母親から電話がかかってきた。
先日の私達の結婚記念日にも父親から「おめでとう」と「仲良くしているか?」心配して電話がかかってきたばかりだった。
妹が離婚してしまったからか、父は心配してやたらと「仲よくしているか?」聞いてくる。
そして、チーチーに対してとっても気を使っている。
娘の私に愛情をかけて欲しいから。
そして、私がチーチーに大事にしてもらっているときちんと伝えているから。
母もそうだ。
母は何か言いたそうで、いつもと違う。
少し待ってみる。
「ところで、あなた方、赤ちゃんはまだなの?」
ついに言われた。
今までは気遣って直接は口にしなかったことだ。
「あなたももうギリギリの年齢だけど、チーチーさんはもっと上なのよ。
そろそろ限界じゃないの?いい加減にしないと。」
私だってわかっている。
最初から私は焦っていた。
チーチーは物凄く淡白で、時間の問題だと思った。
なのに結婚式の直前に「子供はもう少し先にしようか」と言われてショックだった。
お義父さんとお義母さんからは、自分たちの飲み食いや親戚一同のホテルの要求と心配の電話が何度もチーチーにかかってきていた。
挙句の果てには、理砂さんからも新婚旅行に行かないのなら料亭まで案内しないのかとメールがきた。
あの時、「お前の親にタカられて困っている。私はこれからの生活が心配で、コツコツ貯めた新婚旅行代も自分の分や親の分もお前たちの要求にあててしまった。」
喉元まで出かかった言葉を飲み込まずにはっきり言えばよかった。
チーチーに子作りは先にしようといわれた事と新婚旅行に行かないのではなく、行けないのだと伝えると理砂さんは、「子供は神様からの授かり物」とかワケの分からぬことを言っていた。
理砂さんは私より年上で40代だ。分からぬわけがない。
また、馬鹿でもない。ズル賢い人なのだから。
あれからお義父さんとお義母さんと理砂さんからの要求はずっと続き・・・。
私達はずっと子作りすらしていない。
ギリギリの生活だったからだ。うちの親に支えられながら。
もう最近ではチーチーには、そんな元気すらない。
昨年の秋口にも母からの電話で
「お母さんたちがあなた方に余裕を作ってあげようといくら頑張っても同じね・・。」
といわれた。
うちの親は自分たちは厳しい生活なのに、孫の顔見たさにせっせと私達に援助。
一方は自分たちのことしか考えず要求ばかりで、うちの親のつくってくれた余裕も何もかも吸い尽くして、礼は言わずに文句ばかり。
私達は度々、あの人たちのさもしい行いでケンカばかり。
その度にチーチーへの愛情が薄れて行くような気がする。
チーチーは自分の親については、ずっと前から諦めているそうで言っても無駄だからといって何にも言わない。
関わりあいになりたくないし、せからしいから要求されたことだけ応えるのだと言う。
この年になって、理解を求め得られたとしても今さら鬱陶しいと思っているのだろう。
普通はどちらかが事がわからなかったりするのだが、チーチーの親は2人とも事が分からない。
更に妹の理砂さんまでわからないフリをしている。
大変だろうけど、親にはちゃんと相談・報告しないとと何度も言い、これまでは自分ひとりが我慢すればよかったのだろうけど、あなたが我慢すると私も我慢しなければならないし、うちの親には大変な負担をかけ続けている。
そして、ゆくゆくは自分たちの子供にも、あの人たちの為に我慢を強いる羽目になる。
私は死んだように生きて行くのはごめんだ。
子供が欲しいし、そのゆとりが欲しい。私の為に頑張ってくれ。
そう説得し続けた私も今ではあの人たちにはもう関りあいたくもない。
自分たちは好き勝手に生きて、親の面倒も子の面倒も見ず、血の通った人間ではない。
「親」だという理由で縁を切れないチーチーを可愛そうにすら思う。
そして時々、ふと頭をよぎるのだが、
「この人といる限り、子供は望めない。人生を謳歌することもできないのかもしれない。」ということ。
その度に絶望を感じて頭がクラクラする。
一体、私は子供が欲しいのか?それはこの人とだから欲しいと思うのか。
最初はそうだったはずなのだが。
全く焦りを見せないのは本当は子供が好きではないの?
今すぐ赤ちゃんができたとして、子供が20歳になるまで父親が生きているかどうかわからないのに、年老いた私は一人で育てられるのかしら。
それは無責任ではないのか。
今年から要求を断ったこと、また、そのおかげか昨年の終わり頃からチーチーが食費を出してくれるようになったので、私は待ってもらっていた国民年金や税金の支払いを少しずつしている。
僅かばかりながらも余裕が出てきた。
しかし、もうチーチーには子作りをするような元気はない。
まさか、相手の親にタカられて子作りの機を逸してしまうとは・・・。