【続】「巨大な税金逃れ」:最大の犠牲者は貧困国 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

前回の 「巨大な税金逃れ」 (2010-02-19)で予告したように、 Eva Joly accuse - « L'évasion fiscale nous coûte 1 000 milliards de dollars ! » (エヴァ・ジョリーは告発する - 「税金逃れは我々に1兆ドルの負担をかけている!」)を掲載します。

ファイルのバックアップの際の操作ミスで、新しいファイルに古いファイルを上書きしてしまい、訳し終わっていたはずなのに途中で訳文が消えていたことに今頃気付いて、大慌てで訳し直したところであるため、誤字や誤訳が多数発生している可能性があります。



Eva Joly accuse

« L’évasion fiscale nous coûte 1 000 milliards de dollars ! »



ヨーロッパ・エコロジーの欧州議会議員が、多国籍企業が実行する「税の最適化」のメカニズムを解剖する。その最大の犠牲者は、地球の最貧困国である。


Le Nouvel Observateur. - ブリュッセルで、あなたは開発委員会を予測し、租税回避地に反対するキャンペーンに身を投じました。低開発と税制との関係はどのようなものですか?
Eva Joly. - 租税回避地に対する闘いは、南側の諸国の財源を増やすための最も確実な手段の一つです!その国民の貧困と、灰色の経済の大きさを考えると、発展途上国には範囲の狭い課税対象と、低い捕捉率しかありません。税は、せいぜい、国内総生産の12%から14%を占めるに過ぎません。工業国では40%から50%であるのに対して。ところが、これらの合法的な税収のかなりの部分が、欧米の多国籍企業によって収奪されています。これら巨大国際企業集団に、アフリカで行われているような、発展途上国で税を全くか殆ど払わないことを認めるメカニズムを終わらせなければいけません。多国籍企業は、「税の最適化」を実施するためにあらゆる租税回避地を利用しています。これは南側諸国に対する真の略奪です。しかし豊かな国々もまたその被害を受けます。フランス強制的徴税評議会は、そもそも、多国籍企業が中小企業の2分の1か3分の1の税金しかはらっていないことを確認しています。従業員9人未満の企業だけが実際に30%の税を払っています。CAC40 のグループには・・・8%だというのに!不公平であると同時に、競争の不均衡にもなることです。

N. O. - しかし、ニコラ・サルコジの話を聞く限り、G20 は実質的に租税回避地を廃止することができているだろうと・・・
E. Joly. - それは少なくとも不正確です。なぜなら特に、OECDはその基準によると、モーリス島、ケイマン諸島・・・および他の70の地域を租税回避地として取り上げていないからです。ジョン・クリステンセン John Christensen のTax Justice Network のサイト(www.taxjustice.net)で、これら租税回避地の「正しいリスト」を見ることができます。資本と利益に対する課税が極めて僅かか全くなく、銀行の秘密に関する拡大された規制、会社や商人の記録の欠如、会計義務、監査または管理が全くない地域です・・・ そこでは口座開設の手数料を払い、次に年間手数料を払います。そしてこの口座の所有者の身分と利益を守るためにあらゆることが行われます。明らかに、秘密のお金、犯罪と薬物密売のお金を惹きつけます・・・

N. O. - 我国の政治家たちは個人の税金逃れについては大いに語りますが、企業のそれについては殆ど口にしません。
E. Joly. - 一部の国から個人の口座に関する銀行の秘密の解除を取り付けるだけでは十分ではありません。国家間で最近署名されたデータ交換の協定は小さな進歩です。それが有効であるという条件では。ところが、これらの協定はしばしば、非常に制限的な条項を含んでいます。そしてOECDは形式で満足しています。それはケイマン諸島がバーミューだと、透明性を確保すると約束する協定に署名しているからではありません!同様に、「trust 信託」と「fondations 基金」の不透明性について全く進歩はありません。いずれにしても、これらの取り組みは莫大な大企業の税金逃れを有意に減らす性質のものでは全くありません。ある報告書が、アメリカ合衆国では最も大きな企業の4分の1が、1998年から2005年までに、全面的に税金を逃れたことを明らかにしました・・・ 世界規模で年間2500億ドルの歳入欠陥になる、個人の税金逃れをそれに加えると、アメリカのシンクタンク、Global Financial Integrity の推計によれば、年間およそ1兆ドルの不正な流れになります。この金額の半分以上は貧困国から逃避していて、開発援助として受け取る額の10倍に相当します。

