1ヶ月もジリオラ・チンクェッティとお付き合い頂きありがとうございます。今の予定ですと充分まだ1ヶ月以上続くことになります。
インテルメッツォで少し気分を変えていただきましょうか。もろ受け止めていただくと何が起こったかと思われるかもしれませんが、決して線は外しておりません。
探していた盤でしたが、やっと見つけ落札しました。と言っても存在を見付けたのはそんなに古い話でもありません。今年の1月末に色々検索をかけている時偶然にブツカリました。
カンツォーネを追っかけている私が何故“カリプソ娘”なのか。団塊の世代の方なら、小学校行くか行かない頃、訳も分からず誰かを殴って「デーオ、イデデーオ」とわめいた経験があるはずです。
かの「デーオ、イデデーオ」こそ、浜村美智子がハリー・ベラフォンテの“バナナ・ボート(BANANA BOAT)”をカヴァーしたのは‘57年(昭和32年)4月でした。
この場で紹介しようとしているのは当時カヴァーされたイタリア関係の曲が入っていたからです。50年代後半でイタリア関係の日本語カヴァーは貴重品です。このCDにはその他のカヴァー曲も沢山入っており、現在でも十分通用するだけの浜村美智子の実力と、ビクターのバックオーケストラの水準の高さに驚かされます。

1.バナナ・ボート [日] (BANANA BOAT (DAY O) [J])
2.恋のヴェネズエラ [日] (VENEZUELA [J])
3.カリプソ娘 [日] (CALYPSO JOE [J])
4.ダーク・ムーン [英・日] (DARK MOON [E・J])
5.ママはブーブー [英・日] (MAMA LOOK A BOO BOO [E・J])
6.島の女 [日・希] (BOY ON A DOLPHIN [J・G])
7.パラダイス [英] (PARADISE)
8.ザッツ・ラヴ [英] (THAT'S LOVE)
9.これが恋かしら [英] (WHAT IS THIS THINGS CALLED LOVE)
10.ハッピネス [英] (HAPPINESS)
11.ジングル・ベル [英・日] (JINGLE BELLS [E・J])
12.監獄ロック [日・英] (JAILHOUSE ROCK [J・E])
13.悲しみよこんにちは [日・英] (BONJOUR TRISTESSE [J・E] (BUONGIORNO TRISTEZZA [J]))
14.死ぬほど愛して[日] (SINNO' ME MORO [J])
15.アフリカの星のボレロ[日] (STERN VON AFRICA [J])
16.タブー[日] (TABU [J])
17.ロンリー・ワン[日] (THE LONELY ONE [J])
18.フラミンゴ[日] (FLAMINGO [J])
19.ハーレム・ノクターン[日] (HARLEM NOCTURNE [J])
20.テンプテーション[日] (TEMPTATION [J])
21.チャチャチャ・フラメンコ[日] (CHA CHA CHA FLAMENCO [J])
22.ビー・マイン・トゥナイト(かわらぬ愛) [日] (BE MINE TONIGHT [J])
23.ロ-ラ[日] (LAURA [J])
24.カーニヴァルの夜[日] (A FELICIDADE [J])
25.黄色いシャツ[日] (ノラン・シャツイ・サナイ)
さてイタリア関係で行くと(6)の“.島の女”、ソフィア・ローレン(SOPHIA LOREN)で“イルカに乗った少年”なのですが、MCAのサントラ盤はマリー・ケイ (MARY KAYE)のクレジットになっています。まあ、堅いことを言わずに、取りあえずソフィア・ローレンにしておいてください。
一つ跳んで、次が(14)の“死ぬほど愛して”、アリダ・ケッリ(ALIDA CHELLI)が歌う映画「刑事」の主題曲、大変なヒットでした。カンツォーネでイタリア語を聞いても日本人が驚かなかったのはこの曲のおかげかも知れません。日本人のカヴァーは中原美紗緒、佐川ミツオ、朝丘雪路、牧村旬子、高美アリサ、岸洋子だいぶん時代はあたらしくなりますが変わったところでフラワー・メグも歌っていました。イタリア人だとロザンナ・フテルロラ、ヴィアネラあたりでしょうか。もっとあると思っていましたが案外少ないですね。
一つ跳ばした曲は(13)“悲しみよこんにちは”です。このCDのクレジットは「BONJOUR TRISTESSE GEORGES AURIC – ARTHUR LAURENTS」となっており、曲目解説も「ジーン・セバーグ主演の米映画『悲しみよこんにちは』の主題歌。原作はフランスの人気女流作家フランソワーズ・サガンの大ベスト・セラーとなった同名処女作である。」と書いてあります。
多分57年発売当時からそうなっているのだと思います。じつは浜村美智子が歌っているのは、1955年サンレモ音楽祭優勝曲“悲しみよ今日は(BUONGIORNO TRISTEZZA)”なのです。当時から映画の“悲しみよ今日は”とサンレモ音楽祭優勝曲の“悲しみよ今日は”は混同されています。
LL- 108 (1958年4月 COLUMBIA – COLUMBIA, Japan)“悲しみよ今日は(BONJOUR TRISTESSE)/ティル(TILL)” パーシー・フェイス楽団 (PERCY FAITH)

