「フハハハ…フハハハハッ!ハーッハッハッハ!!!どうだね!?綺麗な花火だろう!?」
下卑た笑い声が木霊する。
黄ばんだ白衣にボサボサ頭。
無精ヒゲに銜え煙草。
その男…芦田雄介は笑っていた。
燃え盛るHeven's Doorの前で――笑っていた。
「マスター。何者かが超高速で敷浪センタービルから飛行してきます」
紺城サユリがモバイルデバイスを見ながら言う。
「反応が2つの為…イーグルでは無いと思われます」
デバイスから芦田に目を向ける
「いいじゃないか。これでやっと…やっと全部が揃う」
ニタァ――と口の端を持ち上げ、芦田は笑みを浮かべる。
「芦田ァァァっ!!!」
遥か上空から、白い戦士と黒い戦士が急降下してきた。
「待っていたよ――落合君」
第9話 【 決 戦 】
地下室は蒸し風呂状態だった。
手負いの3人を地下室に非難させ、これからの対策を練ろうとした時…
大爆発が起きた。
≪無垢なる皇女≫の粉塵爆発なんて比べ物にならない程の大爆発。
建物一つが消し飛ぶ程の大爆発。
幸いと言うか、不幸と言うか、地上には誰も居なく、爆発による怪我人は誰も居なかった。
「ぬおぉぉぉぉわぁぁぁぁぁっ!!」
扉をこじ開けようにも、無傷なのは非戦闘系の3人と美園くらいである。
絶体絶命の大ピンチに秋華はディスプレイに向かっている。
「なんか方法…なんか方法…なんか方法…」
ブツブツとメトロノームの様に同じ言葉を繰り返している。
「小型爆弾で扉だけ吹き飛ばす?でも上に敵がいたら?…そうだ!」
秋華はバッと顔を上げる。
淳が持ってきた重火器の中にロケットランチャーがあったはずだからそれを改造すれば…と思いついた。
「ロケットランチャーの改造なんてしても…無理だと思います。恐らく、扉の前と上に瓦礫が乗っているのでしょう…」
冷静に、恵一がアドバイスをする。
「それより…通信で夕馬さんに助けを求めるのが一番いいんじゃない?」
香も秋華に申し開く。
「…だけど!」
その時爆発音と共に、地下室に光が差し込んだ。
「大丈夫か!?」
其処に居たのは黒い装甲の戦士…レイヴンだった。
2人がHeven's Doorに到着した直後。
「待っていたよ――落合君」
ニタァと蛇の様な微笑で夕馬を見る芦田。
「芦田…貴様ァッ!」
殴りかかろうとする夕馬に向かい、芦田が燃えるHeven's Doorに目をやる。
「いいのかい?――君の大切な仲間達は今頃、地下室で木乃伊になるのを待っているが?」
ピタっと動きを止めるレイヴン。
「救出するならすればいいさ。…私の目的は君達の抹殺ではない。真逆だからねぇ――」
再び蛇の様な微笑を浮かべる芦田。
「落合!さっさと助けて来い!変な動きしたら――俺が撃ち殺す」
自動小銃を芦田に構え、イグレットが言った。
「ほほぉ…その声はNo.19か?…まさか適応するとはねぇ。…愛の力は偉大だな」
カハハハと笑う芦田。
「動くな。1ミリたりとも動くな、息をするな、笑うな、俺と目を合わせるな…」
静かな声で言うイグレット。
「俺はトリガーを引きたくてウズウズしてるんだ…」
カチャ――と銃口を芦田の頭に向ける。
「ハハハ…これはこれは…」
顔はニヤニヤしたまま両手を上げる。
その間にレイヴンは地下室の入り口の瓦礫を吹き飛ばし、扉を開いた。
「大丈夫か!?」
エネルギーの消費を抑える為にヤタと分離をし、通常体のレイヴンになる。
「夕馬!!」
飛び出してきたのは、秋華ではなく美園だった。
美園が飛び出し、秋華が続いて出てくる。
全員地上に出て来た所で芦田が口を開いた。
「さぁ…これで役者は全員揃ったな」
ニィっと笑う。
「これより君達には私の仲間になって貰おうか。…いや、戻ってもらおうかと言うのが正しいかな――?」
両手を降ろし、秋華の方を向く。
「なぁ…鈴峰秋華。いや…【超頭脳実験被検体“第4号”】と言った方がいいかな?」
超頭脳実験と言う言葉に秋華の体がビクッと硬直した。
「第…“4号”…?」
ガタガタと体が震えている。
「アキちゃん!」
美園が駆け寄り、秋華の肩を抱く。
「ふむ…ならば、こう言おうか…“さぁおいで、我が娘”」
ニィと笑い芦田が嘯く。
「うぅ…」
秋華が頭を抱え、美園の手を振り解き、その場にしゃがみ込む。
「うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」
カッと目を見開き、天に向かい絶叫をする秋華。
「イヤだ!イヤだ!イヤダ!イヤダ!イヤダ!イヤダ!イヤダ!イヤダ!」
しゃがみ込んだまま発狂する秋華。
「アキちゃん!?どうしたの!?ねぇ!!アキちゃん!!」
美園が抱き締める。
「イヤ…ダ…記憶なんていらない!!イヤァァァァァァァァァァ!!」
ガクン――と、力が抜ける。
「アキちゃん…?」
