バージニア工科大学乱射事件とアメリカの銃規制【2】 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

昨日の記事 の続きです。15日午前2時過ぎに更新する予定でしたが、毎週火曜日の定期メンテナンスに引っかかってしまい、掲載が遅れてしまいました。


Massacre de Blacksburg

La victoire des porte-flingues



(つづき)
 2006年、NRAが10万人の会員を数えるモンタナまたはバージニアのいずれか一つの州で「プロ・ガン」の候補者を立てなかったら、民主党が上院で勝利することはなかっただろう。NRAが60人を超える民主党候補を支持している下院でも同じ事だ。この大転換は、コロンバインの事件から1年と少し後の、2000年の選挙戦に遡る。ゴア(当時の大統領候補)の敗北後、それでも選挙運動中はその主題に関して控えめだったが、民主党中道派は「プロ・コントロール」の極端論が民主党に害になるという考えを擁護する。それほど馬鹿げた主張ではない。歴史的に、銃器携帯を厳重に規制することを目指す攻勢には、常に世論におけるしっぺ返しが続いた。だから、中道派が言うには「議論を変え」なければならないし、銃器携帯を絶対的な悪と見なすことをやめなければならない。

 高貴な心配である。支持者を切り離さないための気遣いは結局、民主党をNRAに譲歩し、全てを支持するように仕向けることになった。市民が武器を所有する権利という前提を受け入れるとしてもなお、チョ・スンヒの経緯は重大な問題を提起している。大学の責任者が自殺傾向ありと判断し、職権で精神科の受診を要求して、そこでうつ状態と診断されていたのに、それほど精神的に障害を受けた若者が、どのようにして網の目を通り抜けたのだろうか? 半数弱の州が、重篤な精神障害の症例についての情報を、銃砲店が自由に使用できる連邦データベースに引き渡している。2002年にさかのぼる研究によると、75000の注文のうち、精神的健康状態が原因で販売を拒否されたのは、たった1人だけだった。さらに重大な問題は、それほど危険な武器の入手をなぜ許可するかということだ。というのは1980年以来、銃砲店には連続して人を殺せる恐るべき兵器であふれているからだ。チョ容疑者に使用されたグロック19やワルサーP22のような、改めて許可された攻撃用銃器、しかしセミオートマチックでもある、が販売数の4分の3を占めている。なぜチョ・スンヒは素早く再装填できる、15弾倉のついた拳銃を手に入れることができたのか?彼がそれらの銃をニューヨークかニュージャージーで手に入れようとしていたら、確実に彼のような結末には至らなかっただろう。最後の問題は、結局、なぜ市民が毎月武器を買うのを許可するのか?である。それはどんな必要性に対応し得るのだろうか?

 NRAの気に入らない考えを恐れて、民主党員はこれらの問題に控えめな覆いを引っ掛けてしまった。自らがその弊害を認める問題と闘う上で残るのは、警官の組合に支持された少数の大都市の市長だけである。サンフランシスコは武器を追放したし、ニューヨークでは、マイケル・ブルームバーグ市長が、ニューヨークの悪者に銃を提供する近隣の州の銃砲店との戦いを開始した。共和党員のブルームバーグは、大金持ちを嫌われ者にしたNRAを降伏させようとしなかった。しかし彼は、コロンバインの8年後に、何も学ばなかった政治家階級に、失われた名誉を少しだけ取り戻した。


出典:

PHILIPPE BOULET-GERCOURT

Le nouvel Observateur No.2216 26 AVRIL-3 MAI 2007



次回は、昨日分の記事に名前の出た、オハイオ州立大学の Saul Cornell ソール・コーネル氏のインタビューを引用する予定です。銃規制に反対する際の根拠として引き合いに出されるアメリカ合衆国憲法修正第2条の解釈に関する問題を語っています。


 ほとんどの先進国では、日本のように政権の座に就く者があからさまに自国の憲法を蔑ろにすることはありません、アメリカも含めて。しかし、詳細な解釈で見解の相違が出ることがあり、それを積極的に利用することはあり得るようです。さすがに、憲法の精神を根本から無視し、ひっくり返そうとすることは、日本の自称「保守」以外には稀だと思います。

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