第34回 嶌峰会  2021年11月24日(水)    

 

中央区日本橋にて    

なんと2年ぶりに対面による経済セミナー・嶌峰会を開催することができました。日本橋の会場には20名近い参加者が顔をあわせ講師の嶌峰義清先生(第一生命経済研究所常務取締役・首席エコノミスト)の話に熱心に耳を傾けました。講演の要約をお伝えします。


 

晴れ【コロナの感染状況】

☆日本は感染者数が少なくなった。その背景についてはワクチン、手洗いなどがあるといわれるが、世界的には感染再拡大がみられ一概に言えない状況だ。ワクチン高接種国は重症者は少ないが感染者数は拡大している。

【主な国のGDP】

☆主要国の実質GDP推移を2019年10~12月期100としてみると米国、中国はいち早くコロナ前の水準を超えて回復拡大しているが先進各国は遅れをとっている。その中では米国がコロナ前に、ユーロ圏も回復見せている。日本は最も遅れているが、年末には100近くに戻るかなというところ。

【世界の景況】

☆製造業は基本、回復基調にあるが勢いは一服している。

☆非製造業は感染拡大によって動いている。日本が最も遅れていたがようやくいいゾーンに初めて入ってきた。

【各国状況】

アメリカ(米国)アメリカ

米国の製造業では部品供給が滞っている。新規受注はしているが部品が入ってこないので製品が作れず、流れが詰まっている。トラックが不足し、運転手も不足、コンテナは港に積まれたまま。これが成長を鈍らせている。

☆失業者は減って順調に改善している。実質的に雇用環境はコロナ前に戻った。

  失業率は5%前後。失業者数は1000万人を切って800万人前後。米国人は食えるなら、ぎりぎりまで働かないというところがある。労働参加率は、コロナ前に戻っていない。労働力の供給に制約がある。

 ☆小売り:消費は好調を維持している。給付金効果が無くなった後も給与が増えて、小売売上もぐんと増えている。

☆自動車は半導体不足で売り上げは大幅に下がっている。

☆住宅:所得環境が良いので、水準はコロナ前にある。

 ☆物価:消費者物価は前年比6.2%プラス。原油を含め供給不足が物価を押し上げている。日米欧で石油備蓄の放出を決めたが効果は無し。供給問題が解消されれば物価は落ち着くだろうが。

フランスイギリス(ユーロ圏)ドイツイタリア

☆小売り:コロナの行動制約が解かれて消費は回復しているが自動車はは供給制約で落ち込みを見せている。

中国(中国)中国

☆輸出は良くない。海外受注が落ちている。半導体の不足が影響。バルチック海運指数(鉄鉱石、石炭、穀物などを運ぶ外航不定期船運賃)が爆騰している。

☆消費の持ち直し傾向は続いており、中国経済は巡航速度で拡大か。

 日本(日本)日本

☆緊急事態宣言の長期化で雇用・賃金の回復が遅れ気味。

☆失業率は2.8%とコロナ前には戻っていない。

☆サラリーマンの給与は底は打ったが、米国ではコロナ前を超えている。日本が遅れている状態だ。可処分所得は増加傾向で、感染沈静化後の消費回復につながるかどうか。

  消費は基本、横ばい状況。2019年秋の消費税増税の影響が大きい。そしてコロナがやってきた。

☆そんな中、輸出は回復。工作機械(半導体関連)は伸びている。外需が景気を支えている。

☆消費の底入れも水準は非常に低い。財布のひもは増税後で閉まったままである。

☆飲食・観光関連事業は10月以降の回復が期待される状況だ。

 ☆製造業は好調な利益見通し、非製造業もようやく明るさが出てきた状況。

テレビ(半導体)スマホ

 ☆世界のGDPに対する半導体市場の割合が2010年以降急拡大している。中韓台日のアジア勢で市場の8割を占める。

☆需要の底上げとサプライチェーンの分散化・内包化で需要はさらに増大。 

【その他】

(対中国関係)

☆人権問題はじめとして中国マーケットをあきらめざるを得ないのではないか。代わるマーケットとしてはインド。ここも人権、カーストの問題があるが。

(原油)

☆08,14,18のピークがあったが、まだしばらくは上昇トレンド。

(米国金利)

☆比較的落ち着いた推移である。

(ドル円)

 ☆海外金利の上昇圧力の高まりが円安進展の背景にある。しばらく円安も続くのでは。125円がピーク(来年9月までの見通し)             

以上 

 

気のせいかもしれませんが嶌峰先生のお話はいつも以上に力がこもり、参加者との質疑も活発で緊張感漲るセミナーになりました。次回、来年2月に予定のセミナーもぜひ対面でできることを一同心から願っています。ありがとうございました。