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ワールドネバーランドエルネア王国の日々をプレイし、それをもとに書いています。
プレイした際のスクショをもとに書いておりますが創作(妄想)も多くございます。
創作話が苦手な方は閲覧お控え下さい。
辺りは騒然としていた。
魔人の群れがやってくるのが遠目からでも見える。
アリーチェはごくりと唾を飲み込んだ。
チレーナの声が響きわたる。
魔人の大群と渡り合うため、チェロの指示で皆が整列する。
山岳も近衛騎士隊もごちゃ混ぜだが、あえて斧と剣の波状攻撃によって敵に確実にダメージを与えるのが目的だ。
剣の攻撃が苦手な敵もいれば、斧の攻撃を苦手とする敵もいる。それに対応するにはどちらも配置してしまえばいい。
後方で待機と言われたスピカだが、整列した近衛騎士隊と山岳兵の前に仲間と共に出て、魔銃をぶっ放した。
チレーナはそれを内心かなりハラハラしながら見ていたが表情には出さなかった。
やがて魔人の群れとチレーナたちの部隊は激突し、乱戦となった。
斬っても斬っても次の敵が現れる。
魔人との戦いは思ったよりも長期戦になった。戦っている人たちに疲労の色が見えはじめる。
アリーチェ
「——っ……」
斧を振る腕が疲労で限界を迎えようとしていた。腕が上がらない。
(こんな戦い、いつまで続くんだろう………
少し前まではこんな事なかったのに……終わりがくるの?来年も戦いが続いてるの……?こんなことしてたら、アトラスと結婚する前に死んじゃう……)
「アリーチェちゃん!!」
ハッと我にかえったとき、目の前にピンクの服が見えた。
魔人の鋭い爪の攻撃をスピカが魔銃でうまく流し、腰の剣を鞘から出すと剣戟を繰り出し、魔人は倒れた。
スピカ
「私のそばを離れないで」
アリーチェ
「は、はい!!」
次の相手はすぐそこまで迫っている。アリーチェは懸命に斧を振るい続けた。
どれだけの時間が過ぎたのか、気がつくと魔人が撤退しはじめた。
チレーナ
「深追いはするな!」
チレーナはぜーぜー息を吐きながら周囲を見回す。倒れている仲間がいないことを確認して安堵した。
アリーチェ
「スピカ様……先ほどは危ないところをありがとうございました」
アリーチェはぺこりと頭を下げた。
スピカ
「んーん、アリーチェちゃんが無事で良かった」
スピカはにこりと笑いアリーチェの頭を帽子の上から撫でた。
「戦いの最中、思いつめた顔をしてたけど、なにか悩み事?」
気遣うような言い方に、アリーチェは視線を彷徨わせた。
アリーチェ
「この戦いがいつまで続くんだろう……ずっと続いて来年になっても終わらなくて、戦っていたらアトラスと結婚する前に死んじゃうかもって……」
アリーチェの声は途中から掠れ、小さくなっていく。
魔人の群れと戦い、スピカにかばってもらわなければよくて大怪我、最悪死んでいた状況。考えていたことはすぐに現実になるところだった。
スピカ
「そっか……先のことを考えると不安だね。」
戦いの最中にそんなことを考えて危険な目にあったことをスピカは責めなかった。
アリーチェ
「アトラスはまだ……結婚は早いって思ってるみたいで………もっと自分の役目を果たしてからって言ってたから……私ばっかり気持ちが先走りしちゃって空回りして……バカみたい……です」
言ってからアリーチェは後悔した。きっと1番言っては駄目だろう相手に言ってしまった。
「——ご……ごめんなさい……耳障りな話をしてしまいました……申し訳ありません」
アリーチェの悩みは昔のスピカからしたら贅沢な悩みなのだ。付き合うことすらできなかったスピカからしたら、どれだけ望んでも手に入らない関係だったのだから。
スピカは嫌な顔をしなかった。スピカからしたから昔のこと。
スピカ
「思ってること、ちゃーんとアトラスに言ったほうがいいよ。伝えないと後悔ちゃうよ。」
