2012年7月1日(日)クローバーの会初の連続講座「『私』が主役のお産をえらぼう」の第一回「ココロとカラダに向き合うお産とは?」三砂ちづる氏(津田塾大学教授)講演会を、多摩区民館大会議室にて開催しました。

2012.07.01mi

今回のイベントはあいにくの雨の中にも関わらず、60名の方にご来場頂きました。ご来場頂いた皆様ありがとうございました。
三砂先生のお話は、妊娠出産を軸に女性のココロとカラダについて歯切れよく愛を持って助言いただけた内容でした。

大きく分けて三つのお話があったと思いますが、まず一つ目に『お産は自分の責任』というお話。妊娠出産は甘くない、人に預ける事ができないからこそ、自分で責任を持って取り組むべきである。理想的なバースプランを持つ事もよいが、助産師任せでなく、それに対して自分が努力すべき。自然なお産をしたいのであれば、自分の生活や身体を整える事。身体の調子を整えるためには、早寝早起きをする、素材から料理する、身体を動かす事が大切。助産院は生活改善道場だ!とおっしゃられていました。

現代は晩婚化が進んでいるが、年齢が上がるにつれ卵子も老化していくという事実をもっと国全体で自覚すべきで、これからお産をめざす人には若いほど有利である事を伝える必要がある。また産科医の廃業も問題になっているが、残念ながら訴訟を起こす妊産婦もいる現状がある。妊娠中から、産科医や助産師と人間的な信頼関係を築いて、お互いが努力すべき。その人間関係と努力があれば、思い通りの出産ができなくても訴えるようなことはないだろう。もっと必死になって信頼できる出産介助者を探そう!もし近くにいい助産師がいないなら引っ越せばいい!そのくらい産み場所探し、介助者探しは大切なんだ!ともおっしゃられていました。

二つ目は『出産は命がけだからこそ楽しい』というお話。例えば登山やマラソンなどでクライマーズハイ、ランナーズハイと呼ばれるような、自分の境界線のなくなる感覚。人はリスクを冒してまでもその感覚をまた経験したくなる。そこには達成感や幸福感があるからだろう。そして出産こそ命がけである。出産は根源的で原身体経験である。太古から続く営みである。出産で自分が大きな何かと繋がっている、自分は大きなものの一部だという感覚を味わう事ができる。経験者は理解できると思うが、『どうしようもない、自分が産むしかない、やりきるしかない、後はゆだねる』この境地が素晴らしいあるがままの経験をくれる。助産院に置いてある産後の感想を書くノートに素晴らしい文章を見つける事が多々あるが、出産で女性は突然変わる事ができる。いい経験をすると人に広めようとする未来の視点が生まれる。とおっしゃっていました。

三つ目は『センタートレーニング』のお話。女性は自分の身体をしっかりと使うべき。自分の身体の中心軸(内くるぶし→会陰→頭上)を意識して生活する。女性は膣があるから男性より意識しやすく有利。また毎月の月経によって意識してトレーニングしやすい(月経血コントロール)。大昔は世界的に腰巻き文化でパンツを履くようになったのは近年である。トレーニングは具体的にトイレで腹圧をかけて月経血を出す訓練をする事と、ゆる体操。センターを意識するとパフォーマンスが高い身体になる。精神的にも自然と腹が据わってくる。武道家、プロアスリートなど颯爽とした人は中心軸があり、かつ身体が緩んでいる。ぜひ女性の皆さんにもセンタートレーニングをしてほしい。

先生の講演の後、5、6人のグループに分かれて、三砂先生の印象に残った言葉をシェアし、グループでの感想や先生への質問を発表しました。
質問は『出産時における男性の役割は?』→女性が妊娠出産に没頭できる環境を作る事。『不妊治療で授かった子を自然分娩するバースプランの矛盾点をどうすべきか?』→不妊治療は本来の本能に還るお産と反する点があるが、本人が自然分娩を望む事や、周囲がそれをサポートする事も良い事。その上で本人に努力してもらう事とそのリスクと責任も理解してもらうべき。『着物での保温の仕方と腹帯の意味は?』→着物は理想的妊婦服である。腹帯もそうだが、下腹と首元と足首を冷やさなければよい。理にかなっている。『今後のお産の展望は?』→便利な時代のお産は、これからも病院での管理式の周産期医療が中心となり、自然なお産を広める事は負け戦となるとわかってはいるが、マイノリティでも皆さんもクローバーの会も頑張って欲しい。母性を語って欲しい。おせっかいでいいから、伝える事が使命。との回答をいただきました。先生のこの言葉はクローバーの会にとって、大きな勇気となりました。

2012.07.01kids

個人的に着物が理想の妊婦服であるという発想も新鮮でした。おはしょりの部分で身幅を調節でき、発汗する場所は開き、お腹や首元や足首など冷やしてはいけない場所は自然と重なって暖めている。お股は冷やしてよい、布をあてがう方が不衛生との考えには目から鱗でした。そして着物に憧れだけでなく、実用性も感じられた瞬間でした。私もセンターを意識しながら着物を着こなす、腹の据わった女性になりたいと思いました。

質疑応答の最後に『先生が一番大切にしている事』との質問に、『自分自身が常に一番いい状態にいられるように心がける事』と回答されていたのが印象的でした。はっきりとした口ぶり、その颯爽とした着物姿に惚れ惚れされた方も多かったのではないでしょうか。アンケートの感想にも先生の魅力に取り憑かれた方をたくさん見かける事ができました。三砂先生、素晴らしいお話をありがとうございました。

皆様とシェアできた事をうれしく思います。ありがとうございました。
当日の感想、アンケート結果については後日報告できればと思います。

2012.07.01kaijo