そして・・・

 

一つ前の記事(こちら↓)から、続きます。

 

 

診察室に呼ばれ、お医者様から検査の結果について説明がありました。

 

特養の看護師さん・ユニットマネージャーさん・母・COCOの4人で説明を受けました。

 

検査結果としては・・・

 

血液検査の結果では、いろいろな数値が少しずつ良くないです。

いろいろな炎症反応が出ているのだけれど、

「どれ」といって顕著に悪いところがあるわけではないです。

 

再検査・もっと詳しい検査をすれば体調不良の原因がわかる可能性はあるけれど、

詳しい検査の結果、たとえば「がん」だとわかったら、

手術をしますか?放射線治療をしますか?

 

「・・・・・」

 

高齢・(現在の)体力が著しく低下している状態では、

手術にも積極的な治療にも耐えられるとは思えません。

検査をしたところで、

「あ~胃がんじゃなくてよかったね!」と、ちょっと安心するだけで、状況は全く変わらない。

 

積極的な治療を考えていないなら、これ以上の検査をする必要はないと思います。

 

もちろんご家族が、詳しく調べてもらいたいとおっしゃるなら、検査をしますが・・・

ご家族のご意向は?

 

「おっしゃる通りだと思います。手術や積極的な治療はお断りします。」

 

 

それでは、これからのことをご相談したいと思います。

 

点滴で水分を補給することは可能ですが、栄養補給はほぼ無理です。

 

人間の体というのは、

口から物を食べて、胃や腸といった消化器官で消化吸収をすることで成り立っている。

点滴だけで、内臓を動かさないと、消化器官がどんどん衰えて、

他の病気を発症することになりかねません。

 

(言われてみれば・・・入院中に食事を食べなくて、肝膿瘍になったことがあったなぁ・・・)

 

栄養補給という観点から見ると

「胃ろう」または「経鼻チューブ」で胃に直接入れるという方法があります。

 

※ 「胃ろう」とは・・・

   内視鏡を使って、胃に穴をあけてそこから栄養を補給する方法

※ 「経鼻チューブ」とは・・・

  鼻から入れたチューブから栄養を補給する方法

 

「胃ろう」は、内視鏡を使いますから、体への負担も少ないし痛みもありません。

「経鼻チューブ」は、医療的には簡単ですが、本人にとっては・・・

どちらも、特養では対応していないので、病院に入院して過ごすことになります。

 

根本的な「治療」ではなく、「栄養補給」になるので、現状維持の延命措置。

病院のベッドの上で、栄養補給をしつつ、様子を見るということになりますね。

 

「先生、母は食べられない現状に辛い思いをしているんでしょうか???」

 

食欲がないようですから、「食べられなくて辛い」というのは無いように思います。

お食事に関しては、無理強いはしていないので、

無理に食べさせられて、辛い思いをしているということもないと思います。

毎日、それはそれは穏やかな表情で過ごされていますよ。

 

と、わたしの質問にはユニットマネージャーさんが答えてくださいました。

 

そして、お医者様が・・・

 

おそらく・・・

体が、だんだん衰える中で栄養を必要としなくなっている。

いわゆる「老衰」です。

「空腹」という感覚自体、すでに感じていないのだと思います。

「空腹だと感じない→食べる必要を感じない→食べない」

ということだと思います。

 

高齢の方の中には

「満腹」という感覚を感じなくて、ひたすら食べてしまう方がいるでしょう?

その逆だと思っていただければ、わかりやすいと思います。

 

一昨年の8月に心臓の手術をしたあとに、しばらく病院に入院してたのですが、

その時に、身体拘束をされたことが母にとってトラウマになっています。

身体拘束以来、生きる気力そのものを失ったように見えました。

今の母の様子を見ていると、身体拘束の必要性そのものを感じないのですが、

それでも、病院に入院することで、

あの時の嫌な記憶を思い起こさせるのは、辛いです。

 

それから・・・

7年ほど前に、父が胃がんの手術の後3か月後に他界しています。

手術後、脳梗塞を併発し、

ベッドの上で動くことも、話をすることも、食べることもできずに過ごしたのも見てきました。

 

だから・・・

病院に入院して、延命措置をしていただくことが、

母にとって良いことのように思えないんです。

 

現状、「痛い」とか「辛い」思いをしていないのなら、

病院での延命措置はお断りしたいと思います。

 

今まで通りに、必要な介護をしていただきながら、

特養さんで看取っていただきたいです。

 

というお話をしてきました。

 

 

今後は、母の様子を見ながらしばらく点滴をつづけ・・・

(血管が出づらくなっていて、点滴の針を刺すのも大変というのが現状なので)

お医者様の判断で点滴を止める方向に・・・

その後は、特養で必要な介護をしつつ、穏やかな最期を迎えられるように。

最後の判定(死亡の診断)は、今日お会いした先生にしていただく。

 

ということになりました。

 

COCOさん・・・

 

何がベストかなんて、われわれ医者にもわかりません。

わたしは、こういうケースで大事なことは、

お母さまの「死」というものに、家族としてしっかり向き合って、

どんな最期を迎えさせたいかを、ちゃんと考えたかどうかだと思います。

 

「延命措置」をしないで、穏やかな最期を・・・

お嬢さんとご家族が、沢山悩んで、話し合って決めたことですよね?

だったら、それが正解だと思います。

 

と、お医者様がおっしゃっていました。

 

はじめてお目にかかりましたが、特養の嘱託医をなさっている方ですから、

今までもこういう場面にたくさん遭遇してきた方なのだろうと思います。

一言一言に、温かみと思いやりにあふれていて、

最後にこんなお医者様に出会えた母は、幸せだったと思いました。

 

「延命措置」を断るという「選択」・・・

 

母の余命をわたしが決めてしまったような心苦しい気持ちでいっぱいです。

 

でも・・・

たとえどんな「選択」をしたとしても、

残された者は、「これで良かった」なんて思うことはなくて、

「あそこで違う選択をしていたら・・・」

って、思いながら生きていくのかもしれません。

 

父の最期を、わたしがずっと後悔しているように・・・

 

帰宅してから旦那さんと話をしました。

 

診察室には、お母さんも一緒にいたんだよ。

ずっと目をつぶっていたけど・・・

延命措置を断ったの、聞いてたんだよね~たぶん。

冷たい娘だと思ったよね・・・

わたし(母)に、1分・1秒でも長く生きてほしいって思わないのか?って

思っただろうなぁ・・・

 

といったら・・・

 

そんなことはないと思うよ。

それでいいって・・・きっと言ってくれると思う。

 

と、旦那さんに言われました。

 

優しい人です。