N. O. - 具体的には、それはどのように進んでいるのでしょうか?
E. Joly. - 多国籍企業は特に、子会社間の取引を引き直す帳簿上の操作を利用します。この巨大企業集団の内部の流れ、「prix de transfert 移動価格」と呼ばれるものは、OECDの推計によると、世界貿易の60%を占めるとされています。ザンビアの銅を開発する、ある多国籍企業の例を挙げましょう。この国から直接、鉱石を商品化する代わりに、この企業は世界市場の価格のおよそ30%を下回る移動価格で、紙の上ではモーリス島に拠点を置く、系列の商社に譲渡します。ところがモーリス島は、要求する見積もりの80%の控除を採用していて、公式のリストには載っていない「租税回避地」です!このモーリス島の子会社は、今度は銅を最終的な顧客に市場価格で売却します。モーリスで実現された利益は次いで、例えば、株主に配分された配当という形でオランダにあるグループの持ち株会社に送還されます・・・ 私は故意にオランダを引き合いに出しています。持ち株会社に有利な制度のおかげで、オランダは米国に次いで、世界で第二の直接投資国になっているからです。

N. O. - それは一般的なやり方なのですか?
E. Joly. - これは系統的です。別の手口もあります。例えば、グループの支社をあらゆる租税回避地に分散させ、最大限の価格で給付金の請求書を送る、round trippingのように。アイルランドのブランド的なやり方、ケイマン諸島の顧客関係のやり方、バーミューダでの税の顧問など。もちろん、この種の操作に専門化した給付機関によって管理された架空の企業体であり、役員会と株主総会は電話で開催されます!

N. O. - こうしたやり方は非合法なのですか?
E. Joly. - 三重の不公正に関わるため、不道徳的です。南北、私と公、そして多国籍企業と中小企業の。しかし「移動価格」のメカニズムはまた、操作されている限り非合法と見なすこともできます。この価格は、同じ企業集団の子会社間での優先的な扱いのない、中立の方法で決められていることが前提とされます。一方で意識化は前進しつつあります。このことが、フランス政府に、労働事故の賠償金に課税するよりも、こうしたやり方と闘うように促すことになるでしょう。しかし、共和国大統領の繰り返された宣言にも関わらず、解決にはまだとても、とても遠いのです。

N. O. - これらのやり口と闘うことは、影響力のある圧力団体を使う巨大な利害と衝突します。きっかけはどこから始まるでしょうか?
E. Joly. - これらのメカニズムを廃止する国の企業だけを不利にすることがないように、交渉された「世界的な武装解除」が必要になります。強力な市民運動だけが我々に、達成させることを可能にするでしょう。当初は少数でしたが、運動は規模を拡大しました。労働組合と非政府組織が今では我々の背後にいます。特に、Comité catholique contre la Faim (飢餓に反対し開発に賛成するカトリック委員会)のジャン・メルケール Jean Merckaert が主催する Stop Paradis fiscaux のサイトのような取り組みとともに。彼らは本当に素晴らしい活動をしています。


Propos recueillis par
SOPHIE FAY et DOMINIQUE NORA



Le Nouvel Observateur 2359 21-27 JANVIER 2010

http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p2359/dossier/a417130-%C2%AB_l%C3%A9vasion_fiscale_nous_co%C3%BBte_1_000_milliards_de_dollars__%C2%BB.html


下の方にある Le bouclier de Berlusconi (ベルススコーニの盾)という章は省略します(間に合わないので)。