々の中に沈んでいき、地上を照らす光がなくなってきている。
 
真っ暗になるのは時間の問題だと子供心に危険を感じた。
 
 
 
ティアゴ
「もうそんな時間?!仕方ないなぁ」
 
まだまだ遊びたりないティアゴは不満そうな顔をしながらダンジョンを離脱しようとした。
 
 
間もなく太陽が地平線に沈み、辺りは暗闇に包まれる。
 
 
ティアゴ
「宿題のハナムシは持った?」
 
 
ローデリック
「うん!虫かごにいれたよ」
 
 
虫かごのハナムシを見せながらローデリックが満足そうに笑う。
 
 
ティアゴ「よし、帰ろう」
 
 
出口に向かって歩きだすがローデリックがついてこない。
 
 
ティアゴ「ローデリック?」
 
 
 
振り返ってみるとローデリックはまるで呪縛にでもあったかのように動けないでいた。
 
 
 
森の奥にギラリと光る眼があり、低い唸り声をあげていた。
 
一段と高い唸り声を上げた瞬間、ローデリックは飛び上がって驚き
 
 
「うわああああああ!!」
 
 
大声をあげながらその場から逃げ出した。
 
 
「うわああ?!」
 
 
ティアゴもつられて叫び、ローデリックの後を追った。
 
 
 
 
無我夢中で逃げて、どれくらい時間がたったのか分からない。それが10分なのか、5分なのか、もっと短い時間なのか……
 
ローデリックとティアゴは草むらに身を隠した。ぜえぜえと大きく肩を上下させながら呼吸を整える。二人とも汗だくだった。
 
 
空を見上げれば月を隠すように雲が風に流されて、地上の草木は風で揺れている。
 
風の音だけが聞こえる。
静寂に包まれていた。
 
 
 
ローデリック「……ティアゴ…」
 
ローデリックの声は泣きそうだった。
 
 
ティアゴ
「大丈夫だよ、静かにしてればきっと見つからない」
 
 
ローデリック
「虫かご落としちゃった」
 
 
ティアゴ
「こんな時に虫かごなんてどうでもいいよ💧」
 
 
ローデリック「宿題……」
 
 
ローデリックはメソメソと泣いた。
 
 
あんな怖い思いをしたというのに宿題の心配をしていた。
 
 
 
ティアゴ
「怖がりなのか、そうじゃないんだかわかんないなぁ、お前」
 
膝を抱えてしょんぼりしているローデリックの頭をティアゴは撫でた。
 
 
ティアゴ
「授業がはじまるまえに、捕まえればいいんだよ!」
 
 
 
ローデリック「…まにあうかな?」
 
 
ティアゴ「虫取りならまかせてよ」
 
ーー年上の自分が励まさなければ。
 
ティアゴは虫取りが特別得意ということではないが泣いているローデリックを励ましたかった。
 
時間までに間に合わなかったら誰かに貰おう、そんなことを考えていると、物音がして二人は身を固くした。
 
出来るだけ身体を小さく、小さくする。
 
 
足音がした。
 
 
魔物が近くを通って、通り過ぎていく。
 
 
そんなことが何回も続いた。
 
二人には勝てなそうな強そうな魔物も徘徊していて生きた心地がしなかった。
 
 
ティアゴとローデリックは剣を持ちながら、交戦する時がこないことを神に祈りつつ、身を隠す。
 
 
 
どれくらい時間が経ったのだろう。
 
 
 
魔物とは違う足音が聞こえてきた。
 
 
 
 
「ティアゴーー!ローデリック!いたら返事して!!」
 
 
ティアゴにしてみれば聞き覚えのある声で、ローデリックは知らない声がした。
 
ティアゴはガバっと立ち上がって、
 
 
「ここだよーーー!」
 
精一杯の大きな声で、その声に応えた。
 
 
ガチャガチャと鎧の擦れる音が近づいてくる。
 
 
 
「こんなところに!」
 
綺麗な金色の髪の毛をなびかせた女性がティアゴたちに近づいてきて、ティアゴとローデリックの視線を合わすために膝をついた。
 

 
「大丈夫?怪我はない?」
 
騎士隊に入ったばかりのリリーが、心配そうに二人を交互に見た。
 
 
ティアゴ「うん、大丈夫」
 
 
ローデリック「……へいき」

涙を拭いながらローデリックは答えた。二人の無事な姿にリリーは安堵の表情を浮かべた。
 
 
リリー
「無事でよかった……どうしてこんな奥地まできちゃったの?」
 
 
ティアゴ
「変な魔物から逃げたら、気づいらきちゃった」
 
 
 
