あったかい手は




張り切って唄っていたからか





もしくは緊張してくれていたからなのか





すごく汗ばんでいた










リン「ホントに上手いよね。私、人の歌聴いて泣いたの初めてだよ…」






カツ「………ありがとう」






リン「こちらこそありがとう…」






握ってくれた手が離れなかった。






残り時間はまだまだあるけど……





唄うと手が離れてしまう………






二人とも曲は入れず





商店街での沈黙が嘘のように







いろんな話をして






たくさん笑った。







手は握ったままで…………










プルルルルルルルー雷







『残り時間10分前なんですが、お待ちの方が多くて延長できませんのでお願いしま~す』







呼出音で
せっかく繋いだ手は離れ、






退室の準備をした。












精算を済ませ、






カラオケボックスを出たら






もう20時前だった。







私は当時、家が厳しく






門限20時。






リン「もう私、帰らないと。今日は楽しかった!素敵なX'masでした(笑)」




彼は少し淋しそうに
カツ「駅まで送るよ」





リン「うん…」







X'masイヴの夜は







暗くなっても人がたくさんいる。






駅までの道を






人を掻き分けて歩いていると







彼が黙って手を繋いでくれた。






恋人になると






この温かい手は







自分だけのモノになるのに……







気持ちを伝えたい…









意気地無しの自分と葛藤していると




もう駅に着いた。






『好きです。付き合ってください。』












言えなかった。















リン「ありがとうパー気をつけて帰ってね」






カツ「おーパーじゃバイバイ猪」








彼の後ろ姿。





私はこの後ろ姿を忘れない。










後の人生で








10年経っても







思い出す度に後悔することになるとは






この時は夢にも思わなかった。