顔を上げた秋華は、虚ろな…生気の無い目をしていた。
その姿はまるで改造されたばかりの夕馬の様だった。
「ドクター。オハヨウゴザイマス」
感情が全て失われた様な無機質な声で秋華がそう言った。
「アキちゃん…?」
抱き締めていた美園を振り払い、秋華は芦田の方に歩いていく。
「芦田!!貴様ッ!!秋華に何をした!!」
芦田に向き怒声を浴びせるレイヴン。
「何をした?フフフ…“元に戻した”だけだが」
懐から煙草を取り出し咥えると、サユリが火をつけた。
フゥ――と煙を吐き出し――
「何か勘違いしていないかね?彼女は元々私が作った改造人間≪モノ≫だ。持ち主の元に戻ってくるのは当たり前…だろう?」
ニタァと笑う。
「モノ…だと…?」
怒りに身を震わせるレイヴン。
「秋華は…無茶苦茶で、天真爛漫で、スッゲー馬鹿で、誰よりも明るく、コロコロと表情を変える。…そんな女の子だったんだぞ!」
レイヴンのカメラアイが怒りに呼応するかの様に赤く…緋く光る。
「そんな子を…貴様ァ!」
芦田に飛び掛るレイヴン。
だが――
芦田の前に秋華が立ちはだかった。
「秋華!?」
ピタリと寸前で拳を止める。
「落合夕馬…ドクター ニ 触レルナ」
生気の無い…抑揚の無い声で、レイヴンに向かって言う秋華。
「違う…だろ?…違うだろ!?アイ君だろ!?何言ってんだよ秋華!目ェ覚ませよ!!」
変身を解除し、秋華の肩を持ち揺する。
「何 ヲ 言ッテイル? 貴様 ハ 落合夕馬 ダロウ?」
虚ろな目…
生気の無い顔…
抑揚の無い口調…
全てが、夕馬の知る秋華では無かった。
「芦田…。元に戻せ…。今すぐにだ…元の秋華に戻せェェェェ!!!!」
背後ではイグレットの変身を解除した海人が銃を構えている。
「俺もこんな姿のこの子は見たくない。戻すんだ。今すぐに」
静かな怒りを込めて銃口を向ける。
「ぐっ…と、目が覚めたらとんでもない事態じゃないか。…秋華がそんな喋り方するのは似合わないねぇ」
満身創痍の碧羽も立ち上がり構える。
「…」
煙草を銜え、無言で銃を構える淳。表情だけで怒っている事が分かる。
「秋華ちゃん…正気に戻って!お願い!いつもの調子に戻ってよ!」
香は涙をポロポロと流しながら立ち上がった。
「その子は…貴様の娘ではない…。うちの大事な次女だ。開放しろ」
修也も立ち上がり、構える。
「その子が…その子が例え何であろうと…貴方に渡すわけにはいかない」
スッと雨音も立ち上がる。
「フフフ…フハハハハ!ハァーッハッハッハッハ!!」
その様子を見て、芦田が高笑いをする。
「いいねぇ…美しい!友情ゴッコか!フハハハハ!!!実に…」
ピタっと笑いを止め全員を見る。
「くだらない。なぁ…そう思わないか?恵一」
芦田が恵一に目をやる。
全員が恵一の方を見る。
「全くですね。くだらない。実にくだらない」
ふぅ――とため息をついて、恵一が芦田の方に向かっていった。
「どういう事だ!?恵一、お前…裏切ったのか!?」
夕馬が恵一を睨み付ける。
「裏切ったもなにも…元々僕はあちら側ですよ。夕馬さん」
ポン――と肩を叩き、芦田に向かう。
「――と、言うわけだ。残念だったね諸君」
ニヤついた顔で芦田が言う
「ご苦労だった…例のデータは集まったかね?」
恵一が懐から1枚のCDを取り出す。
「こちらに…これで“レイヴンの戦闘データは全て”です」
全員に戦慄が走る。
レイヴンの戦闘データが敵に渡ると言う事は明らかにこちら側が不利になる。
「恵一ッ!」
夕馬が叫ぶと同時に恵一が懐から拳銃を取り出し芦田に向ける。
「渡すわけにはいきませんけどね」
引き金を引く。
―パァン
乾いた音が響いた。
恵一の銃が火を吹いた。
だが――
倒れたのはサユリであった。
「くそ!」
恵一が舌打ちをする。
「ほぅ?…裏切るのか…面白い」
サユリと言う助手が撃たれたと言うのに平然としている芦田。
―パァン
再び銃声がする。
「ドクター、ご無事で…?」
撃ったのはサユリであった。
そして、撃たれたのは――
「ぐおっ…」
恵一だった。
2発の銃声。
倒れる恵一。
その瞬簡に碧羽が、夕馬が、淳が、海人が、それぞれ芦田に向かって飛び掛った。
「貴様ァァァァァァァ!!!!!」
だが、寸での所で上空から矢が降ってきた。
「なにッ!?」
上空からふわりと白銀の装甲兵が降りてきた。
「ご苦労だ。ルフ」
白銀の装甲兵に向かい芦田が労いの言葉を掛ける。
「アキ…正気に…戻りなさ…い…」
息も絶え絶えな恵一が秋華に近寄る。
「君は…優しい子だ。君のいるべき場所は…芦田の元じゃない…修也さんや…夕馬さんの元だよ…」
恵一はごふっと血を吐き出す。
「わかる…ね…?君の居場所は…おいしいココアのある…優しい母がいる…Heven's Doorなんだよ…」
無表情で見下ろしていた秋華に変化が見え始める。
