今日の館山は気温22℃、水温20℃超の暖かい日でした。ただ、風速は10メートル超で、館山湾は荒れ狂っていました。



海に入りました。腰まで浸かると、荒波は容赦なく私の体を押し倒しました。私は波打ち際に倒されながらも波に抗い、波に向かうと、すかさず次の荒波が私の顔面を直撃し、私は2回転して浜辺に叩きつけられます。

打ち砕け、打ち砕け、海の気の済むまで打ち砕け
何度でも立ち上がって、全身全霊で抗ってやる

私は幾度となく顔面に波の直撃を受けながら、10代の頃偶像崇拝していた石川啄木の詩を思い出していました。「今聞ゆ」に収められた「失せにける色赤き花」



失せにける色赤き花(石川啄木)

わが戀は砂に咲きたる名知らぬ赤き花なりき。

羽青き渡鳥、

いつの日か

海のあなたの

外國(とつくに)の知らぬ苑より

かがやける瑪瑙(めのう)の如き一粒の堅き草の實

知らぬ間に啣み来て、あはれこの荒いその、――

我のみぞ一人住むさびしかる荒磯の

砂の上に落しけむ――いつしかに、あはれそのかがやける瑪瑙の如き

一粒の草の實は若芽を吹きつ

やがて、日の抱擁、雨の接吻に

日毎にのびて、のびのびし

いとすくよかにかよわなるその青莖に

蕾しぬ。叉やがて花さきぬ、名も知らぬいと赤き花さきぬ。

我はその色赤き、色赤き花を見て

見ぞ恍ほけつ、愛でしれつ、いたはりつ。

やがてあゝいとかなし、とある夜に嵐きぬ。

逆まける荒波ぞ砂の上に打砕け

打碎け、打碎け、打碎け、打碎け、

夜は明けぬ、あなかなし、一本ひともとの我が花は

色赤き、色赤き我が花は

跡もなく失せにけり。

失せにける色赤き名も知らぬ赤き花

我が戀はそれなりき、たゞ一度さびしかる

あはれこの荒いその砂の上に咲き出でし花なりき。

若き日のよろこびは、あゝかくして歸らざり、つひに歸らざり、

我のみぞ一人住む荒磯に

我つねに悲しくも寂しくも思ひ出づ

あはれ、その

あなあはれ、あはれその

失せにける色赤き花。