コロナに加えウクライナ戦争で世界は依然として混迷の状況が続いています。ロシアのウクライナ侵攻からほぼ1年、世界経済の動向について嶌峰義清先生(第一生命経済研究所常務取締役・首席エコノミスト)の講演会を開催しました。要約をお伝えします。

 

【世界の物価】

☆世界的に物価高騰が問題になっている

日本は4%くらいで上昇が加速しているが、米国やヨーロッパは落ち着いてきた。

緩和ができる状況へ。金利上げはインフレ加速の中でできる。

原油価格は昨年4月ごろがピークで下がってきている。

これがエネルギー関連物価の押し下げの要因になっている。

☆日米欧のコア消費物価(食料・エネルギー除く)

米国は高止まり、物価の潜在的な上昇リスクが残る。

中央銀行は頭を悩ませているところ。

米国:インフレスパイラルの可能性も否定できない。つまり物価上昇→賃金上昇→需給ひっ迫→物価上昇

  

【各国状況】

(米国)アメリカ

☆労働需給はひっ迫状態で、賃金上昇圧力は強い。1960年代後半以降の歴史的にみて低い失業率状態にある。賃金上昇は続く。

 ☆労働市場は引き続き好調を維持している。超良好な労働環境でも労働参加率(労働力人口の割合)は改善しない。つまり労働需給のひっ迫が続く。

イギリス(欧州)ドイツ

☆6%台と米国同様労働需給は超ひっ迫状態で賃金上昇続く。

フランス(欧米)イタリア

欧米ともに雇用・所得環境が好調にもかかわらず消費者のマインドは悪化している。背景には物価高騰がある。これが実質消費の低迷につながっている。

 (日本)日本

☆失業率はは米欧より低いがコロナ前よりは高い。賃金水準を上げる圧力にはならない。

 物価高を背景に賃上げへの努力がどこまで行われるか。

 現金給与総額は2000年代以降初めて2%台の伸びとなっている。

(欧米) 雇用・所得好調だが実質消費は低迷へ

☆米国の小売は消費が減りつつある

☆住宅:金利に敏感な住宅需要は一気に冷え込んでいる

販売戸数落ちている。住宅ローンの申請数は急激に下がっている。金利はコロナ前の2倍になっている。

(中国)中国

☆ゼロコロナ緩和後の感染爆発で先行きは不透明

2023年の消費は安定するかどうか不透明。輸出は減っているので更なる落ち込みも懸念される。

(日本)日本

☆消費が伸び悩む中で、これまでは輸出の急増が景気を支えてきた

消費はほぼ横ばい。コロナ以前より低い水準にある。消費増税の影響も引きずっている。

☆輸出価格の急落。海外需要減速。数量の低下。

 輸出金額=輸出価格×輸出数量

 

【金融政策】

☆利上げで米国が先行、欧州はもう少し、日本は必要ないか。

 ☆次の日銀総裁になる植田さんについては極めてニュートラルな判断をする人物とみている。

 ☆米国の金利は、中立金利は2.5~3% これを超えると景気を抑制。FRBは利上げを急ぎ、景気にブレーキをかけて物価抑制へ。

 

【世界の景気】

 ☆世界的には景気拡大の勢いはほぼなくなった。

 ☆米国景気は減速。今年後半リセッション入り。世界的にも景気鈍化間違いない。

☆米国長短金利差がリセッションの前兆の逆イールド状態になっている。10年債利回りー2年債利回り=プラスもあるがマイナスもあるという状態。FRBはそろそろ利上げのペースを緩めるような動きにいつでるか。来年、1~3月にはリセッションにはいりそう。

☆経済見通し:もう一段下方修正もあるかもしれない

(経済成長率) 2023年  (今回、2月時点見通し)

米国:    +0.7→+0.9

 欧州:    ―0.1→+0.8

 日本(年度): +1.0→+0.9

 中国:    +4.1→+5.3      

 インド:        +5.6→+5.6

 

                               以上