前回に続き、医師の井本岳秋さんが陸上競技選手の試合に帯同して、ランナーのコンディショニングを考察した論文から気になった所のまとめと一部を抜粋します。

 



マラソンをしている方には参考になる内容があると思います。

◎カップリング療法(俗称:吸玉「すいだま」)は血液を捨てているのと同じで何のメリットもない。

◎アフリカ勢ランナーは上腕を中心に腕振りは肘の角度は90°より開くことはない。

◎日本人はアフリカ勢ランナーのようなフォームで走る選手は少なく、肩甲骨の可動域の制限と肩の柔軟性の欠如にある。

◎カーボローディングには「周期性四肢麻痺症候群」(俗称「大福餅症候群」)という落とし穴がある。

◎周期性四肢麻痺症候群は肩こり、四肢の可動域制限、深呼吸ができないなどの症状が出る。

◎カーボローディングを習慣化すると多くのリスクがあるため、レース前の過度の糖質摂取は避けたい。

以下、一部抜粋

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カップリング療法について、、、

・理論を選手たちに尋ねると「皮下出血を起こすと造血因子を刺激し赤血球を増やす効果が期待できる」と,いかにもevidence.baseが存在するかのような噂が流れていた。

この手法を支持するevidenceは皆無である。赤血球の寿命は90~120日くらいあるにもかかわらず,幼弱な赤血球も古い赤血球も同時に皮下出血を繰り返した。

・あとに起こる「出血性貧血」を早期に発症させるために行っている行為である。つまり,血液を捨てているのと同じである。

アフリカ勢ランナーのフォームについて、、、

・肘を後方に引いたときの上腕(二の腕)が肩関節を中心に振り子運動をしている。しかも,肘がどの位置にあっても「握り拳」(もしくは手のひら)が肘より下がらないというより,常に胸の前に手があるのが分かる。

・彼らの肩甲骨は胴体から離れたような位置にあるため,腕振りの衝撃が体幹部に伝わりにくいような緩衝能力を持っており,柔軟性に富んでいると思われる。

・日本ではトップランナーでさえも肩甲骨の可動域は小さくみえるし,腕を後方に振ると肘が伸びてしまう。また肘を後方に引いた方の体幹上部は同側の下肢と正反対に捩れるため,推進力を失うようなランニングフォームになり,タイムをロスしているのではないかと考えている。 

・日常生活で,意識的に肩甲骨を動かしストレッチ運動に取り組むことは,走りの基本と思われる。

カーボローディングの落とし穴について、、、

「周期性四肢麻痺症候群」,俗称「大福餅症候群」との関わりが懸念されるので報告する。この症状は,大福餅あるいは大量の砂糖を含むお菓子やケーキ類など,甘味の強いものを食べた後にみられる症状で,高カリウム血症を呈する患者にインスリンとブドウ糖の同時投与がおこなわれているのと同じである。

理論は

①カーボローディングによって,血糖値が上昇するのに比例してインスリンが分泌される。

②インスリンはカリウムイオン(K+)の移動をともなって毛細血管から筋肉や組織に移動する。

③その結果,低K+血症を招き,骨格筋(横隔膜を含む)の収縮力が低下し硬直する。いわゆる周期性四肢麻痺症候群である。自覚症状は,肩こり,四肢の可動域制限,深呼吸ができないなどである。

④さらに進行すると,心筋の収縮力も減弱し不整脈を誘発する。

男:女比は20:1といわれ,男性に多発する傾向を示す。

⑥発作の誘因は,前記の糖質過食,甘味料の摂取のほかに,飲酒,過労,運動後休息,過剰睡眠,寒冷,糖負荷試験などである。

⑦以上の臨床所見からカーボローディングを習慣とするランナーは日常生活に多くのリスクがある

⑧予防と治療法は,レース前の過度の糖質摂取を避けること。また,バナナやリンゴ,みかん,季節野菜などカリウムを多く含む食品と一緒に摂るか,カリウム製剤の内服が有効である。

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【コメント】

カップリングは確か東洋医学だったと思いますが、私も首が回らないなど座骨神経痛が重症のときは、これまで鍼灸院で鍼、電気治療に加えてカップリングをしてもらってきました。それにより、確実に良くなっていたので効果大と思っていました。かつて競泳で活躍したイアン・ソープ選手がカップリングの跡があったのを見たことがあったので、一流選手にも支持されているのだなと思っていましたが、井本医師によれば、効果がある証拠はないとのことで何か複雑な感じです。今後はどうしようかと悩みます。

日本人とアフリカ人とではそもそもの体形が違いすぎますが、それによりランニング時の肩甲骨の可動域も影響があるということでしょう。肩甲骨の可動域が推進力につながっているようなので、今後も肩甲骨周りのストレッチは継続していかないといけないなと改めて思いました。

「周期性四肢麻痺症候群」(俗称「大福餅症候群」)というものが存在するとは全く知りませんでした。カーボローディングの大きな代償であり、落とし穴といえるでしょう。フルマラソンに備えてカーボローディングをしている方は気を付けたいところです。私はカーボローディングをしなくなってだいぶ経ちますが、これを知ってやらなくなってよかったなと思いました。

おわり