【総括】


今回の企画は、どちらかというと「夏休み(残暑)特別企画」的な位置付けで、いつもとは少し違った雰囲気でのディスカッションになりました。振り返ってみればコーディネーターへの質疑応答と、「就活漫談」が大半だったような気がします。


良くも悪くもそんな感じでしたが、今回のテーマである「就職活動」という、今非常に旬なトピックを、個別の経済主体の取引・交渉として分析するミクロ的視点から、また政策的な視点でいえば「合成の誤謬」への対処と社会・経済の制度的見地から分析を加えられた点では十分有意性の認められる企画であったと言えるのではないでしょうか。CLQのコンセプトである「知識の共有と思考力の向上」はギリギリ達成できたはずです。


本テーマがカバーするものとしては「労働経済学」「社会保障」「経済政策(成長戦略)」「経営学」「教育社会学」あたりですね。


【追伸】…これから就活をするみなさんへ


ここまでの議論でもわかる通り、現在「就活」は様々な問題を抱えています。それは大学教育の観点から見れば教育問題であり、企業と労働者の関係で見れば経営問題であり、就職からは少し先の話になりますが国家の成長戦略を鑑みれば政治・経済問題であり、この異常とも言える学生と企業の駆け引き(茶番)は社会問題(現象)であると言えるでしょう。


個人的にはあまり歓迎すべき現象には思えません。…が、一方で悪いことばかりでもないとも思います。


この戦いは大学入試とは根本的に異なり、偏差値を競うものではありません。そもそも内定先に偏差値的な優劣などありません。10年先どうなっているかはわかりませんから。それに客観的な指標もない。もし仮に勝敗がつくとすれば、それは何十年後かに、「自分が幸せor成功したと感じられるかどうか」です。完全に「価値観の問題」であり、それ以上でもそれ以下でもありません。まぁ、全て本人次第ということです。


また、それまでは「学生」という「お客さん(買い手)」でしたが、今度は「労働者(=労務供給者)」という「売り手」に変わるのです。つまり、良い商品だと認められなければ買ってもらえません。でも、良い商品だと認められたとき、「一社会人、一市民」として自分に自信が持てるようになります。もちろんそれは起業した人も同じことです。


大学受験で失敗した人こそ、今度こそ自分の「本来の居場所」を取り戻すチャンスです。精一杯、下剋上してやって下さい(勝敗の基準については上述)。


尚、自慢じゃありませんが、面接、スピーチ、プレゼンのテクニックは豊富に持ってます。ご興味あれば提供は惜しみません。



以上。 日本最大の短期金融市場@日本橋 より。

論点② 雇用環境(慣行)・労働市場のあり方(に対する意見)
*ほぼ一方的な講義形式で終了。


・【日本的経営3要素による労働市場過小流動性説】
:日本的経営の3要素とは企業内外の諸要因により①長期雇用、②年功序列(職能給)、③企業内労組、を指す。詳しくは参考文献ブログ(拙著)を参照されたい。簡単に言うと「これこそが採用における過剰なまでの厳選化と労働市場全体の流動性を鈍化させる要因である。また、長期失業を招きやすく、再チャレンジャーに厳しく、「社会保険格差(受益と負担の不公平)」を生み、かつ既得権の温存に繋がりやすい。経済の成長戦略に鑑みても、到底看過できない」ということ。個人的に今回はこれが伝えられれば十分だった。




論点③ 採用活動のあり方

・【いわゆる「コミュニケーション能力」】(参加者から質問が多かった)
:本来のコミュニケーションとは「単なる情報伝達」に他ならない。原則は1聞かれたら1答える。よって、1聞かれて延々と10喋るのは「コミュ力不足」。ただし、面接官のスキルが低いと、面接官自身が「コミュ力不足」なので、評価はブレる。このように見ても、やはり過度な就活の過熱化は人員不足を始め、非効率を招く。



・【SPIなど適性検査】
:参加者は、「そもそも不要」派から「性格検査のみ」派、「難化推進」派、「容易化(日用常識レベル)推進」派まで様々。

 主な意見・指摘としては、「大学生になってまでやる問題か」や「身に付けた学問を評価するより客観的で合理的で容易」など。結構色々な意見が出た。ただ、「割り算ができない人間は即行落とすべき」は多くの共感を得た。

論点① 大学教育のあり方 
*理論体系別にカテゴライズしていますが、多くの参加者意見は理論横断的なポジションです。


・【専門教育説】:概して、専門教育の場として考えるのは難しい。そもそも大学(学部)自体がそういう機能を前提に運営されていない。通常、誰でも卒業できる。また、その専門性を活かせる企業(総合職)は非常に限定される。効用は、一部の短資会社くらいでしか機能しない。



・【教養教育説】:上記のこともあり、いわゆる「専門か教養か」論争は後者に分があるとされる見方が強い。元来、「教養」は生活に余裕のあるいわば「暇人」の娯楽の類であり、一般企業に就職して即戦力になるとは言えない。だが、長期的には役立つ可能性も(営業、企画など職種問わず)。



・【専門・教養併学説】:専門・教養ともにバランスよく学ぶべき、という主張も。いわゆる正論。やはり参加者の支持は多かった。



・【スクリーニング機能説】:影の正論。従来、日本の新卒就活における学歴重視を支える主柱となる理論。概要は、「大学教育自体に大した中身はなく、どこの大学の入試にパスできる能力があるかが重要」という、明文化すると元も子もないが、とても有力説。「新卒はポテンシャルで採る」という常識もきちんとサポートしている。
 

 参加者からは、「高校卒業後すぐに採用→就職も可能ではないか」という指摘も。ただし、多くの高校生は企業を知らない。社会を知らない。よって、大学受験のための「学科」の勉強しかしていない高校生には就職先・進路を決める術がまるでない。


 また、近年少子化による競争倍率低下を背景に、私学を中心に偏差値水増し競争が過熱化。スクリーニング機能説の根底を揺るがす事態も懸念される。



・【就職予備校説】:もはや、就職準備機関として見る見方。上記諸説は「学問(教育内容)面」にのみスポットを当ててきたが、そもそも進学・研究職志望者以外の大多数にあたる「就職組」は、就活or就職後に役立つことをする必要性があるとする説。参加者からは「勉強だけでなくともよい」「インターンやアルバイトを通じて社会・会社を知る機会もよし(早期化は問題ない)」「常識(≠教養)を学ぶのもよし」などなど。