数年前に亡くなった
大好きだった祖父がくれた
ダイヤモンドのネックレス。
ずっと愛用していたから、
チェーンが切れてしまって。
キラキラと繊細に輝く一粒ダイヤを
手のひらにのてせて眺めていたら、
祖父との様々な思い出が
脳裏によみがえり始めた。
祖父は、どこへでも飛んでいける
ペガサスのような人で、
新しいものに臆せず
リスクをかえりみず、
好奇心にいざなわれて
どこまでも行くような人だった。
色々な事業を手掛けて、
それなりに失敗もして、
最終的には政治家になった。
彼の講演は、
小学生だった私にも面白いもので
人を惹きつける魅力と
心をグッと掴む才能のある人だった。
おじいさんになっても、
「DREAM爺さん」なんて
自分のことを呼んでいる
遊び心溢れる人だった。
私がアメリカ人と結婚することにも、
大いにWelcomeで、
彼と初めて対面した時には、
一言目の挨拶をさらりと
英語でしてのけた。
唖然とする私。
そして、こころの中で呟く。
またしても、祖父に一本とられた。
彼のやり方は、いつも予想の枠を飛び越えていて、毎度一本とられるのだった。
私がまだ大学生だった頃、
当時、高校生だった妹が、
金属アレルギーに悩んでいた。
オシャレを楽しみたい年頃の女の子。
ネックレスをすると
蕁麻疹が出てしまうなんて!って
この世の終わりみたいに悲しんでいた。
けれど、検査をしてみると、
18金とか金の純度が高いアクセなら、
症状が出ないことを知った妹。
ねだるのが上手い妹は、
私を引き連れて、祖父のもとへ。
だって、高校生では、
なかなか18金のジュエリーに
手が伸びないじゃない?
そして、同情作戦で祖父に詰め寄る妹。
「おじいちゃん、私、金属アレルギーなの。」
「自分で買ったネックレスをしたら、
ボチボチがでちゃうんだよ?」
「でもね、18金のネックレスだったら、
大丈夫だって、
お医者さんが言っていたの。」
その時の、祖父の切り替えしを
今でも忘れることができない。
祖父は、高らかに笑って
こう言ったのです。
「いいじゃぁないか、お前。」
「お前は、本物しか似合わない女ってこった!」
唖然とする私。
またしても、祖父に一本取られた。
祖父の遊び心にかかると、
全てが表情を変えてしまう。
「金属アレルギーのかわいそうな少女」は、
祖父の一言により、突如として
「本物しか似合わない女」
に姿を変えた。
だから、いまだに何かあると、
「祖父だったら、どういうだろう?」
そう考える時がある。
遊び心をもって世界を眺めれば、
まったく違う景色が見えることを、
祖父が教えてくれたから。
きっと彼は天国でも、
持ち前の人を惹きつける魅力と
遊び心に溢れる物言いで、
沢山の人を沸かせているに違いない。