「二人が無事で良かった。もう夜が明けるから帰ろう」
 
 
リリーの後ろには熟年の騎士が立っていた。その手には虫かごがありローデリックの視線は虫かごに釘付けになった。
 

 
ローガン
「ん?これは君の?」
 
その視線に気づいてローガンは虫かごを二人に見せる。
 
 
ローデリックはコクリと頷いた。
 
 
ローガン
「途中で落ちてたんだ。ーーどうぞ」
 
虫かごを受け取り、ローデリックはホッとした様子で
 
 
「これで宿題が提出できる」
と、虫かごをギュッと抱きしめた。
 
 
ローガン
「そっかそれは良かった!」
 
逞しいローデリックに、ローガンは笑っていた。
 
 
 
 
 
 
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.
 
 

「二人がまだ帰ってこない?」
 
 
ティアゴの母ジョーハンナから、ティアゴとローデリックがまだ帰ってこないという一報が入る。
 
夜3刻のことだった。
 
 
二人の居場所はドルム山となっていて、詳細は不明だった。
 
 
男の子はよく探検だとか言って、山にも森にも入る。その類いだろうと思った。
 
また魔物に遭遇したのかな?
 
 
リリーはドルム山に急いで向かう。夜3刻ともなると、人通りがほとんどない。
 
交友関係から山岳の知り合いを見てみるとみんな家にいる。

リリー(バルナバももう家で休んでるかぁ)
 
こんな時真っ先に頼りたいバルナバも帰宅していた。状況もよく分からないのでリリーは一人で山に入った。
 
 
 
しかしドルム山ということだけでは二人がどこにいるのか分からない。
 
 
坑道はいくつもあり、使われていない坑道に入られていたら見つけるのは困難だろう……やはり山岳兵の協力がないと難しい…と考えていたとき、誰かが近づいてきた。
 
 
「リリーちゃん」
 
 
突然後ろから声をかけられてリリーはビクリとして振り返った。
 
 
リリー「……!バルナバ」
 
 
 
バルナバ「こんな時間に坑道で何をしてるの?」
 
*二人はまだ未婚の頃のお話の設定です。
 

 
リリー
「バルナバこそ。家にいたんじゃなかったの?」

仕事が終わって家に帰っただろう人がわざわざまたどうして来たんだろうと不思議に思ってつい口に出てしまった。
 
 
バルナバ「……」
 
リリーの物言いにバルナバが怪訝そうな顔をする。
 
 
リリー「……!」
 
暗にバルナバの居場所を事前に調べたと言ったようなもので、リリーはハッとして視線を足元に落とした。
 
 
「ティ、ティアゴとローデリックがまだ帰らないって親御さんから連絡が入って……二人の居場所がドルム山だから探しにきたの」
 
 
バルナバ
「噂のわんぱく小僧たちかぁ」
 
少し考えてから
 
「よく子供たちが入っていく洞窟があるんだ。もしかしてそこかもしれない」
 
そう言いながら歩き出した。リリーはバルナバについていく。
 
 
リリー
「もしかして、一緒に探してくれるの?」
 
 
バルナバ
「うん。ドルム山で人がいなくなったら俺たちが探すのが道理だし……それに」

バルナバは言葉を切った。
 
 
リリー「それに?」
 
 
バルナバ
「リリーちゃんも迷子になりそうだから心配だよ」
 
にこっと優しい笑顔で言われた言葉にリリーはバルナバを睨む。
 
リリー「💢」
 
 
バルナバ「ごめんごめん」

謝りながらもバルナバは楽しげに笑っていた。
 
 


