本日の担当は、中小企業診断士×プロコーチの森琢也です。
プロのコーチでも、日常での「問い」は難しい
コーチングを提供したり、コーチングに関する研修を行っている私ですが、告白します。
「問い」の実践は、理屈でわかっていても本当に難しい。特に、感情が動く場面ではつい「指示」を出したり、「答え」を教えたくなってしまいます。
特に私の場合、子育ての場面ではなかなかコーチングを実践しきれずに、未熟さを思い知ります。ボランティアコーチを務める小3の息子のサッカーチームでも、毎回そんな自分に猛省しています。
ただ、本当に偶然ですが、先日あらためて「問いの威力」を目の当たりにする出来事がありました。
コーチの「落ち着け!」が届かない、ゴールキーパーのハツシ君
小3息子のサッカーチームは、様々なポジションを経験することを重視し、毎回ゴールキーパーは違う子が担当します。その日、ゴールキーパーを務めたのはハツシ君。最近落ち着いて状況判断ができるようになり、ドリブルで相手を抜けるようになってきた子です。
相手チームは、ほぼ互角かやや格上。試合開始からやや押し込まれる展開。ピンチが続くも、みんなでディフェンスして、ハツシ君がボールをキャッチ。ホッと一息かと思いきや、ハツシ君は慌ててボールを投げてしまい、相手にカットされてまた攻撃を受ける。なんとか相手のシュートを止めて、ボールをキャッチするも、またすぐに慌ててボールを投げては相手に取られて、防戦一方の悪循環。
周りのコーチ(大人)たちは必死に叫びます。
「ハツシ、落ち着け!」「慌てるな!」「周りを見ろ!」
しかし、ハツシくんにその言葉は届きません。指示されればされるほど、彼はさらに急いでボールを投げてしまい、、もはや失点も時間の問題といった状況でした。
指示を「問い」に変えた瞬間
ハツシ君が守るゴールの近くにいた私はふと、彼にこう声をかけました。 「ハツシ君、どうしたら君からチャンスを作れると思う?」
「落ち着け!」「慌てるな!」「周りを見ろ!」といった指示ではリアクションがなかったハツシ君が一瞬頷いたように見えました。後から振り返ると、彼の「思考のスイッチ」を入った瞬間だったのかもしれません。 そのあとすぐ、不思議なことが起きました。
それまで焦ってボールを投げてしまっていたハツシ君が、相手の猛攻をしのぎ、ボールをキャッチした後、ひと呼吸をおいたのです。そして、 顔を上げ、左右を見渡し、空いているスペースと味方を見つける。 彼が丁寧に投げたパスは、フリーの味方に繋がり、そこから3本のパスを経て、防戦一方だったチームがなんと劇的なカウンターゴールを決めました。
なぜ「問い」が人を動かすのか
「ああしろ、こうしろ」という指示は、相手の脳を「受動モード」にします。対して「どうすればいいと思う?」という問いは、脳を「能動モード(自分事)」に切り替えます。
ハツシ君は、私の指示に従ってフリーの味方にパスを投げたのではありません。 「自分を起点にチャンスを作るには?」という問いに向き合い、その答えを、自分自身でフィールドの中に発見したのです。
これはビジネスの現場でも全く同じです。 上司が「もっと主体性を持て」と100回言うよりも、部下が自ら答えを見つけざるを得ない「良質な問い」を投げかけること。これこそがリーダーの役割だと痛感しました。
「問い」を可視化する技術
この「問いの力」を、組織やチームで再現可能な形にしたのが、私が提供しているコーチングやレゴ®シリアスプレイ®です。
研修中、私は参加者に「正解」を教えることはありません。
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「あなたの思う理想のチームとは?」
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「その課題の根源にあるものは何?」
こうした抽象的で本質的な問い(発問)に対し、参加者はレゴブロックを使って、無意識の中にある「自分の答え」を形にしていきます。 言葉だけでは難しい「内省」を、ブロックを介して行うことで、ハツシ君がフィールドを俯瞰した時のように、ビジネスの課題を客観的に捉え直すことができるのです。
日常の中に「問い」を。
サッカーのピッチでも、会社の会議室でも、ついつい「答え」を言いたくなる誘惑は強敵です。 でも、相手の可能性を本当に信じるなら、ぐっと堪えて「問い」を投げてみる。
その一言が、チームに劇的なカウンター(変化)をもたらすかもしれません。
以上、
中小企業診断士×コーチの森琢也でした!
