帰りの電車の中










『どこにいるの?カツ』







まだ電車の中だし
まだ気持ちの整理ができてない








返信が思いつかないまま帰宅…









『帰ったの?カツ』








返信できない………










何も言えないまま、









彼を理不尽に







避けるような態度をしてしまった。
ちょうど曲が終わった頃







部屋から誰かが退室して






こちらに向かって来る気配がした。






私は店のフロント近くの





ベンチで俯いて座っていた。








足音があと5メートルで私に届く所で







カラオケの部屋をまた一人退室した扉の音と同時に、










「カツく~ん!」





と呼ぶ女の子の声がした。







その時に私は初めて





こっちに向かっていたのが彼だと知った。







クラスの女子が何やら彼に話している。















「3組のケイちゃんがさぁ、カツ君の唄を聴きたいって言ってるのよ。

3組もこの店でカラオケしてるらしいから、一緒に来て!」












カラオケボックスの騒がしさが







私に対してマイナスに手伝って、







必要以上に大きくなる話し声を









聞きたくないのに







聞いてしまった。











「オレ、遠慮しとく」








彼は断ってくれた。










「え~何で~?いいじゃん1曲くらい」








女子はしつこく交渉している。








「オレその子知らないし、もう帰るし…」







「え~、じゃぁ、その代わりに
カツくんのベル番教えて!
これでケイちゃんに勘弁してもらってあげるからパー







人に頼めば







こんなにも軽く彼の番号を聞けるものなんだ…







この子とケイちゃんて子が







すごく卑怯に思えた。











彼も仕方なしに番号を教えていた…








断りきれなかった状況は解るけど、










私はものすごく腹が立って










彼とその子の横を









無言で素通りした。









彼の視線が私の背中に痛いくらい突き刺さったが







マイに
『ごめん、門限だし帰る』







と伝えて








急いで電車に飛び乗った。





何の進展もないまま







というより







何の進展もさせぬまま






月日は流れ……







3学期なんて






期末試験でアッというまに終わってしまった。








クラス替え直前…







クラス全員で大送別会。







みんなでボーリングに行き






最後はカラオケへ…









すごく嫌な予感がした。










彼の歌がみんなに披露される。










一人ソワソワしていると









彼に順番が回った。







唄った歌は……













『JAM』だった…












これは彼から私への








最後のメッセージに聴こえて









涙が溢れた。










みんなが彼の歌声に歓声を上げている間に









私は涙に気付かれないよう









部屋を退室した。