苦しそうな表情を浮かべている。
「け…い…さ…ん…?」
そっと秋華の頬に触れる恵一。
「そうだ。君は…あんなに喜んでた…じゃ…ないか。家族が…できた…って…さぁ…」
「ルフ、あの目障りな小虫を片付けろ」
ルフと呼ばれた白銀の装甲兵に芦田が言った。
「イエス」
ルフが左手を恵一に向けると、手首から矢が射出された
―キュンと、鋭い音がすると、恵一の右腕が吹き飛んだ。
「恵一!!!!」
ルフに向かって自動小銃を撃つ海人。
同じく大型拳銃を撃つ淳。
だが、どちらの弾丸も“まるで意思があるかのようにルフを避けた”
「――!?」
「な…アレは…」
修也は絶句した。
右腕が吹き飛び、絶命しかけている恵一に秋華がフラフラと歩み寄る。
「ケイ…さん…?ケイさん!!!!!!」
涙をボロボロと流しながら恵一に駆け寄る。
「ケイさん!何で!?何でよ!!ケイさん!!」
右腕が無くなった恵一を抱き上げ、ボロボロと涙を流す。
「そう…それが…君の…本当の君だよ…」
血液が足りないのだろう。顔色が真っ青である。
「うん。うん!わかってるよ…わかったよ!だから…だから…だから…」
子供のように泣く秋華。
「だから――死なないで!ケイさん!!」
その様子を見てヘタッと腰を抜かす香。
「嘘…ですよね…死ぬとか…嘘ですよね…」
ごふっと再び血を吐く恵一。
「最後に――僕達を駒の様に扱う…あの男に一矢報いたかったけど…」
すっと目を閉じる恵一
「やっぱり…ダメ…か」
その言葉を最期に――恵一の心臓は止まった。
「ケイさん…?ダメだよ…寝たらダメだよ…ケイさん!?ケイさん!!!」
美園と香が恵一と秋華を引き離す。
「アキちゃん!落ち着いて!アキちゃん!!」
「秋華ちゃん!落ち着いて!!」
必死で引き離す二人。
何故ならば、芦田が向かってきているのが見えたからである。
「ふん…駒に感情を持たせるとこうなる…いい結果を知らせてくれたよ。小虫にしてはいい働きだ」
息絶えた――恵一の死体を踏みつけ、芦田は唾を吐く。
「キサマァァァァァァァァ!!!」
その行動を見た碧羽が激昂し、殴り付けようと駆け出した。
だが、先程まで淳と海人を相手にしていたルフが立ちはだかった。
「姉ちゃん!頭下げろ!!」
後から夕馬の声がする。
碧羽が頭を下げると碧羽の背中を転がり、遠心力をつけた浴びせ蹴りがルフの顔面にヒットした。
「マスターには指一本たりとも触らせない」
避けようとも、掴もうともせずに顔面で夕馬の蹴りをうけ、ルフは嘯いた。
「まぁ――落ち着きたまえ…落合夕馬。落合碧羽…いや…」
ふぅ――と煙草の煙を吐き出す芦田。
「“紅花”夕馬、“紅花”碧羽。と呼ぼうか?」
ニタァと笑う芦田。
「な…なに…?」
「紅花…だと!?」
その名前に反応したのは――修也と淳だった。
紅花…
この名は二人にとって因縁の深い名である。
かつての宿敵――
防衛省 特殊人災処理局々長『紅花 國靖』
通称≪神を殴った者(ゴッドハンド)≫
その通称の通り――神を殴った男である。
異能力者でありながら――非異能力者。
非異能力者でありながら――異能力者。
世界の為に特異点を殺そうとした男。
最強で最凶で最悪な宿敵――。
宿敵とは言え、憎んでいたわけでは無い。
宿敵とは言え、恨んでいたわけでは無い。
その宿敵の子供が…目の前にいる。
その事実に――芳田修也と設楽淳はただ純粋に驚いた。
「そもそも――不思議に思っていたのだよ、私は――」
困惑している全員に目もくれず、芦田は語りだした。
「何故…あのナノマシンが適応したのか?何故…これほどまで力を引き出しているのか?」
煙草を銜え、ボリボリと頭を掻いている。
「気になった私は――君の血液を調べてた。いやいや驚いたよ。なんと君はあの≪神を殴った者(ゴッドハンド)≫と同一の遺伝子情報を持っている」
バッと両手を広げ天を仰ぐ。
「それもそのはずだ!君の父上は世界で一番偉大な男なのだからなぁ!」
ハハハハハッと軽く笑う
「失礼だが君の母上の経歴を調べさせて貰った。27年前に紅花氏と夫婦になっているではないか!そしてその1年後に第一子、碧羽嬢を産んでいる」
碧羽を見る芦田。
「そして3年後に――第二子である夕馬君!君を産んでいる」
当たり前の事を大げさに、まるで舞台上に居るかのように話す。
「その後は君達のよく知る通り――父上はその男に殺されている!」
大仰な手振りで修也を指差す。
「君達は皮肉にも、父の仇と共に暮らし、笑いあっていたのだよ!」
ぐっ――と言葉を詰まらせる修也。
「だから?」
「それがどうした…」
夕馬と碧羽は同時に口を開く。
「親父がどうとか――」
「修也さんがどうとか――」
「「そんなもんはとっくにケリがついてる事だろうが!!」」
芦田を睨む二人。
