ドイツ人とドレスデン爆撃とチャーチル

前の記事(最近の「チャーチル問題」とは、何か)で紹介した「チャーチルの再評価が始まっているぽい件」は、実は、インドだけの話ではなかったらしい。
いつも行っているサイト(PRC)で、それについてのスレッドを立てたのだが、そこで、ある人から、耳寄りな話を聞いた。
なお、そのスレッドについては、詳しく紹介しきれないので、またそのうち。
If Truman is a mass murderer as well when Churchill is? · POLITICAL RHETORIC BUSTERS · Disqus
私はこのスレで、「チャーチルが大量虐殺者なら、トルーマンだって、そうじゃないの」と、聞いてみたのである。
チャーチルが、数百万のインド人を餓死に追い込んだことで、大量虐殺者だと呼ばれるならば、日本の非戦闘員を狙って、頭上に原爆を落としたトルーマンなどは、そうに決まってるじゃん、と。
すると、こういうコメントがついた。
Dude1244
Funny thing I am in Dresden DR today, and they do have a viewpoint on this subject.

面白いね、私は今日、ドレスデンDRに行ったのだが、彼らは、この件について、同じような視点を持っていたよ。
この人は、たぶん、アメリカ人なのだろうが、ドイツ系サイトに行っていたらしい。
そしたら、「チャーチルが大量虐殺者な件」について、ドイツ人たちも、ざわめいていた、ということのようである。
私は、「ドイツ人たちは、なんて言ってたの?」と、聞いてみた。
そしたら、以下のような答えが。
Dude1244 > Michiko
They feel it was strictly for revenge for Coventry and London. The bombing occured Feb of 45 and the war ended in May, there was no reason for the bombing. They understand the concept of revenge, but feelings about the bombings is still palpable.

彼らは、(ドレスデン爆撃)が、純粋にコベントリーとロンドン爆撃への報復だと、感じている。
(ドレスデン)爆撃は、2月(45たぶん打ち間違い)に起こった、そして戦争は、5月に終わった、爆撃をする理由は、なかった。
彼らは、リベンジというコンセプトの意味は理解している、しかし、ドレスデン爆撃への感情は、明白だ。
ドレスデン爆撃とは。
ドレスデン爆撃 - Wikipedia
ドレスデン爆撃(ドレスデンばくげき、英: Bombing of Dresden、独: Luftangriffe auf Dresden)は、第二次世界大戦終盤の1945年2月13日から15日にかけて連合国軍(イギリス空軍およびアメリカ陸軍航空軍)によって行われた、ドイツ東部の都市、ドレスデンへの無差別爆撃。4度におよぶ空襲にのべ1300機の重爆撃機が参加し、合計3900トンの爆弾が投下された。この爆撃によりドレスデンの街の85%が破壊され、2万5000人とも15万人とも言われる一般市民が死亡した。
連合軍は、ドイツには、原爆は落とさなかったけれど、必要もないのに、報復の無差別爆撃をして、非戦闘員も関係なく、殺していた。
「必要がなかったかどうか」ということになると、原爆と同じように、また、いろいろ言うんだから、どうにもならんのだろう。
そのことについて、ドイツ人は、恨みには思っているけれど、敗戦国で、ずっと罪の意識を感じさせられているから、表立っては、言えない。
どうやら、そういうことのようである。
そういえば、ソ連軍がベルリンに入ったあとは、女性の暴行なんかも、けっこうあったと、言われているけれども、表向きには、問題視されたことは、ないのでは。
ベルリンの戦い - Wikipedia
ソ連兵たちは、日本の一般人を朝鮮半島北部で勾留して、虐待・暴行をしたということは、事実だけれども、ドイツでも、無茶苦茶をやってたんである。
戦勝国だから、裁かれていない、というだけの話。
そういう意味では、アメリカと同じ。
カティンの森事件」みたいなものは、あまりにも残虐で、そして、相手がポーランドだったということから、認めざるを得なかったとか、プーチンが追悼に行かねばならなかった。
が、相手がドイツとか日本なら、認める必要も、謝る必要もない。
そういうことだろう。

ソ連兵が暴れた理由

ひとつ言えば、ソ連というのは、第二次世界大戦での死傷者の数が、ものすごく多かった。
第二次世界大戦の犠牲者 - Wikipedia
そして、ヒトラーと一番よく戦ったのは、ソ連軍である。
例えば、「スターリングラード」(原題はEnemy at the Gates)という映画がある。
Enemy at the Gates (2001) - IMDb
主人公のソ連兵スナイパーを演じたのは、イギリス人美男俳優のジュード・ロー

A hero never chooses his destiny. His destiny chooses him.

Enemy at the Gatesさんの投稿 2014年4月3日木曜日
これは、スターリングラードで第三帝国を迎え撃つソ連兵の死闘を描いている。
監督は、フランス人(ジャン=ジャック・アノー)である。
ともかく、ソ連兵たちが、ドイツ人や日本人相手に滅茶苦茶をしたのは、そういう事情もあっただろう。
ファシズムとの戦いのために、それだけの犠牲を払ってきたんだ、と。
しかし、いくらしんどい思いをして、相手を打ち負かしたとしても、一般人相手に、乱暴をすることが、許されるわけはない。
本来ならば、ロシア人たちも、自分たちの祖父の世代の「罪」に、向き合うべき時期なのである。

「時間経過」と「ネットという新しいツール」が可能とした「偉人の再評価」

そして、ドイツ人も、やっぱり、「必要もないのに、仕返しで無差別攻撃をされて、一般人まで殺された」と思い、チャーチルを、恨んでいるらしい、でも、あんまり言えないらしい、ということが、わかった。
戦後、70年以上たって、そして、SNSというシロモノの偶然の力によって、やっと、「アメリカの宇宙飛行士が、偶然、一般人にリプを返し、謝ったことによって、チャーチルの再評価が始まったかもしれない」という、事態となった。
もちろん、「火消し勢力」も、強力であるから、「こういう動き」は、このまま消えていく可能性も、ある。

「仕方がない」では、済まない

原爆投下は、(重慶爆撃の報復だから)仕方がないと言った人(昭和天皇)がいるが、そういうものでは、ないだろう。
自分や自分の身内が、死傷していない人が、平然と、そういうことを言うとか、信じられない話であるが。
というか、自分が責任者だったのだから、最低でも、その責任を取ってから、言ってもらいたい。
この人、この時点で、正気だったのかな、という気もするし、誰かが言っていたように、敗戦後は、生き延びるために、ひたすら、バカを装っていたのかもしれないし、わからないが。

とにかく、チャーチルまで来たら、次は、ぜひ、トルーマンの再評価に、に行ってもらいたいものであるが…。