連載小説更新しました。
よろしくお願いします。
わが巨人軍だけ次期監督が決まっていません・・・が、高橋由伸さんになりそうですね。
これはつなぎでなく、長期政権にしてやりたいですね。
(もう少し早かったような気もしますが・・・)

 2つ並んだベッド、布団もおそろい。
 夫婦じゃあるまいし、きょうだいだからって、ひょうまは一緒の部屋に寝たくない。
 一緒に住むと決まってから、ひょうまは正直あきこをうっとうしいとさえ感じ始めている。
 こういうことをするから。
 大昔、まだひょうまが10代で巨○軍左腕投手時代に、サラウンマンションで2人で住んでいたときのようなあきことは、全然違ってしまっている。
(あのときは姉ちゃんと一緒で楽だった・・・)
 精神面でもという意味で。
 
 年月が過ぎ、互いに一度は家庭を持って、おそらくもう二度と一緒に生活することはないだろうというところへ、また一緒に暮らすことは、正直ちょっと気持ちにまごつきはあった。
 だが、原因をつくったのはひょうまなのだし、また、昔のように暮らすのもいいかと気持ちを持っていこうともしていたのだが、あきこは、どんどんひょうまに傾倒していて、ちょっと怖さを覚えたりする。
 
「姉ちゃん・・・いや、姉さん・・・」
「いやっ姉ちゃんでいいのよ。わざわざ言い直さないで・・・」
「姉さん」
 ひょうまはあえて言い直さず、あきこから一歩離れた。
「正直ほんとのところ、姉さんを離婚に至らしめた俺が、姉さんと一緒に暮らすことが、いくら姉さんの望みだからといって、いいことなのだろうかと思うのだが・・・」
「いいのよ。本当に、私、ひょうまと暮らすことを望んでいたのかもしれない・・・」
「え・・・!?」
 ますます後ずさりするひょうま。
 近寄るあきこ。
「あなたのことが気になって気になって・・・でも、何度もあなたに逃げられたわ・・・」
 知らない人間が見たら恋人同士の痴話げんかに思われるかもしれない。
「逃げたって・・・?」
「そうよ!一度目は巨○軍で、お父さん(故・いっかつのこと)相手にパーフェクト試合達成したのと引き換えに左腕をだめにしたとき。私、あのとき、お父さんとひょうまともう一度親子三人で暮らして、ひょうまには、野球以外の普通の人生を送れるようにしてやりたかった・・・なのに、あなたは姿を消してしまった・・・しかも5年間も!」
 ああ・・・けーこ、鼻形、あきことの離婚への4者会談のときに話していた内容だ・・・。
 ひょうまにとっては耳が痛い内容を再び繰り返される。
「鼻形さんと結婚したのだって、ひょうまが見つかったら、鼻形さんの会社で働かせてくれるっていってくれたからよ。私はあなたが消えてから一日たりともあなたのことを忘れた日はなかったわ・・・」

 確かに、あの日、完全試合を達成したあと、ひょうまは強烈な左腕の痛みに襲われ、マウンド上に崩れ落ちた。
 ひょうまは、完全試合を達成し、いっかつを乗り越えたという喜びを感じる前に、現実的な肉体の苦痛に脳が支配され、勿論、左腕崩壊については医者からも予言されていたし、わかっていたつもりだったが、それでも、崩壊の痛み、いや、今思えば、肉体もだが、心の痛みもあいまっていたのかもしれない。
 
ひょうまは、自身の左手首を凝視する。
   
 もし、左腕が崩壊することなく、完全試合を達成したとしたら・・・。
 きっと、健全に、ひょうまは、あきこやいっかつと生活をしようとしたのではないか。
 完全試合を達成し、思い通りいっかつを乗り越えた喜びを100パーセント何も邪魔されず「正しく」享受できていたら、いっかつは潔くコーチ業を引退しただろうし、もう、普通の親子に戻り、ひょうまはそのままやりたいだけ野球を続け、あきこも野球を完全に憎むところまでもいかず、ひょうまへの思いもまだ、なんとか普通の弟へのそれという域にあったかもしれない。
 つづく