連載小説更新しました

今日はイブイブですね。

3連休楽しんでください


ひょうまは、おきゅうへの愛に気付くのと比例してけーこへの気持ちが消えていく、そのことばかりにとらわれて、それ以前の、まだ、おきゅうへの愛も、むろん、城戸涼介が子供であることも知らない時代を忘れてしまっていた。
亡きみーなと共通項のあるけーこに一目ぼれして、半もからんで紆余曲折はあったものの、結婚した。
けーことの毎日は楽しかったし幸せだったではないか。
朝起きると愛する女が無防備に眠っている・・・それだけで安心感を得られたのも初めての感情だ。
当時は今みたいに携帯もなかったから、巨○軍一軍投手コーチとして遠征が多いひょうまと、女優だからロケなどで家をあけるけーことはすれ違いも多く、どうやって連絡を取り合うか話し合ったものだ。
ポケベルが登場したときは、若者に交じっていち早く購入したっけ。
けーこはおしゃべりでひょうまはもっぱら聞き役だったが、十分だった。
その後、ひょうまのせいで離婚、半とけーこは結婚そして再びひょうまとけーこは愛し合い、復縁・・・。
復縁への過程で、ひょうまはおきゅうと禁断の再会をして、おきゅうへの愛に気付き、さらに後日、本当の真実、おきゅうとの間に城戸涼介という子供がいることがわかってしまい、けーことはやっていけないと。
(結局は俺のせいでけーこを振り回してしまっただけなんだ、けーこは悪くない)
そもそも、けーこと結婚しなければよかった、ほんとにいまはそういう思いが湧き上がっている。
初恋の女性みーなが亡くなったとき、その亡きがらに
「俺は一生女性を愛さない!」
誓った通りに生きていれば、遅れて気づいたおきゅうへの愛に応えることができたのかも・・・いや、おきゅうが三門と結婚してるからやはりだめなのか。
少なくとも、けーこに悲しい思いをさせずに済んだことだけは確かだ。

けーこは、なにひとつ変わっていないのだから。

ひょうまの涙は止まらない。
「本当に悪かった・・・。本当に、けーこは何も悪くないんだ。俺が何も気づかずにいたのが悪かったんだ、勘弁してほしい・・・」
「何も気づかすに・・・?何に気付かなかったの?」
けーこに問われ、はっとしてひょうまは手で自身の口をふさぐ。
感傷的になりすぎて、つい口がすべってしまった。
「い・・・いや、とにかく、俺が身勝手なだけなのだ・・・。改めて言う、鼻形さんと幸せになってほしい。あきこねえさんのことも気にする必要はない。ほんとに彼女は俺ばかりだから」
ひょうまはごしごしと涙をぬぐった。
「本当のところは教えてもらえなさそうね」
「・・・確かに、亡きみーなのことだけを考えて暮らしていくべきだった・・・それは間違いない」
ひょうまはひとり深くうなずく。

結局、2人の会話はそれで終わり、各々部屋へ戻った。
ひょうまの気持ちはぐじゃぐじゃになっている。
過去のけーこへの愛も思い出してしまったから。
しかも、追い打ちをかけるように、あきこが起きてきて
「どこへ行ってたの?姉さん心配で眠れなかったわ」
軽いいびきすらかいてたのに。
「どこって、ホテルの中のどこかにいるに決まってるだろう、俺ももう寝なきゃ、明日がある」
眠れっこないんだが、あきこから逃れるためには寝るしかない。
「ひょうま、もう勝手に出歩かないでちょうだい、部屋を出るときは姉さんに言って・・・」
いい加減にしてほしい。
怒鳴れればどんなに楽か。
だが、この姉も鼻形から引き裂いてしまったのはひょうまなのだから、いくらあきこが鼻形よりひょうまといったって、けーこと鼻形がくっつかなければあきこは鼻形と暮らしていたのだから、何も言えない。
つづく