任天堂スイッチ版エルネア王国をもとに書いております。
「王命に納得できぬのなら、ジェレマイア・フォードよ。たった今から、しばらくそなたに謹慎を命じる。
試合の時以外一歩たりとも部屋の外に出ることを許しません」
冷たい声が、玉座の間に響いた。
バルナバ「陛下?!」
エティ「バルナバ。そなたの山岳兵団で、ジェレマイアの監視をするように。騎士隊だと逃す可能性があるゆえ、、いいな、必ず監視せよ」
バルナバ
「待ってください、こんなのあんまりです!」
エティ「エルネア杯の決勝にいくそなたも謹慎処分になるだけだぞ。いかがするバルナバ」
エティの態度は変わらなかった。
山岳兵団の団長の自分まで謹慎なれば周りが混乱する。バルナバはそれ以上言えなかった。
バルナバ「...へ、陛下のご命令のままに..」
絞りだすように言うと、それを聞いたエティは去っていった。
玉座は静まり返っていた。
呆然とつっ立っているジェレマイアにバルナバが声をかける。
バルナバ「大丈夫?ジェレマイア君..」
ジェレマイア
「バルナバさん、すみませんご心配をかけて..
謹慎になっちゃいました」
ジェレマイアは力なく笑った。
バルナバ
「..しばらくのんびりするといいよ。差し入れするから」
ジェレマイア
「...じゃあ、山岳兵団のピザでお願いします」
バルナバ
「たくさん焼いて持っていくよ」
間もなく王国アナウンスが流れる
近衛騎士隊騎士ジェレマイア・フォードを今から無期限の謹慎処分とする。監視役はドルム・ニヴ山岳兵団に一任する。ジェレマイア・フォードへの面会は、家族と山岳兵団以外禁止とする。
ルーク
「なにがどうなってるんだ?」
リリーの弟であり、ジェレマイアの義弟でもあるルーク・フォードは姉と義兄の相次ぐアナウンスに驚きを隠せなかった。
ジョゼット
「謹慎処分って、あの温厚でお優しいエティ様がお決めになったの?信じられない」
ルークの妻ジョゼットは困惑した。
平和なエルネア王国に流れる異例のアナウンス。
これが騒乱の始まりになるなど、誰が想像できただろうか。
リンゴは一部始終を見ていた。リンゴは城から飛び出した。
無我夢中で走っているとシズニ神殿の前まできた。
リンゴは息を切らしながら、神殿に入る。
誰もいない神殿内は静まり返っていた。
リンゴは静かに佇む像を見上げる。
「なんで」
リンゴは神殿の硬い壁に物を叩きつけた。
「なんで
なんで神さまは、お母さんを助けてくれないの!!
本当は神さまなんかいないくせに!!!」
悲痛な叫び声を上げてリンゴは次々と物をなげつけた。
物が壊れる音が鳴り響く。
投げた香水の瓶が割れて辺りに飛び散った。
ティアゴ
「リンゴ!」
後を追ってきたティアゴが、リンゴを後ろから抱き抱えて投げるのを制止させる。
リンゴ
「離してよ!
こんなところ、壊れてしまえばいい.!
神さまなんて、いないんだから!!」
ティアゴ
「落ち着いて!落ち着いてったら!!」
暴れるリンゴを必死に押さえる。
物音に気付いたのか人の気配がした。ティアゴは導きの蝶を取り出して転移魔法を使った。2人は神殿から移動した。
着いた場所は果樹園だった。
人がいない所ならここだろうと判断した。
リンゴはわんわん泣き出した。
ティアゴ
「きっと、いい薬が手に入るから!見つかるまで探すから!大丈夫だから!」
ティアゴは泣きじゃくるリンゴの頭を撫でたり、背中をポンポン叩いたりした。
リンゴはティアゴの胸で泣いた。ティアゴは困惑しながら、片腕でリンゴの頭を抱えて引き寄せた。
____私の声は神様には届かない
ようやく泣き止んだリンゴがティアゴにエルネア城まで送ってもらうと、城の周りには山岳兵団の人間がうろついていた。
謹慎処分となったジェレマイア・フォードの監視だった。
ユズがリンゴのところにやってくる。
ユズ「..リンゴ、大変だったね」
ユズは泣き腫らしたリンゴの目を見て察した。
ティアゴ「リンゴのことお願いします」
ユズ「送っていただきありがとうございます」
ティアゴとユズは互いに頭を下げ、ティアゴは帰っていった。
セイ「すげー!!山岳兵団がいっぱいだー!
