己はどこからきたりて、どこへ向かおうというのか。
一体何者なのか。
誰でも一度は考えたことがあると思う。
かつての恋人は血筋を辿ってデンマークへ旅立ち、珍しい名字だった友は家計図と残された書物を土蔵で引っ掻き回したと言う。
自分の根源とかルーツを探して存在価値を見出す旅。
だいたい思春期などにこの衝動が訪れるようだ。
私も最初が小学生の時で、祖父と城跡に出かけた際、
「お前は世が世なら姫だったのじゃぞ。」
「その証拠にほれ、これを見てみい。」
と、石碑に刻まれた「○○家○○祖父の名」を見せられた。
金縁で飾られた立派な刻印にすっかり信用した私は、後日また見に行って
「世話人 ○○家○○祖父の名」に気づいて騙された事が判明する。
冷静に考えてみれば、武士の時代に祖父の名が刻まれているはずがない。
アホな小学生だった。
次が中学の時で、たしか宿題だったと思う。
家に帰り、父親に家計図はどこかと尋ねると
「燃やした。」
のひとことで終わった。
何でも
「お父さんの頭にはしっかり入っているから、必要ない」らしい。
その場で質問してみたが、私の祖父の祖父までは言えたが、
その上の階層からつっかえ始め、祖父の祖父の祖父ぐらいになると誤魔化し始めた。
母が横から「家計簿ならあるよ」とか言ってきて、おざなりになった。
その後、ごみ箱から父の手書きらしい家計図?の書きかけを発見した。
ヤバイと思ったのか、苦労して何度も書き直した跡があったが諦めたらしい。
我が家のルーツは消失した。
今日、何をいいたかったのかというと、
10月10日体育の日は両親の結婚記念日なのだ。
ある意味で私のルーツだ。
夕方、「おめでとう」の電話をいれたら父が出て、
「忘れていたことを内緒にしてくれ」と言われた上に、
何周年なのか尋ねると、「お前の年+1年か2年だ。」と言い放たれた。
母に代わって「おめでとう」と言うと、大きな声で「あっ!」と声を漏らした。
二人とも忘れていたのだ・・・。
うちの両親は長男と長女の「うっかり夫婦」だ。
でも、人の事は言えない。
私も昨日、友達に「明日、体育の日だね」と言われて思い出したのだから・・・。
もちろん、私は長女です。