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◆「大家さんと僕」と僕/矢部太郎 ほか

 手塚治虫文化賞も受賞したマンガ「大家さんと僕」の続編的内容。芸人コンビ・カラテカの中でも幅広い人脈をアピールしていた相方・入江の「自滅」に対して、その人柄ともども一躍評価を上げた矢部(細い方)ですが、これは著者に「他」とついている通り、金になると見た周りの人たちに持ち上げられて出したのが見るからにわかる感じ。映画で言えばラストに特典でついてくるメイキングみたいなもので、これを一つの本として出版するのはある意味アコギな商売。続編が出ているようなのでその付属で載せればいい内容では?と思いました。彼が主導で企画したものではないと思うし、変な先入観がつかなければいいんですけどね。 

 

◆いいことだけ考える 市原悦子のことば/沢部ひとみ

 自分くらいの世代からすると「日本昔ばなし」の訥々とした語りと「家政婦は見た」の下世話な役を上品に見せる演技の印象が強い女優ですかね。そんな彼女を取材を機に20年近く見続けてきたライターによる、知られざる素顔や珠玉の「ことば」を紹介している本。同じく亡くなった樹木希林関連本はブームに乗っかったでしょ的なものも散見されたけど長年の付き合いによる裏付けが著者のフィルターを通して言葉にされているところに好感を持てました。自身が破滅しない程度の逆境や不遇って、女優業をやっていくうえでの強い信念に繋がるのかなと思ったり、今活躍している若手女優で没後にこれほどのエピソードを残せる人ってどれくらいいるのかなと考えさせられました。