―ジオングからサザビーへ、その間に存在した“もう一つの未来”―
■ グフの「指マシンガン」問題から始まる系譜
『機動戦士ガンダム』で登場したグフ(MS-07B)は、指先からマシンガンを撃つという大胆なギミックを持っていた。
しかしこれは、ザクIIが築いてきた「実弾兵装の説得力」を一気にスーパーロボット的方向へ逆行させてしまったとも評される。
後年、カトキハジメが手掛けたグフ・カスタム(1996年)は、この“指マシンガン問題”を修正。バルカン砲へと収束させ、実在感ある兵装で「リアルロボット補正」を施した。
■ ジオングの「指ビーム」の継承
グフの“やっちゃった感”とは異なり、ジオング(MSN-02)の指ビームは「全身を武器化したニュータイプMS」というコンセプトの中で昇華された。
そしてその発想は、ネオ・ジオンのゲーマルク(AMX-015)に再び姿を現す。
ゲーマルクは指メガ粒子砲を装備し、まさに「ジオング的ギミック」を受け継いだ存在だった。
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0079 |
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MS-06S |
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ザクⅡ(シャア専用) |
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0079 |
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MSM-07S |
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ズゴック(シャア専用) |
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0079 |
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MS-14S |
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ゲルググ(シャア専用) |
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0079 |
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MSN-02 |
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ジオング |
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0087 |
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RMS-099 |
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リック・ディアス |
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0087 |
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MSN-100 |
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百式 |
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0088 |
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AMX-015 |
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ゲーマルク |
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0093 |
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MSN-04 |
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サザビー
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■ ジ・Oとの対比
ティターンズのシロッコが搭乗した「ジ・O」は、ニュータイプを必要としない重武装・近接格闘特化の権威的MS。
対してゲーマルクは、サイコミュとファンネルを駆使した“ニュータイプの象徴”ともいえる設計。
「オールドタイプ権力の極点=ジ・O」
「ニュータイプ権威の極点=ゲーマルク」
両者は、思想的にも機体コンセプト的にも明確な対比をなしていた。
■ ゲーマルク=シャア専用機?
『GQuuuuuuX』(2025年)第12話の「シャア専用機烈伝」からも着想されるが、実はゲーマルクこそハマーンが「シャア専用」として用意した機体だったのではないか、という解釈が成り立つ。
- ジオングからの思想的継承(指ビーム)。
- ジ・Oとの対抗馬。
- ネオ・ジオンの旗印にふさわしい巨体と火力。
これらを踏まえると、「キャラ・スーン搭乗」は便宜的なもので、本来はシャアが座すべき玉座だったとも言える。
■ しかし当時のシャア=「クワトロ」だった
とはいえ、Ζガンダム当時のシャアは「クワトロ・バジーナ」として己を規定し、象徴になることを拒んでいた。
ハマーンが“アルテイシアの幻影(髪型の真似)”を演出しても響かず、アクシズの象徴機=ゲーマルクを授けられる未来はそもそも成立しなかった。
■ サザビーとの分岐点
最終的にシャアが選んだのは、アクシズ系譜ではなく自らの思想を体現した「サザビー」だった。
ゲーマルクは「ハマーンが与えるシャア専用機」という“別枠の未来”。
言い換えれば、ゲーマルクは「もしクワトロがシャア(キャスバル)に戻るのを早く受け入れていたら」の象徴機体でもある。
■ まとめ
- グフ → ジオング → ゲーマルク → サザビー
- この流れの中で、ゲーマルクは「もう一つのシャア専用機」として位置づけられる。
- しかし、クワトロである当時のシャアはそれを受け入れられなかった。
つまりゲーマルクは「存在し得なかったシャアの未来」を示す幻の機体だったのである。