も同様の間違いをしています。ジャケット画像を見ていただければ映画から取った写真をつかっています。映画の“悲しみよ今日は”はゴギ・グラントが歌ったサントラ盤の曲が正しいものです。
SS-1070 (1958年4月 VICTOR – VICTOR, Japan)“悲しみよ今日は(BONJOUR TRISTESSE)/悲しみよ今日は(BONJOUR TRISTESSE)” オリジナル・サウンドトラック (ORIGINAL SOUNDTRACK)/ゴギ・グラント(GOGI GRANT)

この間違いは、パーシー・フェイスの場合を見ても日本での間違いよりアメリカの原盤、ライナー・ノーツ段階の間違いではないかと思います。
サンレモ音楽祭の“悲しみよ今日は”はクラウディオ・ビルラ(CLAUDIO VILLA)とトゥリオ・パーネ(TULLIO PANE)が創唱しました。ビルラは当時ヴィス・ラディオ(VIS RADIO)というナポリのレコード会社所属で日本ではオリジナルが出ていません。2年後メジャーのチェトラに移籍してからの曲は日本で発売されています。
17M-1011 (1964年10月 SEVEN SEAS – KING, Japan)“サン・レモのすべて第2集 (TUTTE LE SAN REMO Vol. 2)”

2.窓を開けて (APRITE LE FINESTRE)
3.ギタ-の弦 (CORDE DELLA MIA CHITARRA)
4.つた (L'EDERA)
1.3. クラウディオ・ビルラ(CLAUDIO VILLA);2. フランカ・ライモンディ (FRANCA RAIMONDI);4. トニ-ナ・トリエリ (TONINA TORRIELLI)
この2曲の混同は止むを得ない事情があります。サンレモ音楽祭の優勝曲の方もフランソワーズ・サガンの小説『悲しみよ今日は』にインスパイアされて作られたという経過があります。しかもサンレモの方はフランスでヒットし、時期も重なっています。
反対のケースもあります。この間違いは犯してほしくなかったのですが!
KICS- 6234~8 (2003年11月27日 KING – KING, Japan) “Viva! CANZONE・カンツォ-ネ全集(日本語)(VIVA CANZONE !)”

カンツォーネの日本語ヴァージョンを集めた5枚組のCDセットに収められた中原美紗緒が歌う“悲しみよ今日は”はサンレモ音楽祭優勝曲でなく、アメリカ映画の主題曲だったのです。カンツォーネではありません。カンツォーネで実績があり、専門家なのですからこの間違いはいただけませんでした。