宮古追跡大作戦!⑥ | ザ・ハングタン+

ザ・ハングタン+

「ザ・ハングタン」とは法で裁けぬ盛岡の鬼を退治する乙女たち。
この物語はそんな乙女たちの戦いのドラマである。
(現在「いわてマル秘指令ザ・新選組」アーカイブも公開中)

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夏子の軽自動車は浄土ヶ浜の駐車場に到着した。
「さてと、ここで俊彦さんと待ち合わせね」
俊彦は夏子たちが来たことを確認、そして夏子に向かって手を振った。
「おおい」
「あっ、俊彦さん」
生徒たちは俊彦を見てすぐに駆け寄った。
「俊彦さん」
「今日はまた豪華だね」
そう言って俊彦は観光ツアー客にまぎれるように観光船乗り場へ向かった。

正月は観光船陸中丸は元日午前の初日の出運行以外定期便ではない。冬なので客がいないというのだろう。
しかし、この日は俊彦の友人である木下信也がベガルタ仙台サポーターの仲間11人と新春みちのくツアーをやるということで、予約運行が決まっていたのだ。
「おお、パラパラ」
パラパラとは仙台でサッカー観戦するときの俊彦のあだ名だ。
「でも急に岩手だなんて、どういう風の吹き回しだよ」
木下信也とは仙台にJをつくるムーブメントが起きてからずっとの縁、つまり15年の付き合いである。
「去年はとうとう来なかったな」
「…ユースは見ましたが」
「今年は見に来るだろ?高木のユニ着て」
高木のユニと言うのは俊彦のコレクションにあるサンフレッチェ広島の初代ユニフォームのことだ。このユニフォームのときに広島はJリーグ前期優勝を成し遂げている。
「土曜日なら行きたいけどな」
「土曜か。それじゃいいけどな、できれば89ersやってるうちに」
俊彦と木下は会話しながら陸中丸に乗り込んだ。それを夏子たちも追いかけた。
「よし、これで大丈夫ね」
陸中丸は出発した。

俊彦は生徒たちを連れて2階のデッキへ向かった。
「さぁ、浄土ヶ浜の島だよ」
すると理恵子がはしゃぐ。
「見て見て~、かもめがいっぱい」
俊彦は理恵子がかもめと言ったので訂正を求めた。
「あれはかもめじゃない、うみねこだよ」
うみねこと聞いて理恵子は思わず猫の真似をした。
「にゃあ」
栞とさくらは引いてしまった。
「あの、そんなんじゃなくって」
「確かにかもめかもね」
俊彦はうみねこが接近するのを確かめ、うみねこパンをちぎった。このうみねこパンは船内で売られているものであり、これをうみねこに食べさせる。
「さぁさぁ、こっちだよ」
そう言って俊彦はちぎったうみねこパンを両手に持ってうみねこたちを誘う。それを見たハングタンたちもうみねこパンで遊んだ。
「うみねこさん、あたしを食べてぇ」
理恵子は海にパンを放り投げた。栞は俊彦同様両手にちぎったパンを持っていた。それをさくらは写真に収めていた。
しかし理恵子があまりにうみねこパンを粗末にするので、さくらが理恵子のパンを取り上げた。
「ちょっと」
理恵子はさくらからパンを取り返そうとするが、さくらはパンを丸ごと空に向かって投げてしまった。
「あっ」
理恵子は唖然とした。
「パンを海に投げるからよ」
さくらが投げたパンにはうみねこたちがこぞって集まった。

陸中丸は浄土ヶ浜を1周40分。その間に今井は田老からバスに乗り鍬ヶ崎を目指していた。
(浄土ヶ浜か)

さて、盛岡でお留守番のさりと直哉のもとに繁治がやってきた。
「さりちゃん」
「あ、国分さん。どうして」
繁治は重い荷物を抱えていた。それは福本に関する資料だった。
「福本誠治、6年前に大井で凶器準備集合罪、暴行罪で逮捕された」
繁治の説明にさりはおののく。直哉は福本の首筋にほくろがあるのを見てはっとなった。
「こ、こいつだ。間違いない」
「ええっ?」
繁治はこれでつながったと言う。実は学園の職員組合が夏子と俊彦に嫌がらせをしていると言うのだ。
「あの二人、非常勤の分際で正職員の倍の給料だって」
このご時世である、そんなことがまかり通れば不平不満がたまるのは必然だ。
「じゃあ福本さんと職員組合の関係は?」
「ああ、実は…」
繁治はさりに耳打ちした。
「ええっ?横領」
「事実上そうなる」
職員組合の書記である石森が福本を雇うために組合費を要求してきたと言う。
きっかけは東京で石森が福本と偶然出会ったことから始まる。私学職員組合の全国集会のとき、福本が石森の愚痴を聞いた。そこで福本は原俊彦のことを知ったのだろう。そして石森が盛岡学園の人物だと知って、盛岡学園に取り入ったわけだ。
「それで?」
石森は再三組合の費用と称して使途不明金を流用していた。
「そのことをハングタンに知られたくない、だったら消そうと」
直哉は自分がハングタンの始末のために犠牲になったことが悔しかった。
「お願いします、僕も宮古まで行かせてください」
さりも同調し、繁治に土下座した。
「もし福本さんが宮古に来てるなら、みんなが」
「確かに危ないな。急ごう」
繁治は吉村浩一の運転するツーリングワゴンにさりと直哉を乗せた。
「ベルト締めたな?んじゃ、行くぞ」
そう言って浩一たちも宮古に向かう。

福本は浄土ヶ浜ターミナルの公衆電話から石森にかけていた。
「あ、石森さん。俺です」
「どうしたのかね」
「原俊彦は現れません。まさか俺のことを知って盛岡に逃げた…」
石森は強い口調で言う。
「そんなはずはない。ハングタンとあいつはつながっている」
すると福本は軽い口調で言う。
「そんなこと言うなら、あなた自身で探ってください」
「な、何を言うんだ」
「今夜宮古駅前の料亭で落ち合いましょう。話はそこで」
「わかった」
石森は焦りを隠しながら盛岡学園を飛び出した。そしてタクシーで盛岡駅へ。
(ハングタンを始末できなかったときは、あいつにも)
ホームで石森は携帯電話をかけた。相手はわからないが、今回のことで彼の味方になってくれる連中のリーダーとだけ言っておこう。
「お願いしますよ」
ちょうど山田線の快速リアス号が発車するところだった。石森はあわてて乗り込んだ。