ヘヴィスラーシュ!!」
セイはいつもはいない山岳兵団の姿に大興奮してティムたち男性陣に戦いを挑んでいた。
ティム「ほら、セイ君はもう寝ないと。部屋に戻らないとお父さんが心配するよ」
セイ「僕まだ寝ない!バグウェルパーンチ!」
モモ「セイ!うるさい!!!」
城の前で子供たちがワーワー騒ぐ。
バーニーがセイを抱き上げる。
セイ「おじさんおろしてよー!僕まだ寝ないー!」
バーニー「もう寝る時間だよ。部屋に戻ろう」
セイは小さな体をくねらせて、バーニーの腕から逃げ出した。
バーニー「わっ!セイ君!」
セイ「悪者になんか捕まらないぞー!バグウェルキーック」
バーニーの足にセイの年齢とは思えぬ強烈なキックがはいる。
バーニー「いた!」
セイがダッと逃げ出す。
バーニー「さ、さすが騎士隊長の息子..」
バーニーが痛みに驚いていた。
ユズが冷たい目でそれを見ている。
ギオルギー
「セイ!うるさいぞ!僕と勝負だ!」
ギオルギー王子が参戦してきた。
ここは子供が三人もいる。
去年だとリンゴとヴェルンヘルもいれたら5人もいた。
アリス「王子!もうお城にお戻り下さい!」
セイ「ギオルギー君!今度は気絶しないでよ!」
バーニー「え?気絶ってどーゆーこと!?」
セイがギオルギーに向かっていったところをバルナバがひょいっと抱え上げた。
セイ「はーなーせー!あ、お前はママをいじめた奴だな!僕と勝負だー!」
セイはジタバタと足をバタつかせて暴れた。
バルナバ「いじめたわけじゃ..」
バルナバは苦笑しながらエルネア城に入った、
玉座の間でセイを下ろすと、バルナバはセイと同じ目線になるように膝をついて、セイを見つめた。
バルナバ「セイ君。今ママは、大変なお仕事をたった1人で頑張っているんだよ。セイ君が早く寝ないでみんなを困らせたら、ママが帰ってくるのが遅くなってしまうよ。ママのためにも、パパの所に戻って早く寝ようね」
セイ「うー..分かった..」
セイは渋々頷き、部屋に戻っていく寸前で
セイ「やっぱりお前は許さない!
バグウェルキーック!!」
セイの強烈なキックが、腰をおろしていたバルナバの背中にお見舞いされた。
夕刻母を負かせた相手は子供には複雑なのかもしれない。
バルナバ「いた!!」
セイは素早く部屋に入っていった。部屋の中から
「なにいまの?誰かの声聞こえたけどセイお前またなにかしたのか?!」
ジェレマイアの困惑した声が聞こえてくる。
セイ「僕なにもしてないよー!」
ギオルギー王子が、城に入り、リンゴも続いて入っていく。
リンゴの泣き腫らした目を見て、バーニーやバーニスは声をかけられなかった。
ティムはそれを複雑な様子でみていた。
ティムとリンゴは知り合いではなかったが父や姉に会うためによくうちに出入りしているリンゴの存在は知っていた。
ティム(あの子、なんか、癖がありそうなんだよなぁ。同世代よりも、年上とばっかりいるし..何考えてんだか分からないな..)
お気楽な同世代の人たちの中で、ティムはリンゴを密かに「曲者」や「妙な奴」と目をつけていた。
この2人が知り合いになる日ははたしてくるのか。それはバルナバの気まぐれにかかっている。
こうして、大混乱の夜は更けていったのでした。
*あとがき
神様なんていない。
8年前の震災時、激しく思ってしまいました。
なぜあんなに沢山の人たちが亡くならなければならなかったのでしょう
天災はあまりにも無慈悲でその前に人間はあまりにも無力です。
一人の知り合いは家が流され、一人は行方不明のまま。
今はただ、亡くなった方々の魂が安らかに眠ること、ご遺族や大切な方を亡くした方々の悲しみが癒えることを願うばかりです。
あの日のことは忘れない。生きている私にできることはそれだけなのだから。
昨日3.11の記事を書いていたら号泣しちゃって完成しませんでした。
被災地の人たちは、もっと辛いのに。
人物紹介で終わります。