3月20日深夜に更新されたasahi.comの茨城版。それによるとヤマトと佐川は茨城県全域で集荷配送を復旧している。全国規模で宅配業務を行っている事業者としては「ゆうパック」のみが引き受け停止中と言う状況です。
「茨城ライフライン情報20日—4 郵便・支援物資など
」
ゆうパックが集荷、配送を復旧できない原因に「遠距離通勤者が社員に多い」と言うことが挙げられるのではないだろうか? 私は通勤距離(片道)50km超であるが、この距離をクルマ通勤すると車種にもよるが「4~6往復」ということになる。しかも、それは高速道路を使った場合の話でもある。
同じ水戸市内から通う同僚で、エスティマに乗っている人がいるのだが、「満タンにして(高速使っても)4往復しか出来無い」と言っていた。私のクルマも、高速を使った場合で5往復するとガス欠になる。
現状、茨城ではガソリン、軽油の入手には時間も労力もかかる。さらに、レギュラーガソリンでもリッターあたり150円ほどする。中東情勢も不安定であるし、燃料価格高騰は避けられないだろう。そうなれば、震災前から車通勤している社員の通勤も困難になってくる。もしそうなれば、現状で配達できている手紙、ハガキの配達もできなくなり、まさしく「郵便が届かなくなる日」がきてしまうだろう。
もはや、社員の配置換えを早急に行い、通勤距離を平均で10km程度に抑えないと事業の存続のための人員確保も困難になってしまう。
この震災で、鉄道通勤していた社員は通勤するのに困難を極めている。しかし、心無い管理者の中には無謀としか言えないような通勤ルートを提示してくる者もいる。実際に提示された例を挙げてみよう。それが以下のルートだ。
・水戸駅→「上野行高速バス」→上野駅→「常磐線普通列車」→常磐線◯◯駅→徒歩→支店
さて、理屈上は可能なルートです。ただし、それは「JRのみが非常事態に陥っている」場合の話であって、今回のようにバス会社もギリギリで運行している場合は不可能なのです。何故に不可能かというと、高速バス自体が「満席打ち止め」の運行をしているからです。通常、高速バスは乗車定員を超える乗客がいる場合、バスを増車します。ただし、これは平常時は多くの人達が鉄道を使うために2台程度の運行で間に合うためです。
しかし、今回は事情が異なります。もし、「乗車定員を超えた場合は増車します」とアナウンスしたなら、バスも人員もいくらあっても足りない状況に陥ります。何しろ鉄道は動いていません(と言うか、動かせません)
しかも土浦以北の全線でです。そうなれば、水戸駅始発と言っても、従来は鉄道利用していた人たちの殆どが高速バスに群がることになります。
Twitterでも「JRはなぜバス代行をやらないのか」と言う声が上がっていますが、「やらない」のではなく「出来無い」のです。
かつて、常磐線羽鳥駅構内踏切で、進入禁止にもかかわらず進入して特急列車と事故を起こしたトレーラーがありましたが、このときは復旧するまでバス代行でしのいでいます。しかし、このときは「使えないのは岩間-石岡駅間」であって、代行する距離も期間も短かったのです。この時は、幾駅もの区間に渡って線路が歪んだり、陥没や隆起したりしませんでしたし、駅舎も被害を受けていません。
しかし今回は違います。被害の範囲が幾駅かどころでなく、いくつもの県にまたがっているのです。総延長、数百キロに渡る範囲で鉄道が不通。しかも復旧の見込みなし、となれば鉄道の基本である「各駅停車運行」をバス代行で行うことは不可能です。鉄道は、1編成の車両でバス1台の10数倍以上もの人員を輸送できます。同じことをバス代行運転に求めることは不可能なのです。
それなら「自分のクルマで」となるわけですが、これにも落とし穴があります。普段、クルマで通勤しない人は給油頻度が低い訳です。しかし、クルマで通勤する必要があれば給油頻度が高くなる。分散していた給油タイミングが密になってくる訳で、結果的にスタンド行列が発生することになります。
しかも、普段は稼動していなかったクルマが稼動し始めることで通勤時間帯のクルマの台数が増える。道路のキャパシティは変わらないので、増えた分だけ渋滞原因も増えてしまうのです。
これらの要因が複雑にからみ合って、比較的被害の少ない地域でも復旧させることができないでいるのが現状のゆうパックだと言える。だが、最大の原因は「遠距離通勤の社員の多さ」であると私は考えている。これを改善できない限り、郵政は同じ轍を再び踏むことになると言えるだろう。
個人的に思うことだが、いっそのこと暫定的に「一般車両向けガソリン、軽油は現在の価格の倍」と言う事にしたほうが良いのではないか? そして、復興事業、物流事業、公共交通関連企業の事業用車両に関してのみ現在の価格で燃料を販売するのだ。燃料価格が倍になれば誰もクルマで移動しようとは思わない。災害復旧や救助に関わる車両の燃料も確保しやすくなる。インフラを担う企業の車両も燃料確保しやすくなれば、被災地に届く物資も増えてくると思う。
昔は、クルマなんてぜいたく品だった。一部の金持ちか、仕事上必要があって業務用に持つものだった。復興するまで不自由かもしれないが、そのくらいの覚悟でいかないといけないのでは無いだろうか。