他の山岳兵にも声をかけて、手分けして探すことになった。
 
 
リリーとバルナバは子供たちがよく探検をしているという洞窟へ。
 
 
しばらく歩くと
 
 
バルナバ
「こっちは行き止まりなんだ。見てくるからここで待ってて」
 
ランプを持ってバルナバは走って左側の通路に消えていく。数分後戻ってきた。
 

 バルナバ
「いなかった。右の道に進もう」
 
 
リリー
「……詳しいね。もしかしてバルナバも探検していたことがあるの?」
 
 
バルナバ
「ここはしょっちゅうきてた。母さんや父さんに叱られるとここに逃げ込んでたよ」
 
 
リリー
「それはそれは、ここにもわんぱく小僧がいた」
 
リリーはニヤリと笑った。
 
 
バルナバ
「子供の頃はみんなそんな感じでしょ?リリーちゃんは最後の方はダンジョンばっかりか……」
 
 
リリー
「………誰のせいだと」
 

 ーーバルナバに失恋したから、恋人が出来たから……私がどんな気持ちでダンジョンにいたと思ってるの。
 


小さい呟きは、バルナバにはよく聞こえなかった。 
 
バルナバ「今なんて?」
 
 
リリー「なんにも………ん?」
 
 
洞窟の奥で何か聞こえてきた。バサバサとした………羽の音がした。物凄い数がこちらに向かってやってくる。
 
 
咄嗟にバルナバがリリーに覆いかぶさった。黒いなにかが二人の頭上を飛んでいく。羽がバルナバの身体にぶつかる音がした。
 
至近距離にバルナバの顔があってリリーは動揺した。心臓がバクバクとうるさいくらいに鼓動が速くなる。
 
 
コウモリの大群だった。
 
コウモリが、過ぎ去ると、バルナバはサッとリリーから離れた。
 
 
バルナバ「ごめん、咄嗟に……」
 
ーーリリーちゃんのいい匂いが……
 
 
 
リリー「ぁりがと……」
 
ーーバルナバの匂いがした……
 
 
 
二人はお互いの温もりと匂いにドキドキしていた。
 
邪な事を考えてはダメだとバルナバは思考を戻そうとする。
 
 
 
バルナバ
「この奥に魔物か、ティアゴ君たちがいるかもしれない」
 
コウモリはこの奥の音に反応して移動したのかもしれないとバルナバは考えた。
 
リリー
「急ごう!もし、魔物に襲われていたら大変!」
 
 
二人は洞窟の奥に向かって走り出した。
 
 
 
 
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.
 
 
洞窟探検なんて、特別なことじゃない。
 
他の奴らもやってるし、いつも通り、ちゃんと帰れると思ったんだ。
 
 
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.
 


この日は瘴気がいつもより濃かったせいで、普段魔物がでない坑道にまで小型の魔物が出現していた。
 
途中で戦闘になり、勝ち目のない敵から逃げようとしたら一緒に連れてきたローデリックが足を挫いてしまった。
 
 
怪我をしたローデリックをティアゴはおぶって敵のいない方いない方に逃げていたら洞窟の奥の方まで入り込んでしまった。
 
 
ローデリック
「もういいよ……僕のことは置いて逃げてよ」
 
 
ティアゴ「そんなこと出来るわけないよ」
 
子供の力ではもう限界だったが、年下を置いて自分だけ逃げるなんて絶対に出来ないとなんとか歯を食いしばりながら、元来た道に向かって歩いていた。
 
 
ティアゴ(どこからきたのか分からない……)
 
目の前に分かれ道が3つもあった。どれも似たような道なのでどこからきたのか見ただけでは判別できなかった。
 
 
ティアゴ(どうしよう……)
 
一度ローデリックを下ろして、座って休憩をとる。
 
 
ローデリック
「今って何時だろう……… 」
 
 
ティアゴ
「坑道の中にいると時間がよく分からないね」
 
会話が続かなくて洞窟内は静かになった。
 
 
時折ぽつんぽつんと水滴が滴り落ちる音が聞こえるだけ。
 
 
心細くなったのか、ローデリックは涙目になった。それを見たティアゴはなんとか場を明るくしようと適当に話題を探し、
 
 
ティアゴ
「そ、そーいえば……ローデリックって好きな子いんの?」
 
適当に好きな子の話を振ってみた。
 
 
ローデリック
「………?!えっ、すきな子?!」
 
なんで今?!みたいな顔をしてローデリックは驚いている。
 
 
ティアゴ
「いいか、成人になるとみんなすぐ狙った子にアタックする。成人してから仲良くしようなんて思ってたらあっという間に他の奴に取られちゃうよ」
 
 
ローデリック
「なんでそんなこと知ってるの…」
 
 
ティアゴ
「神官のニーノさんが教えてくれた。簡単に空き家に誘っちゃだめってことも」
 
 
ローデリック
「空き家??なんで空き家に誘っちゃだめなの?」
 
ローデリックは無垢な目でティアゴを見ている。
 
 
ティアゴ
「まだローデリックには早かったぁ…というか俺もよく知らない。愛を語らう場所だってニーノさんは言ってた」
 
 
ローデリック「いみわかんない…」
 
幼いローデリックには難しいようだった。
 
 
ティアゴ「で?好きな子はだれ?いるんだろ?」
 
 
ローデリック「い、いない、そんな子……」
 
 
しどろもどろになりながらローデリックは首を横に振った。しかしティアゴはローデリックが誰を好きなのか見当はついていた。
 
 
ティアゴ「サブリーナちゃんだよね」
 
 
ローデリック「!!!」
 
目を見開いてローデリックは驚いた。分かりやすい反応にティアゴは笑った。
 
 
 
