国税庁の内部は今も同じかな。


プレSEの本領発揮。

すでにこの時点で官僚とプレSEの駆け引きが始まっている。


***


四階の廊下を入り口方向に戻るように進むと倉林は、

三人を制して事務室の中に入っていった。

倉林は深見の席の近くまで行き、小声で声をかけた。


深見は、ドアのほうを見て、一瞬驚きの表情を浮かべたが、

手早く三冊ほどのファイルを抱えて立ち上がった。


「いや、倉林さんともう一人かな、と思っていたので。

こんなに大勢こられるんだったら会議室取っといたんだけど。」


「すみません、大勢で押しかけまして。」

尾藤が部屋を覗き込んで言った。

「いやいや、それはこっちのことで。」
 廊下へ出て、北側の通路沿いにある会議室へ向かう。


 深見が、会議室のドアを開けるとそこでは打ち合わせが行われていた。


「あ。すみません。使ってました? 」

深見はドアを閉めると倉林のほうを見た。


「うーん。どうしようかな、二人くらいなら席でお話しようかと思ってたんで。」


「すみません。人数を言っとけばよかったですね。」


「いやいや。そうだ、あそこへ行きましょう。」


 深見を含めた五人は、庁舎の五階にある喫茶室へ向かった。


「すいませーん。五人。ここ、いいですか。」

深見が奥のカウンターのほうにいる店員に声を掛ける。


「どうぞー。」


 一同は喫茶室の入り口をちょっと入った低いテーブルの周りに腰を掛けた。


 深見は持参したファイルをテーブルに置きながらアイスコーヒーを注文した。


「じゃあ、私も。」

続く尾藤の言葉に、結局、全員が同じものを注文した。


ファイルの置かれた狭いテーブルに人数分のアイスコーヒーを置く余裕はなく、

尾藤は、グラスを手に持ち、やや椅子を後ろに引いて挨拶を始めた。


「いつもお世話になっています。

私、倉林の上で課長をやっております尾藤と言います。

きょうは大勢で押しかけましてすみませんでした。」


「ところで。」

御厨は尾藤の話をさえぎるように切り出したが、さらに倉林が割って入る。


「お電話でお話したように、

新しいお話が聞かせていただけるということで、

きょうは設計も連れてきましたので、宜しくお願いします。」

 

***


全文は「プレSE奔走す」


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