私が雑誌の編集者をしていた頃、
その日初めて会うカメラマンやスタイリスト、
広告会社の方などと食事をするという
機会が多々ありました。
もちろん相手のことはほとんど知らないし、
なんとか共通の話題をみつけて、
盛り上げようと頑張る、結構タフな時間です。
そうした食事会の最中、ある有名カメラマンの
アシスタントである
20代前半のA君がポツリと言いました。
え? いやいや。
あなたの好きな食べ物知らないし。
そもそも初対面だし。
ゆえに誰も突っ込みようもなく、
「へえ、そうなんですね」としか
いいようもなく……。
もしくは、
ほとんどの人はカレーが好きでしょ?
といった確認なのか?
はたまた、
今日のこの短時間の中にすでに
カレー好きを発言していたのかも?
と、さまざまな考えがアタマを
駆け巡りましたが、やはりどうしても
納得がいかないなぁと。
真意がわからぬまま、友人にその話を
したところ、”大いにあるある”と共感を
得たものです。
余波は彼のみにとどまらず、
『~じゃないですかぁ』汚染は
かなりの勢いで広まっていたのです。
私はピンクが好きなんですけど、
あなたは何色が好きなの?
とか、
僕はドライブによく行きますが、
クルマの運転はお好きですか?
といったように、
相手との会話を広げたいのであれば、
返しやすい言葉を投げた方が
よりスムースに展開しますよね。
会話はキャッボールですから。
いきなり前ぶれもなしに、
大暴投をかまされては、
頭上を越えたボールを
とりに走る気にもなれないかも。