最近、大変に感激した食べ物があります
それは、以前に取り上げた新大久保の「小魏鴨 店」を経営する中国人、孫成龍さんが振る舞ってくれたサラダです
ある日、いつものように孫さんの店に行くと、孫さん自らお皿いっぱいのサラダを出してくれました
その野菜が見たことのないものだったので、なんだろうと思いながら食べたところ、これが本当にひっくり返るくらいにおいしいのです
苦みもあり、甘味もあり、香りもありで、昔の野菜の原点のようなサラダ
これにはびっくりしました
そこで
「こんな野菜、どこで買ってくるの?」
と聞いたら、
「どこにも売ってません」
と孫さん。
「じゃあどうしたの?」
「こんなの、東京の街のどこにでも生えてますよ」
そう、孫さんが出してくれたのはタンポポなど、いたるところに生えている野草のサラダだったのです
思えば日本でも昔の人は、怪我したときはこの草をこすりつけるとよいとか、熱が出たときはこれが効くとか、甘草や野蒜の効力はこうだとかいった、漢方医療のような知識を持っていたものです
今の日本人はそれを失ってしまいましたが、中国人の孫さんはちゃんと知っていたのですね
孫さんの目で見れば、東京はそういう意味で薬になるものやおいしいものに満ちあふれているのでしょう
↑【孫さんからいただいた野草(タンポポの葉)を味噌漬けにしてみた。
信州の味噌で漬け、ニンニクや醤油を適宜加えてあるもの。】
私があんまり「おいしい、おいしい」と言うので、孫さんが後日、その野草をたくさん持ってきてくれました
見たところタンポポの葉がメインのようです
それを泥が出なくなるまできれいに洗い、いろいろな食べ方を試してみました
すると、酢味噌をつけてもコチュジャンをつけてもおいしいし、炒めてもおいしいし、ナムルのようにしてもおいしいし、テンジャンチゲ(味噌チゲ)にしてもおいしいし……、要するに何をしてもうまいのです
振り返って思うに、この1年でいちばんおいしい食べ物だったのではないかと
たくさんいただいたので、傷んでしまわないよう味噌漬けにもしてみました
孫さんの店でいただいたときは胡麻ドレッシングのような味付けでしたが、味噌漬けもなかなかです
あとから鼻に抜ける香りがとてもよいのです
栽培したものとは違う、ほのかで上品な野生の香りです
温かいご飯の上に載せて海苔で巻いて食べたら、間違いなく「飯泥棒」になるでしょう
そうそう、味噌汁に入れても汁に味が出て、大変においしかったですよ
こうして、はからずも食べ物に関する中国の知恵の深さを、改めて思い知ることになりました
中国の食の話は、これからも折に触れて出てくると思います
それでは次回もお楽しみに