ロサンゼルスで、迷子になったときのことを書く。
カナダ〜アメリカ②から少し話が飛んでしまうが、おおめにみてほしい。
カナダを後にした私はロサンゼルス空港にいた。旅の終盤である。
空港に着いたのは午後だったと記憶している。夕方になる直前くらいだった。なぜか私は空港でのんびりし始めた。おそらく2時間くらい過ごした。どうやって時間をつぶしたのか覚えていない。誰かにメッセージでも打とうとしていたのか、Facebookを更新しようとしていたのか分からないが、どうやって2時間ほども空港にいたのか思い出せない。
空港からホテルまでは距離があった。ホテルは旅の途中に予約したもので、空港からは電車で何駅か行ったところの近くにある、空港にいたときはそのくらいの認識だった。
「空港からホテルまではドア to ドアで1時間もかからないだろう」そう思って余裕だった。やがて、日が暮れ始めた。「そろそろ向かうか」空港を出発し、最寄りの駅から電車に乗った。このあたりの記憶は鮮明だ。よく覚えている。
電車が来た。乗り込む。
少し驚いた。車両にはざっと20人〜30人くらいが乗っている。日本でも見慣れた程度の混み具合だ。満員電車と比べればスカスカだが、それなりに人は乗っていて、混んでいないとは言えない。
何に驚いたかというと、私以外が全員黒人だったということだ。日本人がキャスター付きの大きい荷物を転がしながら一人で乗車している。かなり目立つ。
別に、空港の最寄りなのだから、旅行者を含めて色々な人種が乗っていても不思議ではない。というか、黒人だけのほうが珍しいような気がする。とにかく、私だけが日本人だった。
何分くらい乗ったのだろう。そんなに長い時間乗ったわけではないと思う。それでも、外を見るといつの間にか真っ暗だ。完全に夜だ。
目的の駅に着いた。私以外にも乗客が降りる。少ししてから分かった。降りたのは無人駅だった。
少し怖くなった。辺りは真っ暗。私は旅行カバン。同じ車両の黒人たちも何人か降りている。駅員はいない。
私の方向感覚では北側の出口から駅を出て、ホテルがあるであろう方向に向かって、通り沿いを歩き出した。この時点でiPadを持っているが、オフラインなので自分がどこにいるかは分からない。(当然携帯電話は使えない。レンタルのWi-Fiといった類のものは用意しないまま日本を発った。そのことで別の都市でトラブルに遭ったが、それについては後日まとめたい)。
iPadには、ホテルの住所とおおまかな地図だけがオフラインで表示できる。それを頼りに、自分の勘で歩き始めた。
それにしても暗い。先ほど駅では何人か降りているはずなのに、周りには誰もいない。皆目指す方向が別だったのだろうか。誰もいない。大通り沿いの歩道を歩いているが、車も通らない。ここはロサンゼルスだが、どんな場所なのか。
10分歩いた。景色はさほど変わらない。同じような道を同じように歩いている。車も歩行者も見当たらない。
20分歩いた。同じだ。
30分。怖くなってきた。旅行カバンを引きずる日本人が夜道に一人。何かされてもおかしくないし、そうなっても助けがくるかも分からない、というかたぶんこない。
おかしい。道は合っているはずで、予測ではもう着いていてもおかしくない。空港を出てから軽く1時間は経過しているだろう。
空港で時間をつぶした自分をアホだと腹立たしくなってきた。また、それ以上に後悔し始めた。もう少し早く出ていて、せめて陽があるうちに今みたいになっていたら・・・
もう真っ暗だ。変な汗もかいている。特に何も起きていないが、一人焦っている。ひたすら歩く。景色は変わらない。
たまにどこからか何かの音が聞こえる。どこかで車が走っているのか、なんなのかよく分からない。
まだつかない。俺はどうなるんだろう。引き返すわけにもいかない。
やばい。
混乱しているうちに遠くに店の明かりのようなものが見えた。たぶん店だ。ホテルではないが、誰かしらいるだろう。
良かった。とりあえず安心できそうだ。店に入って道を教えてもらおう。
明かりが近くなってきた。
なんだか馴染みがある店だ。あれ、この店は・・・
驚いた。「吉野家ロサンゼルス店」である。
店に飛び込んだ。客はいないが、店員はいる。
「このホテルを探している。ずっと歩いているがまったく見当たらない。」
店員は慌てる私とは対照的に表情ひとつ変えない。
「あぁ、このホテルか。そこだよ。」
指差すと交差点があり、曲がって10mくらいらしい。確かに頼りにしてきた地図とこの店の付近は似ている。歩いて2〜3分で着くだろう。
全身の力が抜けた。ほっとした。なんとか無事に着きそうだ。良かった。
この1時間くらいで味わった感情は空港を出るころには想像していなかった。これは私の甘いところ。もう少し計画的に。海外では命取りになる。
知らなかった、予想と違った。それで良い場合もあるが今回のはダメだ。旅の終盤で思い知った。何も起きなかったのに、とても印象深い思い出の一つだ。
安堵して注文し、食べた牛丼は薄味だけど美味かった。
