ドイツの文豪トーマス・マンの代表作「魔の山」を原語で挑む本が出版されました(2023年12月出版白水社)。

「魔の山」は主人公の青年ハンスカストルプが7年もの間スイスの結核療養所に滞在し、いとこのヨアヒム、理性と合理主義の人セテンブリーニ、イエズス会士のナフタ、ロシア人女性ショーシャ夫人、オランダ人ペーペルコルンとの交流を通じて精神修行をする教養小説です。

 

 小説の後半には、音楽好きのトーマス・マンらしく、主人公が最新の蓄音機(グラモフォン)でレコードを聴く場面が描かれており大変印象深いシーンになっています。

 

 ハンスカストルプが蓄音機でかけた曲は、ヴェルディの「アイーダ」で牢屋に閉じ込められた恋人ラダメスとアイーダが歌う最後のデュエット、ドビュッシーの「牧神の午後」が体験させる「忘却そのもの」、ビゼー「カルメン」でホセが行う愛の告白、グノー「ファウスト」で兵士ヴァーレンティーンが妹グレートヒェンに捧げる「祈り」、そしてシューベルトの「冬の旅」の「菩提樹」です。

 

 これらは、いとこヨアヒムの死であったり、想い人ショーシャ夫人に対する報われない恋であったり、第一次世界大戦の始まりであったり、いずれも主人公の魔の山の体験と深く結びつきます。

 

 曲をかけながら、この音楽は物語のあの場面とつながっているなと想像しながら読むと長い小説ながらも面白く読むことができます。もしよかったら手に取ってくださいませ❣