「チャーチル問題」とは、何か

最近の「チャーチル問題」とは、何かというと、「NASAの宇宙飛行士がチャーチルの言葉を引用したら、チャーチルは大量虐殺者だという抗議があって、宇宙飛行士は謝罪した」という、それである。
宇宙飛行士のケリーは、“in victory, magnanimity.”と引用した。
なんだろ、意味合いは、「勝者は、勝ったら寛容になるべき」とかかな。
抗議をしたのは、インド人ということで、第二次世界大戦中のチャーチルの行いが、数百万のインド人を死に至らしめた、チャーチルは、インド人を動物扱いしていた、ということである。

宇宙飛行士は、ひるんで、このように答えたという。
Did not mean to offend by quoting Churchill. My apologies. I will go and educate myself further on his atrocities, racist views which I do not support. My point was we need to come together as one nation. We are all Americans. That should transcend partisan politics.
チャーチルを引用することで、バカにするつもりはなかったんだ。悪かったよ。
私は、チャーチルの残虐行為について、勉強することにするよ、差別的な歴史観は、私は支持しない。
私が言いたかったのは、われわれは、国として、まとまるべきだということだ。
われわれはみんな、アメリカ人だ。
それが、党派政治を超えるべきなのである。
これに対し、ユダヤ系アメリカ人から、異論が。
ネット荒らしに屈するな、と。

さらに別の女性が(学者さんで、公式アカ)
チャーチルも人間だから、完璧ではないけど、偉大だったことには、変わりない。
自由と民主主義に貢献したことは間違いない、と。
…「人間だから、完璧ではない」「だから、インド人を大量に殺していても、そんなに気にすることはない」というなら、もしかして、ヒトラーだって、OKになるんじゃね?
こういう言い方は、非常に、欺瞞的だと思うんだよね。

そうやって、まあ、よくわからないことになっている。
そもそも、有名人は、発信だけにするべきで、SNSとか、まともにやらないほうがいいと、思うのだが。

チャーチル問題でしらけてしまう理由

ともかく、こうやって、アメリカ人やインド人が、あれこれ言っているのを、私は、非常にしらけた目で、見てしまう。
どうしてかというと、チャーチルがどうのというならば、トルーマンは、どうなんだよ、と。
トルーマンというのは、アメリカでは、非常に尊敬されているのである。
トルーマンの言葉とかは、普通に引用されているし、ドラマとかでも、「尊敬している人トルーマン」とか言って、アゲられている。
ちょっと探せば、すぐ、こういうの(トルーマンアゲ)が、出て来るよ↓
自分の名前のついた戦艦まである。
が、こっちにしてみたら、トルーマンというのは、恨んでも恨み切れない相手であって、戦争犯罪者で、大量虐殺犯で、たぶん人種差別が全開の、サイコパス、である。
が、あっちの人たちの間では、トルーマン「の悪事」というのは、まったく問題にされない。

「どう思っているのか」について、まったく答えない

以前に、あるアメリカのフォーラムで、トルーマンの言葉を引用してアゲている記事があったから、耐えきれずに、文句を言ったことがある。
アイツは、大量虐殺犯で、戦争犯罪者だ、アゲるのをやめろ、戦艦の名前を、ひっぱがせと、主張したのだ。
そしたら、まったく相手にされず、荒らし扱いされて、逆に叩かれて、追い出されただけだった。
以前からの知り合いの投稿者(リベラル系アメリカ人)も、いたけど、「このサイトに居たいなら、(トルーマンを叩くのは)もうやめろ」と、言われただけ。その人とは、それ以降、没交渉になったけど。
だいたいその記事というのは、「アメリカの正しい歴史を教える」という、そういう主旨の記事だったのである。
そして、開拓時代の残虐行為なり、黒人奴隷の歴史については、「白人に都合のいい歴史」ではなく、事実を教えようとしているという、ことだった。
が、トルーマンについては、まったく、問題を感じないらしい。
その記事を書いた人は、私のアラ探しをし、さんざんバカにして、長文のリプを寄越してきたが、いくら追及しても、「トルーマンの原爆投下について、どう思っているのか」についての答えは、まったく、一言も、もらえなかったのが、今でも、残念である。

日系アメリカ人の事情と無力さ

本当は、「トルーマンの再評価=名誉剥奪」というものは、日系アメリカ人が、率先して、やってくれるべきだと、思うのである。
この問題について、発言権を持てるのは、アメリカの有権者だけだから、である。
アメリカは、外圧には、絶対に屈しない。
が、日系アメリカ人というのは、いろいろ事情があって、そういうことには、ならないのである。
いまだに、「原爆投下を正当化するような歴史授業」を、やめさせることも、できないし、やめさせたいとも、思っていないようである。
日系アメリカ人の事情とは…まあ、長くなるから、ここでは、書かないが。

日本人なら、殺してもいいのか

だから、「チャーチルがどうの」と言って、もめているのを見ても、しらけてしまうのである。
なんだかな、と。
インド人を殺したことはいけなくて、日本人ならいいのか。
日本人は、悪いことをしたから、殺されて当然だと言ったって、悪いことをしたのは、非戦闘員や、女子供ではないよ。
どうして、戦闘員がしたことの仕返しでもって、非戦闘員が殺されて当然だということに、なるのか、私はそれは、いつも、理解できない。
やっぱ、私たちって、人間以下だと、思われているのかな。
なにか非常に、わびしい気持ちになるのだった。