「大の男がグチグチグチグチと…全くみっともないねぇ」
碧羽はいつでも攻撃できるように構える。
「親父と修也さんがどうだったとかしらねぇなぁ…」
―realization
「俺にとっては修也さんの方がよっぽど親父だ!変身!!」
-transformation
「こい!ヤタ!!」
ベルトを押し込む。
―Standing by―
「テメェの腐った根性…叩き直してやるッ!」
―Union Complet―
夕馬はレイヴンヤタに変身した。
それは、もう聴く耳を持たない。と言う意味であった。
「フン…まぁ、いい。力づくにでも協力させてやろう…ルフ!」
「イエス」
一瞬で芦田とレイヴンの間に入るルフ。
(この声――どこかで――)夕馬の脳裏に疑問が過ぎる。
ニィっと笑う芦田。
「聞き覚えある声だとは思わないかね――?彼の正体を知りたいか?」
ニヤニヤとにやけ続けている。
「ルフ、見せてやれ」
芦田が言うと、ルフは仮面を外した。
「――!!」
仮面を外したその素顔は――芳田修也であった。
「クッ――やはりか…!」
修也が銃を構える。
「“私に銃弾は効かない”――貴方が一番分かっているでしょう?」
修也の声で修也に話しかける。
「どういう事だ…」
再び困惑するレイヴン。
「なぁに――簡単なことさ。そこに居るのは…最強の異能。≪世界の敵≫を備えた…芳田修也のクローンさ」
高笑いをする芦田。
「さらに絶望をプレゼントしようか…」
懐から何かの装置を取り出す。
「これを見たら諸君も戦う意思など――失せるさ」
――ピィィィと装置から警告音がなる。
すると、敷浪センタービルの方角から爆発音と共に何かが――金色に輝く何かが飛んできた。
その金色の何かはビルを切り裂き、電柱をまるでバターの様に切り裂き、一直線にHeven's Doorに向かってきた。
―ドォン。と派手な音を立て、金色の戦士は芦田の近くに着地した。
白銀の装甲兵――ルフは西洋の甲冑の様に美しく羽根が生えているのに対し
金色の装甲兵は――レイヴンとよく似た姿をしていた。
違うのは――金色に輝く装甲と、両肩から生えた鞭のような物、そして猛禽類の爪が両手にある事くらいだった。
「改めて紹介しよう…第四世代型“人造人間”Type-φ…フューニクスだ」
すぅ――と、ゆっくり立ち上がるフューニクス。
「よう…初めましてだな。息子」
フューニクスが嘯き、仮面を外す。
仮面の下の素顔は――夕馬によく似ていた。
「――!バカなッ!そんなバカな!!」
修也が驚き、後ずさる。
「フハハハハハ!!!絶望しろ!!そうだ!君の予想は合っているぞ!フューニクスは…紅花國靖のクローンだ!」
高らかに笑う芦田。
物凄い高圧に全員が動けなくなる。
「どうした…?お前等が動かないと…後の奴等死ンじまうぞ?」
再び仮面を被り、歩き出すフューニクス。
「チィ――!」
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「させないッ!!」
夕馬、海人、碧羽の3人が同時にフューニクスに飛び掛る。
「ライトニング…ブロウ!!!」
「ブレイジング…ショット!!」
「石神流古武術!奥義!!朱雀≪スザク≫」
三人が最大の攻撃。最強の攻撃。辺り一帯が壊滅してもおかしくない攻撃。
だが――
「おいおい…真面目にやれよ」
縦回転の蹴当である朱雀を避け、腹部を殴りつける。
近距離の猛禽の爪を弾き、下顎に掌底を叩き込む。
中距離から放たれた光速の弾丸を摘み、体を捻り肩の鞭で腹部を殴打する。
その動作を――3人を同時に相手にしていると言うのに…その動作を一呼吸で済ますフューニクス。
吹き飛んだ3人は呻き声さえ上げず、気を失っている。
「終わりかい…?情けねぇなぁ…」
くるりと振り向き、芦田に向かう。
「興が削がれた。こいつ等は殺る価値がねぇな」
ルフも同じくくるりと振り向き、芦田に向かう。
「私が出るまでも無かったですね。…脅威にはならないでしょう」
ルフはボロボロになった淳を一瞥し、興味無さそうに言った。
煙草を地面に投げ捨てる芦田。
「これで分かっただろう…圧倒的な差だ。大人しく降伏して、私の元に来い…君達の能力は価値がある…」
黄ばんだ白衣を翻し、背を向け大仰に天を仰ぐ芦田。
「こちらにも準備はある…そうだな、猶予をあげよう…気が変わったら私の元に来たまえ…気が変わらなかったら…その時になればわかるようにしよう」
高笑いをして立ち去る3人…。
吹き飛んだ3人を介抱しながら、美園が叫んだ。
「誰が!誰がアンタなんかのトコに行くもんですか!!見てなさい!必ず…必ず!!」
こうして――敷浪の長い1日は最悪な形で幕を閉じた。
衝撃の過去…
最悪の未来…
絶望だけを残して…
―最後の戦い。
―その先にあるものは
―希望か
―絶望か
最終話【 明日 】
