プレSEの本来のタスク、プレ活動とは少々異なりますが、

管理職なら誰でも遭遇する場面がプレSEにもやってきます。

今回はそんなお話を。

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部下が一人も辞めたことのない管理職はおそらく存在しないだろう。

辞めたいと言われて、待ってましたと言うこともあるだろうし、

何とかして辞めさせたくないと思うこともあるだろう。


直属の部下でなくても退職の相談を受けることもある。


これは、御厨が課長時代に遭遇したある退職の一シーンである。


「やあ、久し振り。」


「立川課長。どうされたんですか。」


「いや、実はちょっと御厨さんに折り入って相談があってね。」


「何でしょう、ま、お座りください。」


突然、御厨の先輩である立川課長が、三番町の分室に現れた。


御厨は立川にソファを勧め、自分も席からソファに移った。


御厨は立川と一緒に仕事をしたことはないが、

組織変更前に同じ事業部だったこともあり、

部課長会議や、事業部のゴルフコンペでよく一緒になった。


しかし、今は直接の接点はない。


御厨には立川が折り入っての話の見当がつかなかった。


「いやあ、この事務所は初めてだなあ。」


「あ、そうですね。すぐ判りましたか。」


「うん。竹田君に地図貰ってね。」


「この分室もできてから、二年になりますけど、相変わらずで。」


「お茶、どうぞ。」


「あ、藤川さん、ありがとう。」

二人にお茶を出した女性は、にっこりと微笑んで下がった。


「いいね、ここは。女性がお茶を出してくれるなんて。」


「ええ、ここは庶務がいないですから。

 別にお茶だしを頼んでるわけじゃないんですけど、

 みんなで気を使ってくれてます。

 彼女らもSEですから、男でも女でも手が空いた子がやってくれます。」


「そうだよね。でも、僕んとこは男ばっかりだからね。」


「ところで、折り入ってのお話っていったいなんですか。」


「おお、そうそう。君のところにいた加藤君て知ってるよね。」


「知ってるも何も、加藤俊文ですよね。私の新人でしたから。

 今、課長のところですよね。」


「うん、その加藤君がね、辞めたいって事で相談があってね。」


「えっ、初耳ですけど。」


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