明るく楽しく過ごす。

不安なんか全然感じずに、ただ幸せに毎日を生きる。

いつもそう出来たら良いのに。



最近、ずっと胸の奥が暗い。

楽しいひと時を過ごしても、終わればすぐに黒に染まる。

大切だと思える人に会っている時ですら。



ずっと、迷路のような所をグルグル回っているような感覚。

暗い、暗い、闇の中の出口の見えない迷路。

道標も光も無くて、どこを歩いているのかも分からない。

そんな、原因の分からない不安が心を満たしている。



・・・いや、本当は。

原因は分かっているつもり。



多分、怖い。

遠くに行くのが。

離れ離れになるのが。

傍に居られなくなるのが。



それでも、自分に言い聞かせる。

大丈夫だよ、と。

だって、どうしようも無いのだから。

あたしが弱気になってどうするんだって。

自分に叱咤する。



大丈夫。

怖くなんかない。

今感じている恐怖は、ただの幻覚だ。

時が過ぎれば、きっと元に戻る。



強く、いないと。

まずいことをしたと、今更その愚かさに気づく。
どうにかなるだろうと、思っていたことが間違いなんだ。


街はどこまでも広い。
遠くの景色が見える。
そのおかげで、一人でいても、平気だ。


でも、建物内は違う。


どんなに広くても、壁がある。
見上げても、屋根がある。
どこに居ても拭えない圧迫感、空気の密度。


人がこんなに沢山居る。
他人がこんなにも。
あたしと何も関係無い人達が、数え切れない程。


最初は楽しんでいたのに。
段々しんどくなってきた。
回りを見渡すのが辛い。
でも、俯いているのも苦しい。


身体の真ん中が重くて、息がしにくくなる。
逃げ出したくなる。
でも、逃げる場所なんてどこにあるの?


そして、無性に怖くなる。
…気を抜いたら泣いてしまいそうだ。


早く時間が時間が過ぎれば良いのに。
例えばの話。
今突然、自分の心臓が止まったとしても。
果して、世界は何か変わるのだろうか。


あたしの存在なんてもんは、とても小さい。
世界の何億以上の人の命の中の一つ。
そのほとんどの人とは、顔を合わすこともせずに一生を終えるんだろう。


そして、顔を合わせた人の中でさえも。
人生に関わることは非常に少ないんだろう。


傷は癒える。
悲しみは忘れる。
苦しいのは一時で、ずっとは続かない。
そうやって、人は上手く出来ている。


あたしもそうやって出来ている。
じゃあ、逆の立場になったら…?


世界は変わらない。
ただ、誰かの傍からあたしが消えるだけ。
日本の人口が一人減るだけ。
世界は相変わらず忙しなく過ぎる。


存在がいなくなって。
悲しみを忘れて。
そのうち居たことを忘れて。
忘れたことも、忘れる。


みんなの中から、一つ、また一つと。
消えていく。
あたしが消えていく。


そのうち全部が消えてしまって。
あたしの持つ悲しみも無くなってしまうんだ。


いつか、最期の時に。
『あたしを忘れて、あなたは強く生きて。』

なんて。

そんな綺麗な言葉は、あたしはきっと言えないんだろう。


あたしが居なくならない場所は、どこにあるんだろう。