6月5日、東京大手町で恒例の経済セミナーを開催しました。講師は第一生命経済研究所シニア・フェロー 嶌峰義清先生です。

 

image

1.グローバル経済動向

〇主要国(日米欧中)における企業景況感は明瞭な方向感が無く不安定な状況が継続

〇製造業は日米とも出荷は底堅く推移しており、在庫調整は軽微

〇特にAI関連需要の強い半導体業界では24年は大幅増産へ

〇景気循環的には世界経済は緩やかに減速しつつあり、出荷が落ち込めばリセッションも

⇒今後の金融政策が鍵に

 

2.世界主要国の物価・賃金動向

〇消費者物価(コア)上昇は目標水準である2%程度に

〇但し、資源価格再高騰の兆候もあり物価上昇圧力は残存

〇労働需給は逼迫状態が続き、実質賃金は上昇

 

3.金融政策

〇欧米では利上げは一旦打ち止め→米国FRBの利下げ開始時期は依然不透明

本講演会翌日6日に欧州中央銀行は中銀預金を0.25%利下げ実施

〇日本はリセッションが無ければ中立金利(≒潜在成長率;0.5%)へ向け利上げか

image

4.エリア別景況感

日本日本

〇企業景況感:輸出は持ち直し、輸入価格も円安歯止めで騰勢加速も終焉へ。設備投資の先行指標である工作機械受注の底入れ感が鮮明に。大企業の利益見通しは4期連続で増益の可能性も

〇個人消費:バブル期以来の賃上げ実現の一方で、名目賃金は下落したため個人消費は減少。特に2019年の消費増税とコロナ禍で落ち込んだ若年層と高齢者の消費意欲の回復は鈍い

 

米国アメリカ

〇労働市場:これまでタイトであった労働市場に軟化の兆し;失業保険申請者及びパートタイマーの増加。企業側の雇用意欲は落ち着き始めるも、実質賃金は上昇

〇個人消費:賃金上昇に伴い個人消費は好調。その反面、金利上昇が消費者マインドに水を差し、信頼感指数は低下。特に個人向け住宅需要はローン金利の急上昇により低迷続く

〇企業景況感はバラついており方向感がない状況

〇FRBの金利引下げ予想は年3回から2回へ

 

 

中国中国

〇若年層の雇用低迷、不動産市況の悪化が景気の足を引っ張っている状況

輸出・工業生産は米中対立から引き続き不振が続くとの観測が強まりつつある。対中投資も人口減少懸念や現政権の外国企業への強硬姿勢等に対応した脱中国傾向の高まりから急減

 

欧州イギリスフランスドイツ

ユーロ圏の消費はエネルギー価格上昇の鎮静化、堅調な雇用情勢から回復へ

〇ユーロ経済をけん引するドイツはロシア・中国との関係が深く製造業が低迷しており生産回復に遅れ

 

5.各国経済見通し  <出所(株)第一経済研究所 5月予測 単位;%、>

 

           2024           2025

米国       +2.6                              +1.9

ユーロ圏     +0.6            +1.3

日本(年度)   +0.5                    +1.2

インド(年度)  +6.8               +6.4

中国       +4.8                              +4.0 

 

6. 市場見通し

米国

〇長期金利:更なる上昇リスクはあるもののインフレ鈍化等から概ねピークアウト

〇株式市場:金利低下がなければ予想以上の下落も

 

日本

〇ドル円相場:円安は介入で押しとどめたものの、米国利下げが視野に入るまで円高転換は見込み薄

〇株式市場:上昇ペースは調整するも景気・物価上昇から水準は切り上げか

以上