「必ず――必ず帰ってきて――お願い」
下卑た笑い声が木霊する。
黄ばんだ白衣にボサボサ頭。
無精ヒゲに銜え煙草。
その男…芦田雄介は笑っていた。
燃え盛るHeven's Doorの前で――笑っていた。
「マスター。何者かが超高速で敷浪センタービルから飛行してきます」
紺城サユリがモバイルデバイスを見ながら言う。
「反応が2つの為…イーグルでは無いと思われます」
デバイスから芦田に目を向ける
「いいじゃないか。これでやっと…やっと全部が揃う」
ニタァ――と口の端を持ち上げ、芦田は笑みを浮かべる。
「芦田ァァァっ!!!」
遥か上空から、白い戦士と黒い戦士が急降下してきた。
「待っていたよ――落合君」
第9話 【 決 戦 】
地下室は蒸し風呂状態だった。
手負いの3人を地下室に非難させ、これからの対策を練ろうとした時…
大爆発が起きた。
≪無垢なる皇女≫の粉塵爆発なんて比べ物にならない程の大爆発。
建物一つが消し飛ぶ程の大爆発。
幸いと言うか、不幸と言うか、地上には誰も居なく、爆発による怪我人は誰も居なかった。
「ぬおぉぉぉぉわぁぁぁぁぁっ!!」
扉をこじ開けようにも、無傷なのは非戦闘系の3人と美園くらいである。
絶体絶命の大ピンチに秋華はディスプレイに向かっている。
「なんか方法…なんか方法…なんか方法…」
ブツブツとメトロノームの様に同じ言葉を繰り返している。
「小型爆弾で扉だけ吹き飛ばす?でも上に敵がいたら?…そうだ!」
秋華はバッと顔を上げる。
淳が持ってきた重火器の中にロケットランチャーがあったはずだからそれを改造すれば…と思いついた。
「ロケットランチャーの改造なんてしても…無理だと思います。恐らく、扉の前と上に瓦礫が乗っているのでしょう…」
冷静に、恵一がアドバイスをする。
「それより…通信で夕馬さんに助けを求めるのが一番いいんじゃない?」
香も秋華に申し開く。
「…だけど!」
その時爆発音と共に、地下室に光が差し込んだ。
「大丈夫か!?」
其処に居たのは黒い装甲の戦士…レイヴンだった。
2人がHeven's Doorに到着した直後。
「待っていたよ――落合君」
ニタァと蛇の様な微笑で夕馬を見る芦田。
「芦田…貴様ァッ!」
殴りかかろうとする夕馬に向かい、芦田が燃えるHeven's Doorに目をやる。
「いいのかい?――君の大切な仲間達は今頃、地下室で木乃伊になるのを待っているが?」
ピタっと動きを止めるレイヴン。
「救出するならすればいいさ。…私の目的は君達の抹殺ではない。真逆だからねぇ――」
再び蛇の様な微笑を浮かべる芦田。
「落合!さっさと助けて来い!変な動きしたら――俺が撃ち殺す」
自動小銃を芦田に構え、イグレットが言った。
「ほほぉ…その声はNo.19か?…まさか適応するとはねぇ。…愛の力は偉大だな」
カハハハと笑う芦田。
「動くな。1ミリたりとも動くな、息をするな、笑うな、俺と目を合わせるな…」
静かな声で言うイグレット。
「俺はトリガーを引きたくてウズウズしてるんだ…」
カチャ――と銃口を芦田の頭に向ける。
「ハハハ…これはこれは…」
顔はニヤニヤしたまま両手を上げる。
その間にレイヴンは地下室の入り口の瓦礫を吹き飛ばし、扉を開いた。
「大丈夫か!?」
エネルギーの消費を抑える為にヤタと分離をし、通常体のレイヴンになる。
「夕馬!!」
飛び出してきたのは、秋華ではなく美園だった。
美園が飛び出し、秋華が続いて出てくる。
全員地上に出て来た所で芦田が口を開いた。
「さぁ…これで役者は全員揃ったな」
ニィっと笑う。
「これより君達には私の仲間になって貰おうか。…いや、戻ってもらおうかと言うのが正しいかな――?」
両手を降ろし、秋華の方を向く。
「なぁ…鈴峰秋華。いや…【超頭脳実験被検体“第4号”】と言った方がいいかな?」
超頭脳実験と言う言葉に秋華の体がビクッと硬直した。
「第…“4号”…?」
ガタガタと体が震えている。
「アキちゃん!」
美園が駆け寄り、秋華の肩を抱く。
「ふむ…ならば、こう言おうか…“さぁおいで、我が娘”」
ニィと笑い芦田が嘯く。
「うぅ…」
秋華が頭を抱え、美園の手を振り解き、その場にしゃがみ込む。
「うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」
カッと目を見開き、天に向かい絶叫をする秋華。
「イヤだ!イヤだ!イヤダ!イヤダ!イヤダ!イヤダ!イヤダ!イヤダ!」
しゃがみ込んだまま発狂する秋華。
「アキちゃん!?どうしたの!?ねぇ!!アキちゃん!!」
美園が抱き締める。
「イヤ…ダ…記憶なんていらない!!イヤァァァァァァァァァァ!!」
ガクン――と、力が抜ける。
「アキちゃん…?」
顔を上げた秋華は、虚ろな…生気の無い目をしていた。
