連載小説更新できました。
不定期ですがよろしくお願いします。
セリーグクライマックス、わが巨人、がけっぷち!!今日も劣勢です。
勝つしかないのですが・・・応援するのみ!!


 エレベーターはガラス張りになっていて、階上にいくほどロビーがよく見渡せる。
 城戸涼介は、ひょうまがあきこからかなり離れてのろのろとあとをついていくさまを見て、大丈夫だろうかと心配になった。
 が、程なく目的の高層階に着くと、
(まあ、また、話を聞かせてもらえる機会はあるだろう)
 気持ちを再び咲に向ける。
 チェックイン可能時刻より少し早かったが、部屋の準備が整っているとのことで、キーを渡してもらえた。
 部屋に入り、鍵をかけると、城戸の心臓もにわかにドキドキしてくる。
 冬晴れの信州、広い窓から青い空、S湖がくっきり見え、咲はわー・・・と思わずといった感じで声が出て、窓の外に眼をやった。
 晴れて空気が澄んでいるので、遠くだが富士山も珍しくはっきり見える。
「私、ゆっくりS湖とか眺めたことがなくって・・・広いのねえ・・・水陸乗用車が入っていくわ・・・」
 美波とはS湖で会ってないのか・・・と余計なことをいいそうになって勿論やめた。
 城戸にとっては見慣れた風景で、咲を今すぐにでも抱きしめたいところなのだが、咲は風景込みで堪能したいのだろうと、やるに任せることに。
 こうやって2人きりでいられることだって、少し前までは考えられなかった、封印さえしていたのだから・・・。
「この冬は寒いみたいだから、S湖も完全結氷するかもしれないな・・・」
 言いながら、城戸は咲に近づく。
 お互い、年月を経ても、体型も変わっておらず、見た目もほとんど変わってないので、これで制服を着ていたら本当に高校時代にタイムスリップしそうだ。
 あのときは、城戸は施設暮らしだったし金もまったく持ってなかったから、デートはいつも咲の家だった。
 初体験も咲の部屋だった。
 咲も、いつまでも風景にみとれていたいわけではないらしい、更に城戸が近づくとしゃべりが止まった。
 黙ったまま、城戸は後ろから咲を抱きしめる。
 本当に高校時代と変わらない感触にまた感動し、もう我慢することなく、したいように身体が動く。
 咲も全く抵抗することなく、2人はしっかり抱き合った。
「・・・ずっとこうしたかった・・・でも、ありえないと思ってた・・・」
「私も・・・」
「今日はどこにも出たくない・・・」
 城戸がつぶやくと
「私もずっと一緒にいたい」
 咲もうなずいてくれた。
 一応ルームサービスをとるも、2人は食欲よりも空白の十数年間を一気に埋めようとすべく、互いを求め合った。
 少し落ち着いて外を見るともう真っ暗で、雪がちらついている。
 昼間は晴天だったが・・・。外は今かなり気温が下がっているのかもしれない。
 しかし、部屋の中は暖房が効いていて、2人は裸でいても暑いくらい。
「君のお父さんに挨拶に行かなきゃな」
「ありがとう、父も忙しくてごめんなさいね、それだけでもないかもしれないけど」
「わかってるさ、こうして2人で会うことを容認してくれてるだけでも由としないと・・・でも、早く一緒に暮らしたい」
「私も・・・。様子見てるともう少しだと思う。カウンセリングもうまくいったし」
「そうだね。焦らず待とう・・・でも・・・これはもう待てないかな・・・」
 言うと、城戸はまた咲を抱き寄せるのであった。

 対照的に、ひょうまは、新居で思い切り当惑している。
 2人で部屋を分けるはずが、寝室が設けられていてベッドが2つ並んでいるのだ。
「姉ちゃん・・・いったいこれは・・・」
「今って、別々の部屋に寝ているのでは、寝ている間に具合が悪くなったりしても気付かないんですって」
 ひょうま、絶句。      つづく