アリーチェ
「………スピカ様は後悔してますか?」
その言葉に、スピカは少し考える。
彼と過ごした日々が蘇る。
(——自分の気持ちが溢れてしまったこと……それは後悔はしていない
進むためにも、必要だった。
苦しかったけど、必要だった……)
スピカ
「——私は、大事なことは言えたかな。………だから今、私はこの場所に立っている」
この場所。
無数の魔人が倒れている、戦場。
夕陽が傾きはじめて、スピカたちを照らす。
夕陽に照らされたスピカはとても綺麗だった。絹のような滑らかなポニーテールが風でなびく。
真っ直ぐとアリーチェを見つめる瞳は蒼くてとても美しい。その様子は、立派な武人だった。
アリーチェ
(スピカ様はエルネア杯で決勝戦までいった方だし……そもそも王妃様も、お祖母様も龍騎士だった……武人の血筋の人でもあるからか……所作が綺麗だけどカッコいい……)
「後悔しないよう……精進します」
スピカ
「頑張ってね」
アリーチェは決意を固めたような表情になった。
部隊は撤収することになり、皆でゾロゾロ歩きだした。
チレーナ
「おつかれ」
後ろから追いついてきたチレーナはぐいっとスピカにトロピカルジュースを寄越してきた。
スピカ
「あ……ありがとう」
そのままチレーナは歩く速度をあげて、どんどん前に進んでいった。
スピカ
(——彼とこうして、戦場に居られるだけで……十分だもの)
差し入れされたトロピカルジュースを一口飲む。甘さが疲れた身体に染み渡った。
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――
アリーチェ
「突然だけど今からデートしない?」
断れる雰囲気ではなかった。アトラスはこくりと頷き、アリーチェの後ろを歩く。
着いた先は神殿のアトリウム
アリーチェは真剣な眼差しでアトラスを見つめると切り出した。
「私……アトラスと結婚できたらなって思ってるんだけど……」
アリーチェの表情は少し険しい……
愛の言葉なのに、アトラスにはあまりそんな風に感じなかった。例えば武人が死ぬような危険な戦いに行く前に、家族に別れを伝えるような、そんな決意に満ちた台詞に聞こえたのだ。
アトラスがそんなアリーチェに動揺しているとアリーチェは悲しげに笑った。
「ごめん、アトラスは待っててって言ったのに。」
アトラス「いや……驚いただけだよ」
アリーチェ
「スピカ様にね、思ってることちゃんとアトラスに伝えなさいって言われてね………私、後悔したくなくて。たくさん、アトラスに大好きだって伝えておきたい……いつなにがあるか分からないから」
アリーチェはギュッとスカートを握りしめた。
「今日、魔人の群れと鉢合わせして………死ぬかと思った。スピカ様に助けてもらってなけらば私は死んでた。」
アトラス「……アリーチェ」
アトラスは自分よりも小さいアリーチェを見つめた。山岳の後継ぎはこの前まで子供だったというのに実力もまだついていない状態で戦場に送られる。この細い身体でどれほどの重荷を背負っているのだろう。
アリーチェ
「私もっと頑張る……アトラスが頑張ってるように私も沢山努力して立派な山岳兵になる……だから、私のこと見捨てないで……」
アトラス
「見捨てるとか……そんなことあるはずがない。みんなを守るために必死に戦ってるアリーチェを見捨てるなんてあるわけないだろう」
アリーチェ
「傷だらけの彼女でも、嫌にならない?」
アトラス
「アリーチェが頑張った証だよ」
アトラス
「俺もアリーチェと一緒になりたい。……でも役目を他の人に引き継がないといけないし……少し待ってもらえないかな……」
アリーチェ
「わかった。
大丈夫だよ、待ってるから」
アリーチェが帰ってから、アトラスはアトリウムを眺めながら小さく息を吐いた。
——真剣に今後のことを考えないといけないな