プレSEの本来のタスク、プレ活動とは少々異なりますが、

管理職なら誰でも遭遇する場面がプレSEにもやってきます。

今回はそんなお話の続きを。

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「加藤君ね、できは良かったのにな、どうしたんだろ。

 研修のことが後引いてるのかな。」


「うーん。どうですかね。」


日元アイシスの新人研修は、新人を三十人程毎にクラス分けをし、

入社から三ヶ月間集合教育で行なっていた。


この間、会社は入社数年目の先輩の中から優秀な者を選抜し、

クラスごとに全期間を受け持つ専任の担任一名と、

期間は細切れで交互に半分程度の期間を受け持つ

補助担任二名を割り当てていた。


三十名ほどの新人の最初の指導が、

主にこの三名に委ねられるということだ。


各講義はいろいろな講師が担当するが、

社会人として最初に生活指導をする先輩の

影響が大きいことは言うまでもない。


つまり、担任に選抜されるということは、

当然現場からの推薦もあるのだが、

人事のお眼鏡にも叶った将来有望な若手だということだ。


加藤は新人の頃から出来がよく、後輩の面倒見もよかった。


御厨が手放したがったわけではないが、かなり大きな組織変更があって、

当時の吉川部長が適当に人員の振り分けをしたため

御厨とは別の部署になってしまった。

新しい部署でも良くやっていたことは補助担任に選ばれたことでも判る。


しかし、ある事件があって事態は一変した。


それは、加藤に補助担任の番が回ってきて、

担当のクラスでプログラミングの基礎を教えたときのことだった。

加藤はそれまでの講義のおさらいをするつもりで簡単な質問をし、

回答に新人の一人を指名した。


彼女は、その簡単であるはずの質問に答えられなかった。


加藤は、前の講義ではやらなかったの、と聞いたが、

彼女はその講義に出られなかったと答えた。


加藤がその答えの意味することがわからず、

怪訝な顔をしていると一番前の席に座っていた新人が、

彼女、ピストルの選手です、と小声で教えてくれた。


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