―サザビーやシナンジュの「赤」は、シャアのものではなくジョニーの赤である?―
「赤いモビルスーツ=シャア・アズナブル」という印象は根強い。だが、その“赤”とは何色か? 多くのファンが記憶しているシャア専用ザクII(MS-06S)は朱色、あるいはピンクに近い配色である。
一方、MSV企画で登場したジョニー・ライデン少佐の搭乗機「高機動型ザクII後期型(MS-06R-2)」は、赤と黒の強烈なコントラストで構成された“真紅の稲妻”。この配色こそが、サザビー(MSN-04)やシナンジュ(MSN-06S)に継承されていく“赤い機体”の原点ではないか──そんな視点が近年再注目されている。
■「シャアの赤」はピンク、「ジョニーの赤」は深紅
- TV版『機動戦士ガンダム』(1979年)におけるシャア専用ザクは、ピンク寄りの彩色。これはガンキャノン(RX-77-2)との差別化のため、朱色系で仕上げられていた。
- 対してMSV企画で誕生したジョニー・ライデン機(MS-06R-2)は、黒と真紅(ディープレッド)の大胆なツートーンで描かれた。
- この「赤と黒」のビジュアルは、サザビーやシナンジュ、さらに『THE ORIGIN』版のシャア専用旧ザク(MS-05S)にまで明確に反映されていく。
■“斧”と“真紅”──スーパーロボットからの系譜
ジョニー機に標準装備されていたヒートホーク(斧)は、ロボットアニメにおける「斧=豪快な武器」という文化的象徴を内包している。
- ゲッターロボ(1974年)の「ゲッタートマホーク」は、斧武器を用いるロボットの代表格。
- グレートマジンガーが剣、マジンガーZが内蔵火器を武装としたのに対し、斧を担ったのがゲッター1。
- モデラーの草刈健一氏が『コミックボンボン』にてジョニー機作例を発表した際、「下田一(=“ゲッター1”)」の名義を使用していたという逸話は、まさに象徴的だ。
つまり、ジョニー・ライデン機とは、「斧を持ち、真紅に染まったロボット=ゲッター的イメージ」のリアルロボット的昇華体ともいえる。
■敗れた高性能機、だがその思想は生きた
MS-06R-2は、次期主力宇宙用MS選定競争においてリック・ドムに敗北し、わずか4機のみが製造された。その中の1機がジョニー・ライデン少佐に与えられ、戦時広報では「シャアの新型機」と誤認されたまま放置されたという。
「ザクの皮を被ったゲルググ」と称されるその性能は、ザク系の常識を越えていた。
また、この機体の開発背景には、MS-11の計画中止や、MS-06R-2P(ビーム兵器搭載前提のプロトタイプ)といった影の歴史も存在し、その試行錯誤の蓄積がのちのサザビーやシナンジュといった新型機に受け継がれていく。
■そしてシナンジュへ──「真紅」のデザインは受け継がれた
- サザビー(MSN-04/1988年)
→ ジョニー機と同様の深紅と黒のボディ。まさに「真紅のカリスマ」へと進化。 - シナンジュ(MSN-06S/2010年)
→ 赤黒に加え、金の装飾。ビームアックスを連想させる武装で“斧”の記号性も復活。
この2機は「シャアの機体」とされているが、そのビジュアルデザインのルーツを辿れば、MSV時代のジョニー機に至るのは明白だ。
■まとめ:「真紅」と「斧」は、ただの色と武装ではない
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項目 |
内容 |
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真紅のルーツ |
MSVのジョニー・ライデン機(MS-06R-2) |
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シャアの赤 |
ピンク~朱色が主流(TV版) |
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斧の象徴性 |
ゲッター1由来、リアルロボット世界への応用(ヒートホーク) |
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デザイン継承機 |
サザビー、シナンジュ、オリジン版旧ザクMS-05S |
ジョニー・ライデンが駆った深紅の機体は、時代と作品を超えて“赤の象徴”と“豪胆な武装”という記号をガンダム世界に刻み込んだ。
サザビーも、シナンジュも、そして“斧を振るうガンダム”すら、遠くMS-06R-2の影響から逃れられないのである。