ガサッ……
 
 
 
物音がして二人がびくりと肩を震わせてる。
 
 
 
洞窟の奥から小型の魔物が数匹姿を現した。
 
 
魔物と共にコウモリが騒ぎ出し、ティアゴたちの頭上を飛び去っていく。
 
 
ティアゴとローデリックは武器を構えた。
 
 
ティアゴ
「ローデリックは下がってて!」
 
 
ローデリック
「……俺も戦う」
 
痛みに顔を顰めながら、ローデリックは先制攻撃をした。ティアゴもそれに続いた。
 
一体倒しても奥からまた数体魔物が姿を現し二人は絶望的になった。
 
攻撃をした時にローデリックが体勢を崩した。魔物がそこを容赦なく攻撃してローデリックはダメージを受ける。
 
ティアゴが魔物を叩き斬るがなかなか数は減らない。
 
 
ティアゴ「くっ……」
 
ティアゴはローデリックを再びおぶって走り出した。
 
すぐ真後ろに魔物の気配がする。
 
追いつかれたらどうなるんだろうと恐怖に支配されながら必死に走った。
 
走っていうちに前方からも気配を感じて、ティアゴはもうダメだと思った。
 
 
「ティアゴ!」
 
その気配はティアゴの名前を叫んだ。ランプの灯りがリリーともう一人山岳兵の青年を照らしている。
 
 
ティアゴ
「………!!」
 
 
バルナバが二人のもとに駆け寄り、通りすぎて二人の背後に迫った魔物を叩き伏せた。
 
 
リリーもそれに続き剣を振るう。
 
息がピッタリな二人の攻撃は、魔物を一撃で沈めていき、ダメージ一つ負う事なく魔物を殲滅した。
 
 
バルナバ
「大丈夫かい?」
 
ティアゴにおぶられたローデリックをひょいっと抱き上げる。
 
ローデリックはコクリと頷いた。
 
 
ティアゴ「そいつ、足を挫いちゃってるんだ」
 
人見知りしているローデリックの代わりにティアゴが答える。
 
 
バルナバ
「そっか。怪我してるのに頑張ったね」
 
バルナバはにこっと笑いローデリックの頭を撫でる。ローデリックはコクリと頷いた。
 
 
リリー
「ティアゴも偉かったね。最後までローデリックを守って」
 
リリーは膝をついて、ティアゴをギューっと抱きしめた。
 
 
ティアゴ「ま、まあね。」
 
ティアゴはちょっと得意げだった。バルナバが複雑そうな表情をしていたがすぐに視線を逸らせた。
 
 
リリーは疲れ果てたティアゴを抱っこして、バルナバはローデリックを抱き上げたまま洞窟を出た。
 
 
洞窟の中にいると時間の感覚がおかしくなるみたいで、外はもう明るくなっていた。

太陽は真上近くまで昇っていた。
 
大人に抱っこされている子供たちは、一晩中動き回っていて疲れたらしくぐうぐうと眠っている。リリーとバルナバは顔を見合わせてクスリと笑った。
 
 
 


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.



ティアゴとローデリックが何度も迷子になっていた


普段無表情のローデリックと魔銃導師ティアゴのやんちゃな子供時代の話をリンゴは楽しげに聞いていた。


リンゴ
「前にセシリアたちに迷子になっていたの文句言ってたけど、自分も迷子になってるじゃん」


ローデリック
「レドリーもセシリア様もルイスも大人だった」

子供じゃないんだから迷子になるなと言いたいらしい。


リンゴ
「ティアゴ君がうちのお母さんに弱い理由がこれで分かった気がする」

ティアゴはリリーに対して不遜な態度をとらないし大抵のことは耐えてリリーに従っている。


ティアゴ
「……… その節は大変お世話になりました」

ティアゴは独り言のように呟いた。


リンゴ
「うちのお母さんに保護されたのは2回?」


ティアゴ
「……いや………うん、そんな感じ」

しどろもどろな感じにリンゴは笑った。


リンゴ
「もっと保護されたんだ」


ローデリック
「15回くらい?17回?」

誤魔化したいティアゴと、正直なローデリック。


リンゴ
「二人ともどれだけ迷子になってんの?」


ティアゴ
「帰りが遅くなっただけで必ずしも迷子になって保護されたわけではない」

何か言い訳しているが、外野からしたらそんなことどうでもいい。


ローデリック
「何度魔物に殺されそうになったか……お前との探検は命がけだった」

ふうと息を吐きお酒を飲む。


ティアゴ
「ついてきたのはローデリックだろ?」


ローデリック
「お前がプリンくれるっていうから…」

プリンは幼いローデリックにとって魅力的すぎる食べ物だったらしい。

魔物の恐怖すら跳ね除けるほど…


リンゴ「………」


幼いティアゴがローデリックをプリンで釣って、ローデリックが目を輝かせてティアゴについていく姿を想像し、リンゴは微笑ましく思った。


楽しい夜は更けていった。





 ゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――



三人で酒場を出る。

 

