ヴァイオリンのペグ |  なんとなくクラシテル

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獣医の日常。ほほそれだけ。

 昔読んだ、武満徹さんと小澤征爾さんとの対談集、ずばり「音楽」というタイトルでしたけど、この中で、「バイオリンって凄くプリミティブでしょ。木の箱に羊の腸張って、馬の尻尾の毛でこすって音を出す、んだから」的な話が出てましたね。その通り。

 

 でもねー、もうさ、プリミティブに固執する必要性なんかないんじゃないの?とはかねがね感じてる。

 

 非常に重大案件なのが弓。原料の木を枯渇させたのは、結局、その件についてなんも考えないで無計画に伐採しまくった楽器職人と欲しい欲しいって言った演奏家が悪い。きちんと植樹して、枯渇しないよう、大切にしてればよかったのに。

 個人的には、もう、弓なんかカーボンボウで沢山だ、と思ってるんですけどね。

 

 で、楽器の話。特に初心者の時に、まずつまづくのが、「調弦」。バカげてますよね。練習以前じゃないか~~~。うまく合わせられない、理由は、木のペグにある。木のペグは、湿度等々の影響を簡単に受けて、めっちゃ回しにくくなったり、逆に簡単に巻き戻ったりしてしまう。ギターやマンドリンのペグは金属のギアだから、楽勝。というか、楽勝じゃないと、例えばアマチュアオーケストラなんかだと、チューニングだけで30分かかってしまう可能性すらある。時間のムダ。

 

 これを解決する方法が「アジャスター」という部品で、これをペグの反対側に付けて、それで調弦しましょう。できないんだよ~~。その理由、アジャスターは、あくまで微調整のための部品で、大きな変更ができないから。今日は湿気てる、調弦しようとしたら、ラがソ位まで下がってる、なんていう場合にアジャスターは使い物にならない。

 

 なんとかならんのか、と思ってて、そのうち、左手首を骨折してしまった。骨折数か月後にようやく再開できたのだが、もう、ペグを押し込む力がない。痛くって。どうしたもんか?で、見つけたのがこれ。

 

 
 

 

 ペグの中にギアが内蔵されてて、調弦に力が全く必要ない。丁度イタリアから帰国中だった、楽器職人の友人に頼んで、交換してもらった。ペグはフィッティングが重要で、これをシロート仕事でやると、下手するとペグ穴が割れてしまう。プロに頼むのが大切。

 

 ヴァイオリンのセンセは最初は懐疑的だったですけどね。ギアということは、微調整ができないのでは?って。そんな事あるもんか、あり得ないよ、と一蹴。その通りでした。微調整ができなかったら、ギターのペグだって木製になってるはずだもの。

 

 これに変えてからもう数年経過するけど、すこぶる調子がいいまま。楽器職人の友人曰く「最初はためらってても、このペグにいったん変えちゃうと、どの人も二度と木製には戻さないよ」だって。本場(?)のイタリアでそうなんだもの、便利品はどんどん使うべきだと思う。

 

 なのに、指導する側の人って、こういう情報を全然持ってないだけじゃなく、持とうともしない。「苦労が美徳」みたいに考えてるのか?アホらしい。