その姿はまるで改造されたばかりの夕馬の様だった。
「ドクター。オハヨウゴザイマス」
感情が全て失われた様な無機質な声で秋華がそう言った。
「アキちゃん…?」
抱き締めていた美園を振り払い、秋華は芦田の方に歩いていく。
「芦田!!貴様ッ!!秋華に何をした!!」
芦田に向き怒声を浴びせるレイヴン。
「何をした?フフフ…“元に戻した”だけだが」
懐から煙草を取り出し咥えると、サユリが火をつけた。
フゥ――と煙を吐き出し――
「何か勘違いしていないかね?彼女は元々私が作った改造人間≪モノ≫だ。持ち主の元に戻ってくるのは当たり前…だろう?」
ニタァと笑う。
「モノ…だと…?」
怒りに身を震わせるレイヴン。
「秋華は…無茶苦茶で、天真爛漫で、スッゲー馬鹿で、誰よりも明るく、コロコロと表情を変える。…そんな女の子だったんだぞ!」
レイヴンのカメラアイが怒りに呼応するかの様に赤く…緋く光る。
「そんな子を…貴様ァ!」
芦田に飛び掛るレイヴン。
だが――
芦田の前に秋華が立ちはだかった。
「秋華!?」
ピタリと寸前で拳を止める。
「落合夕馬…ドクター ニ 触レルナ」
生気の無い…抑揚の無い声で、レイヴンに向かって言う秋華。
「違う…だろ?…違うだろ!?アイ君だろ!?何言ってんだよ秋華!目ェ覚ませよ!!」
変身を解除し、秋華の肩を持ち揺する。
「何 ヲ 言ッテイル? 貴様 ハ 落合夕馬 ダロウ?」
虚ろな目…
生気の無い顔…
抑揚の無い口調…
全てが、夕馬の知る秋華では無かった。
「芦田…。元に戻せ…。今すぐにだ…元の秋華に戻せェェェェ!!!!」
背後ではイグレットの変身を解除した海人が銃を構えている。
「俺もこんな姿のこの子は見たくない。戻すんだ。今すぐに」
静かな怒りを込めて銃口を向ける。
「ぐっ…と、目が覚めたらとんでもない事態じゃないか。…秋華がそんな喋り方するのは似合わないねぇ」
満身創痍の碧羽も立ち上がり構える。
「…」
煙草を銜え、無言で銃を構える淳。表情だけで怒っている事が分かる。
「秋華ちゃん…正気に戻って!お願い!いつもの調子に戻ってよ!」
香は涙をポロポロと流しながら立ち上がった。
「その子は…貴様の娘ではない…。うちの大事な次女だ。開放しろ」
修也も立ち上がり、構える。
「その子が…その子が例え何であろうと…貴方に渡すわけにはいかない」
スッと雨音も立ち上がる。
「フフフ…フハハハハ!ハァーッハッハッハッハ!!」
その様子を見て、芦田が高笑いをする。
「いいねぇ…美しい!友情ゴッコか!フハハハハ!!!実に…」
ピタっと笑いを止め全員を見る。
「くだらない。なぁ…そう思わないか?恵一」
芦田が恵一に目をやる。
全員が恵一の方を見る。
「全くですね。くだらない。実にくだらない」
ふぅ――とため息をついて、恵一が芦田の方に向かっていった。
「どういう事だ!?恵一、お前…裏切ったのか!?」
夕馬が恵一を睨み付ける。
「裏切ったもなにも…元々僕はあちら側ですよ。夕馬さん」
ポン――と肩を叩き、芦田に向かう。
「――と、言うわけだ。残念だったね諸君」
ニヤついた顔で芦田が言う
「ご苦労だった…例のデータは集まったかね?」
恵一が懐から1枚のCDを取り出す。
「こちらに…これで“レイヴンの戦闘データは全て”です」
全員に戦慄が走る。
レイヴンの戦闘データが敵に渡ると言う事は明らかにこちら側が不利になる。
「恵一ッ!」
夕馬が叫ぶと同時に恵一が懐から拳銃を取り出し芦田に向ける。
「渡すわけにはいきませんけどね」
引き金を引く。
―パァン
乾いた音が響いた。
恵一の銃が火を吹いた。
だが――
倒れたのはサユリであった。
「くそ!」
恵一が舌打ちをする。
「ほぅ?…裏切るのか…面白い」
サユリと言う助手が撃たれたと言うのに平然としている芦田。
―パァン
再び銃声がする。
「ドクター、ご無事で…?」
撃ったのはサユリであった。
そして、撃たれたのは――
「ぐおっ…」
恵一だった。
2発の銃声。
倒れる恵一。
その瞬簡に碧羽が、夕馬が、淳が、海人が、それぞれ芦田に向かって飛び掛った。
「貴様ァァァァァァァ!!!!!」
だが、寸での所で上空から矢が降ってきた。
「なにッ!?」
上空からふわりと白銀の装甲兵が降りてきた。
「ご苦労だ。ルフ」
白銀の装甲兵に向かい芦田が労いの言葉を掛ける。
「アキ…正気に…戻りなさ…い…」
息も絶え絶えな恵一が秋華に近寄る。
「君は…優しい子だ。君のいるべき場所は…芦田の元じゃない…修也さんや…夕馬さんの元だよ…」
恵一はごふっと血を吐き出す。
「わかる…ね…?君の居場所は…おいしいココアのある…優しい母がいる…Heven's Doorなんだよ…」
無表情で見下ろしていた秋華に変化が見え始める。
苦しそうな表情を浮かべている。