 

春はもう終わり、明日から夏がやってくる。

 

 

夜空を見上げながらそんなことを思いながら隣にいるローデリックに向き直る。

 

 

リンゴ「御馳走さまでした♪」


支払いはリンゴのはずだったが、気づいたらローデリックが支払ってくれていたのでリンゴはお礼を言った。

 

 

ローデリック「うん、また飲もう」

 

相変わらずの無表情だが……その表情は少し柔らかい。酔って少し機嫌がいいのかもしれない。



リンゴ

「明日はローデリックさんの誕生日だから今度こそ私が奢るからね♪」

 

 

ローデリック「……楽しみにしてる」

 

 

そう言ったローデリックの身体がグラリと傾いた。リンゴの顔にローデリックの影がうつる。

 

 

自分のほうに倒れてくるローデリックの姿にリンゴは驚き目を見開いた。

 

 

咄嗟にティアゴが腕を伸ばしてローデリックの身体を受け止めた。

 

 

ティアゴ「だ…大丈夫か?」

 

 

ローデリック「……悪い…飲みすぎた」

 

グッタリとしながら絞り出される声。

 

 

リンゴ

「飲みすぎたって……」

 

それ以上言葉が出ない。

 

 

ティアゴ

「ーー腕貸せ。家まで送っていく」

 

ローデリックの腕を自分の肩に回して、支えながらティアゴは城下通りに向かって歩き出す。リンゴも付いていった。

 


チチェスター家はエルネア城の騎士隊長の居室。


待っていた妻のサブリーナさんはティアゴに連れて帰ってこられたローデリックの姿にとても驚いた様子だった。

 

ベッドにローデリックを寝かしあとはサブリーナさんにお願いしてティアゴとリンゴはチチェスター家をあとにする。

 

 

リンゴ「………」

 

 

立ち止まりチチェスター家である騎士隊長の居室を振り返る。

 

 

ティアゴもリンゴに倣って立ち止まり同じように振り返った。

 

 

 

ティアゴ「………気づいてるんだろう?」

 

それは訊ねるというより、確信している言い方だった。

 

 

リンゴ「……うん」

 


リンゴは俯いた。

 

 

ティアゴ

「ありがとう。ローデリックのやつ、楽しそうだった」

 

 

リンゴ

「え?楽しそうだった??」


驚いて顔をあげてティアゴをみる。

 

 

ティアゴ

「すごく楽しそうにしてた」


頷きながらティアゴは言った。

 

 

リンゴ「それは、分からなかった…」

 

 

リンゴは帰るティアゴを見送るため、エルネア城の外まで歩き出した。

 

 

リンゴ「今日はありがとう」

 

 

ティアゴ「おやすみ」

 

 

リンゴ「おやすみなさい」

 

 

帰っていくティアゴの背中を見ながら、ローデリックが倒れそうになった時を思い出し、ぎゅっと服を握りしめる。

 

 

明日はローデリックの誕生日。

 

お願いだから、明日連れていかないでと死神に願う。

 

 

 

 

 

 

ローデリックに残された時間はもう僅かだった。

 

 

 




 

 

あとがき

 

早ければ218年の末からローデリックの

「様子が変だな…?」が出て彼の時間が残されていないことが分かります。

 

最初はどういう役割なのか分からず、ティアゴと喋っていたことを見かけ登場させたローデリック。

彼の台詞は本当に難しかった。

彼の台詞だけぽっかり空いて、奴の台詞が終われば公開できるレベルで止まるほど。

 

言葉が足りなくて誤解される生きにくいローデリック。そんなローデリックはけっこうお気に入りでした。

 
 
 
 
 ー追記ー
一部アメンバー記事になっている
パラレルリンゴseason1を9月30日くらいまで(この辺り適当)誰でも読めるようにしておきます。

小さなローデリックも出てくるので興味のある方は良かったら読んでみて下さい(*´∀`*)