日本の分岐点「警告」 -429ページ目

東南アジアの某国 2

クルト・イプセン署長は管轄の調査官に順次連絡を入れていった。
広い管轄区域に35名の調査官しかいないので、支部に顔を出せる調査官は限られている。
所長以外の34名が17組で調査活動をしている。


ウー・ペートゥィンとコ・ソーナインは管轄の警察署を回り情報を集めることから始めた。


ショリマン警察署のミン・ターヤー署長に会いに署長室を訪れた。
ウー・ペートゥィン「署長おはようございます。」
コ・ソーナイン「おはようございます。署長」
署長「やあー、おはよう。今日は早くから、何かあったのかね。」
コ・ソーナイン「今朝テレビでデモのニュースを見て、署長なら何かをご存知かと思い伺いました。」
署長「今朝のデモは数十人の僧侶がしたデモで、たいした騒ぎにもならなかったようだ。」
コ・ソーナイン「この署の管轄内でもデモの発生する可能性がありますが、警察としての対応方法はどうする事になっていますか。」
署長「警察の仕事は民衆の安全を守る事で、デモをする人をできるだけ守ろうとは思うが、軍部が介入すれば警察に力ではどうにもならない。」
ウー・ペートゥィン「世界警察機構としても方針は署長と同じなので、可能な限り協力していきたいと思いますが。」
署長「軍部の横暴には警察官すべてが怒りを感じていると思うが装備が違うので力になれない、しかしできる限り協力しましょう。」
ウー・ペートゥィン「署長、お願いします。」


ウー・ペートゥィンとコ・ソーナインは署長室を出て地域課を覗いた。
地域課が庶民と直接接するので細かな情報も知っている。
情報を仕入れるには地域課と仲良くする事が欠かせない。
地域課での雑談の中に多くの情報が埋もれている。


どこの国でも同じように、この国でも警察と軍隊の仲は良くなく、権力を掌握する軍隊に警察はいつも軽んじられていた。


インセイン警察署、ミンガタダウン警察署、テワインゲイ警察署、ジンガングン警察署と回った。
普段の活動として警察の応援をしている事もあり、警察での情報収集は容易にできそうだ。


この国では、デモで先頭を行進するのは国民の90%以上が信仰する仏教の僧侶だ。


ウー・ペートゥィンとコ・ソーナインは警察署の次に寺院に目をつけた。
管轄内の多くの僧侶がいる寺院を回って情報を収集することにする。


いくつかの寺院で情報を集めたがさしたる情報法が得られない。
二人はタウングー寺院にやってきた。


寺院の庵にいる僧侶に話を聞いている時に、僧侶を尋ねて一人の女性が庵を訪れた。
二人が僧侶から話を聞き終わり、少し離れた所で次の訪問する寺院を相談していると、僧侶と女性の話が耳に入った。


女性「今日のデモは何事も無く終わって良かったですね。」
僧侶「ありがとう、少人数だったので警察も周囲で見ているだけでした。」
女性「この後の予定では、デモはどうして行くつもりですか?」
僧侶「デモの規模を大きくして民衆の参加を促していく予定です。」
女性「そのようにツーカヒ・イースーに伝えます。」


二人が話している所にウー・ペートゥィンが口を挟んだ。


ウー・ペートゥィン「聞く気は無かったのですが聞こえてしまったので申し訳ありません。」
コ・ソーナイン「少しお話を聞かせていただけませんか。」


二人は世界警察機構の身分証明書を提示した。
世界警察機構を僧侶と女性は知らないようなので二人に説明した。


警察と名が付いているので二人の疑いが晴れないようなので、明日に世界警察機構の支部にきてもらう事にした。
支部で世界警察機構の内容を説明し、納得してもらってから情報を聞こうと考えていた。


ツーカヒ・イースーはこの国の独立戦争の英雄ツーカヒ将軍の曾孫に当たり、民主化のシンボルとなったツーカヒ・ヨナの孫に当たる。


二人は寺院を出て次の寺院に向かった。