「け…い…さ…ん…?」
そっと秋華の頬に触れる恵一。
「そうだ。君は…あんなに喜んでた…じゃ…ないか。家族が…できた…って…さぁ…」
「ルフ、あの目障りな小虫を片付けろ」
ルフと呼ばれた白銀の装甲兵に芦田が言った。
「イエス」
ルフが左手を恵一に向けると、手首から矢が射出された
―キュンと、鋭い音がすると、恵一の右腕が吹き飛んだ。
「恵一!!!!」
ルフに向かって自動小銃を撃つ海人。
同じく大型拳銃を撃つ淳。
だが、どちらの弾丸も“まるで意思があるかのようにルフを避けた”
「――!?」
「な…アレは…」
修也は絶句した。
右腕が吹き飛び、絶命しかけている恵一に秋華がフラフラと歩み寄る。
「ケイ…さん…?ケイさん!!!!!!」
涙をボロボロと流しながら恵一に駆け寄る。
「ケイさん!何で!?何でよ!!ケイさん!!」
右腕が無くなった恵一を抱き上げ、ボロボロと涙を流す。
「そう…それが…君の…本当の君だよ…」
血液が足りないのだろう。顔色が真っ青である。
「うん。うん!わかってるよ…わかったよ!だから…だから…だから…」
子供のように泣く秋華。
「だから――死なないで!ケイさん!!」
その様子を見てヘタッと腰を抜かす香。
「嘘…ですよね…死ぬとか…嘘ですよね…」
ごふっと再び血を吐く恵一。
「最後に――僕達を駒の様に扱う…あの男に一矢報いたかったけど…」
すっと目を閉じる恵一
「やっぱり…ダメ…か」
その言葉を最期に――恵一の心臓は止まった。
「ケイさん…?ダメだよ…寝たらダメだよ…ケイさん!?ケイさん!!!」
美園と香が恵一と秋華を引き離す。
「アキちゃん!落ち着いて!アキちゃん!!」
「秋華ちゃん!落ち着いて!!」
必死で引き離す二人。
何故ならば、芦田が向かってきているのが見えたからである。
「ふん…駒に感情を持たせるとこうなる…いい結果を知らせてくれたよ。小虫にしてはいい働きだ」
息絶えた――恵一の死体を踏みつけ、芦田は唾を吐く。
「キサマァァァァァァァァ!!!」
その行動を見た碧羽が激昂し、殴り付けようと駆け出した。
だが、先程まで淳と海人を相手にしていたルフが立ちはだかった。
「姉ちゃん!頭下げろ!!」
後から夕馬の声がする。
碧羽が頭を下げると碧羽の背中を転がり、遠心力をつけた浴びせ蹴りがルフの顔面にヒットした。
「マスターには指一本たりとも触らせない」
避けようとも、掴もうともせずに顔面で夕馬の蹴りをうけ、ルフは嘯いた。
「まぁ――落ち着きたまえ…落合夕馬。落合碧羽…いや…」
ふぅ――と煙草の煙を吐き出す芦田。
「“紅花”夕馬、“紅花”碧羽。と呼ぼうか?」
ニタァと笑う芦田。
「な…なに…?」
「紅花…だと!?」
その名前に反応したのは――修也と淳だった。
紅花…
この名は二人にとって因縁の深い名である。
かつての宿敵――
防衛省 特殊人災処理局々長『紅花 國靖』
通称≪神を殴った者(ゴッドハンド)≫
その通称の通り――神を殴った男である。
異能力者でありながら――非異能力者。
非異能力者でありながら――異能力者。
世界の為に特異点を殺そうとした男。
最強で最凶で最悪な宿敵――。
宿敵とは言え、憎んでいたわけでは無い。
宿敵とは言え、恨んでいたわけでは無い。
その宿敵の子供が…目の前にいる。
その事実に――芳田修也と設楽淳はただ純粋に驚いた。
「そもそも――不思議に思っていたのだよ、私は――」
困惑している全員に目もくれず、芦田は語りだした。
「何故…あのナノマシンが適応したのか?何故…これほどまで力を引き出しているのか?」
煙草を銜え、ボリボリと頭を掻いている。
「気になった私は――君の血液を調べてた。いやいや驚いたよ。なんと君はあの≪神を殴った者(ゴッドハンド)≫と同一の遺伝子情報を持っている」
バッと両手を広げ天を仰ぐ。
「それもそのはずだ!君の父上は世界で一番偉大な男なのだからなぁ!」
ハハハハハッと軽く笑う
「失礼だが君の母上の経歴を調べさせて貰った。27年前に紅花氏と夫婦になっているではないか!そしてその1年後に第一子、碧羽嬢を産んでいる」
碧羽を見る芦田。
「そして3年後に――第二子である夕馬君!君を産んでいる」
当たり前の事を大げさに、まるで舞台上に居るかのように話す。
「その後は君達のよく知る通り――父上はその男に殺されている!」
大仰な手振りで修也を指差す。
「君達は皮肉にも、父の仇と共に暮らし、笑いあっていたのだよ!」
ぐっ――と言葉を詰まらせる修也。
「だから?」
「それがどうした…」
夕馬と碧羽は同時に口を開く。
「親父がどうとか――」
「修也さんがどうとか――」
「「そんなもんはとっくにケリがついてる事だろうが!!」」
芦田を睨む二人。
「大の男がグチグチグチグチと…全くみっともないねぇ」
