【ポルトガルは車イスでも旅行できるのか?リスボン・バリアフリー事情】

 

私は旅を生業としていますので、国内海外あちこち旅をする機会に恵まれました。
ベルテンポを25年前に創業して、障害がある方、特に杖や車イスユーザーの方と様々な国に旅をしていますが、

 

「どの国がいちばん良かったですか」と言う、とても難しい質問を受けます。

 

国としての魅力なのか、車イスユーザーでも旅がしやすいとの視点なのか。

質問している方は、まあそこまで深刻に本気で聴いていないと思うので、適当に答えればいいのでしょうが、

一応、「旅を生業として」いる以上、発言には責任が伴うのです。

 

ポルトガルは、

 

とっても大変だけど、また行きたくなる国。

 

です。

 

大変です、石畳も坂道も。介助サポート、大変でしょうと言われますが、いえいえ、車イスで押されているご本人も

石畳ガタガタ、坂道おっかない、油断すると小さな、時には大きな穴ぼこに突っかかり。

エレベーターは故障している。スロープはないことも多い。

 

体力的には、まあまあ大変なのですが、気持ちの良い汗と言うか、心地よいリスボンの風が爽やかと言うか、

うまく言い表せないのですが、また、行きたくなるのです。

 

バリアフリーの話ですね。ポルトガルへの車イスでの道のり。

 

 

日本からポルトガルへの直行便はありません。ヨーロッパのどこかの都市で一回、乗り換えになります。

私たちは今回、羽田からエールフランスでパリ乗り継ぎを選択しました。

 

シャルル・ド・ゴール空港は巨大なので、乗り換えが大変でもありますが、エールフランスからエールフランスへ乗り換えるのであれば、サポート体制もスムーズです。

 

とは言え、羽田で散々念押ししておいた、「自分自身の車イスを一旦、パリで出して欲しい」はリクエストがきちんと通っていませんでした。これ、結構困るのですが、スカンジナビア航空でも、ブリティッシュエアウェイズでもやられたことがあります。

 

5回くらい確認したのですが。まあ、結論から言うとリスボンで飛行機から降りたところに、無事に届いていましたから、それでよしとしなければいけないのかも知れません。車イスのロストバゲージは本当に困ります。

 

すみません、バリアフリーの話ですね。

 

パリからリスボンへのフライトが沖留め、ボーディングからの搭乗ではなかったので、健常者の方とは異なるルートで特別な車で送迎してもらいます。巨大なトラックにリフトが付いています。

 

 

10分ほど走って飛行機のそばへ着きました。

一般の方が搭乗するのとは逆の扉を開けてもらい、飛行機に乗り込みます。

 

飛行機は世界標準でサービスが行われますから、車イスだから乗れないとかはありません。

心配であれば、出来るだけJALやANAの日系航空会社を使うと、多少は安心感が増します。

 

 

バリアフリールームですが、探すのは結構大変でした。ありそうでないのです。

古いホテルが多いと言うのもありますが、アメリカのADAや日本の障害者差別解消法のような法整備はそこまで行き届いていません。石畳と坂道。ポルトガルに住んでいる障害者の方は、どうやって生活しているのでしょうね。

 

こちらはリスボンのHFアーバンホテルのバリアフリールームです。

(ツインルームです)

シャワーブースのガラスは両側に開きます。シャワーベンチとシャワーチェアがありました。
(シャワーチェアはリクエストしたので搬入してくださったものです)

 

ホテルにバリアフリールームがあっても、ホテル玄関の目の前がとんでもない急坂だったりしますので、くれぐれもご注意ください。

 

 

そして、ポルトガル最大の難関は、エレベーターの故障です。

普通に故障しています。直す気配はありません。聞くとずっと故障していると。

 

地下鉄駅のエレベーター故障率は3割、いや5割近いかも知れません。

ホームにも改札にも駅員さんはいませんから、エレベーターをあてにすると立ち往生します。

 

トラムは古いタイプの28番路線に乗ることはできませんが、ベレン方面への15番線は全ての車両が低床車のユニバーサルタイプです。リスボンのダウンタウンからベレン地区に行く際はこのトラムを利用しましょう。

 

 

スロープがあるので、運転士さんがバタンッと出してくれます。

 

 

ジェロニモス修道院は車イスでも見学可能です。修道院内の段差にはスロープが設置されています。

 

 

こちらはエッグタルトで有名なパスティス・デ・ベレン。

車イス用の広いトイレが店内にあります。

 

店内も段差はありません。車イスユーザーの方は大行列でも優先して入れてくれることがありますので、スタッフの方に相談してみてください。恐らく混み具合にもよると思います。

 

発見のモニュメント。ジェロニモス修道院からは徒歩になりますが、途中、地下道があります。

ここは階段のみとなりますので、車イスユーザーの方は、一旦、国鉄ベレン駅へ迂回して、線路を渡る大きな跨線橋を経由して行く形になります。ジェロニモス修道院から発見のモニュメントまで段差のないルートを使うと歩いて30分くらいかかります。

 

熱中症にはくれぐれもご注意ください。

発見のモニュメント付近にはトイレがありません。トイレはエッグタルトのお店で済ませておきましょう。

 

 

地下鉄駅のエレベーターは大工事中、なのか単に故障しているのか。

 

 

こちらのエレベーターも故障。

まだ「故障」と書いているだけマシです。

張り紙もなく壊れているエレベーターもあります。待てど暮らせどエレベーターが来ない、あれ、故障?みたいな。

 

国鉄近郊路線の通勤型車両です。ホームとは段差が大きいですが、編成の中で数カ所、スロープが設置された車両があります。

事前連絡なく対応してくれる車掌さんもいますが、「ちゃんと事前連絡しないとダメだ」とネチネチ言う車掌さんもいます。

ルールは24時間前までに連絡です。

 

「でも、近郊に出かける時、乗る列車は前日には決まらないですよね。」と通訳の方は車掌さんに言ってました。

 

昔、山手線も72時間前までに事前連絡しろと言われていた時代がありました。東京から新橋まで、とか。

 

この車掌さんはあっさりと「OK、シントラね」と降車対応してくれました。ありがたい。

 

 

これはロカ岬の車イス対応トイレ。バーがあるのは1回50セント必要だからです。お釣りはでます。
でも、この幅じゃ車イス通れないよね、と思ったら、清掃係のおばちゃんが普通に右側の柵を手で動かして広げてくれました。

手で動くんかい。

 

 

こちらはファドライブの会場です。車イスで行きましたが、表情ひとつ変えず、普通に対応してくれました。

段差などはありませんが、トイレもありません。

 
 
私たちの結論。
 
「それでも、私たちはまたポルトガルへ行く」でした。
 
ポルトガルのバリアフリーはどうですか?と情報収集しても限界があります。
まあ、いろいろ大変だけど、でも最高に楽しいよね。と思えるかどうかが、あなたの心の中のバリアフリー基準です。
 
参考になりますでしょうか。
バリアフリーって、結局、その人がどう感じるかなのですよね。完璧なバリアフリーはあり得ないのです。
 
旅行のしやすさではハワイに軍配が上がりますが、エキサイティング、エキゾチックの観点ではポルトガル。
 
あと、バリアフリーとは関係ありませんが、ポルトガルは物価が安いです。ユーロ圏では特別に安い。
円安の今、ポルトガルは狙い目だと思います。
 
 
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こ、怖い。助けてー
 
※通常、ベルテンポでは車イスの抱え上げ、持ち上げは行いません