碧羽はいつでも攻撃できるように構える。
「親父と修也さんがどうだったとかしらねぇなぁ…」
―realization
「俺にとっては修也さんの方がよっぽど親父だ!変身!!」
-transformation
「こい!ヤタ!!」
ベルトを押し込む。
―Standing by―
「テメェの腐った根性…叩き直してやるッ!」
―Union Complet―
夕馬はレイヴンヤタに変身した。
それは、もう聴く耳を持たない。と言う意味であった。
「フン…まぁ、いい。力づくにでも協力させてやろう…ルフ!」
「イエス」
一瞬で芦田とレイヴンの間に入るルフ。
(この声――どこかで――)夕馬の脳裏に疑問が過ぎる。
ニィっと笑う芦田。
「聞き覚えある声だとは思わないかね――?彼の正体を知りたいか?」
ニヤニヤとにやけ続けている。
「ルフ、見せてやれ」
芦田が言うと、ルフは仮面を外した。
「――!!」
仮面を外したその素顔は――芳田修也であった。
「クッ――やはりか…!」
修也が銃を構える。
「“私に銃弾は効かない”――貴方が一番分かっているでしょう?」
修也の声で修也に話しかける。
「どういう事だ…」
再び困惑するレイヴン。
「なぁに――簡単なことさ。そこに居るのは…最強の異能。≪世界の敵≫を備えた…芳田修也のクローンさ」
高笑いをする芦田。
「さらに絶望をプレゼントしようか…」
懐から何かの装置を取り出す。
「これを見たら諸君も戦う意思など――失せるさ」
――ピィィィと装置から警告音がなる。
すると、敷浪センタービルの方角から爆発音と共に何かが――金色に輝く何かが飛んできた。
その金色の何かはビルを切り裂き、電柱をまるでバターの様に切り裂き、一直線にHeven's Doorに向かってきた。
―ドォン。と派手な音を立て、金色の戦士は芦田の近くに着地した。
白銀の装甲兵――ルフは西洋の甲冑の様に美しく羽根が生えているのに対し
金色の装甲兵は――レイヴンとよく似た姿をしていた。
違うのは――金色に輝く装甲と、両肩から生えた鞭のような物、そして猛禽類の爪が両手にある事くらいだった。
「改めて紹介しよう…第四世代型“人造人間”Type-φ…フューニクスだ」
すぅ――と、ゆっくり立ち上がるフューニクス。
「よう…初めましてだな。息子」
フューニクスが嘯き、仮面を外す。
仮面の下の素顔は――夕馬によく似ていた。
「――!バカなッ!そんなバカな!!」
修也が驚き、後ずさる。
「フハハハハハ!!!絶望しろ!!そうだ!君の予想は合っているぞ!フューニクスは…紅花國靖のクローンだ!」
高らかに笑う芦田。
物凄い高圧に全員が動けなくなる。
「どうした…?お前等が動かないと…後の奴等死ンじまうぞ?」
再び仮面を被り、歩き出すフューニクス。
「チィ――!」
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「させないッ!!」
夕馬、海人、碧羽の3人が同時にフューニクスに飛び掛る。
「ライトニング…ブロウ!!!」
「ブレイジング…ショット!!」
「石神流古武術!奥義!!朱雀≪スザク≫」
三人が最大の攻撃。最強の攻撃。辺り一帯が壊滅してもおかしくない攻撃。
だが――
「おいおい…真面目にやれよ」
縦回転の蹴当である朱雀を避け、腹部を殴りつける。
近距離の猛禽の爪を弾き、下顎に掌底を叩き込む。
中距離から放たれた光速の弾丸を摘み、体を捻り肩の鞭で腹部を殴打する。
その動作を――3人を同時に相手にしていると言うのに…その動作を一呼吸で済ますフューニクス。
吹き飛んだ3人は呻き声さえ上げず、気を失っている。
「終わりかい…?情けねぇなぁ…」
くるりと振り向き、芦田に向かう。
「興が削がれた。こいつ等は殺る価値がねぇな」
ルフも同じくくるりと振り向き、芦田に向かう。
「私が出るまでも無かったですね。…脅威にはならないでしょう」
ルフはボロボロになった淳を一瞥し、興味無さそうに言った。
煙草を地面に投げ捨てる芦田。
「これで分かっただろう…圧倒的な差だ。大人しく降伏して、私の元に来い…君達の能力は価値がある…」
黄ばんだ白衣を翻し、背を向け大仰に天を仰ぐ芦田。
「こちらにも準備はある…そうだな、猶予をあげよう…気が変わったら私の元に来たまえ…気が変わらなかったら…その時になればわかるようにしよう」
高笑いをして立ち去る3人…。
吹き飛んだ3人を介抱しながら、美園が叫んだ。
「誰が!誰がアンタなんかのトコに行くもんですか!!見てなさい!必ず…必ず!!」
こうして――敷浪の長い1日は最悪な形で幕を閉じた。
衝撃の過去…
最悪の未来…
絶望だけを残して…
―最後の戦い。
―その先にあるものは
―希望か
―絶望か
最終話【 明日 】
「必ず――必ず帰ってきて――お願い」